アッサンブラージュ観てきたよの巻
朗読とダンス・アクトで舞台を作る団体 armaさんの『アッサンブラージュ』を観てきました!面白かった!
三部構成で、一話ごとにガラリと世界が変わっていきます。一人が一人称で朗読を展開し、ダンスアクターの二人が語りとBGM・SEに合わせて彩る形式。
2回観劇したのですが、座り位置によって受け取るものがかなり変わってくる印象でした。
『メッタ刺しの女』
語る女・紗弓さんと、女の分身のような雪乃さん、女の夫・まなむさんの三名で紡ぐ物語。
はたから見れば罪ともとれるその行動が当然の権利であるかのように淡々と語り続ける女。女の内なる悪意や心の弾み、揺らぎを表すかのような雪乃さんの踊りは、バレエ味の強い流れるような振付(好きです)時折混じるわざとらしい程のロボット風な動きが女の偽りの言葉を浮かび上がらせ、目的地への熱を加速させていく。
今回のまなむさんは、何もしないことを意図的に選んでいるのかもしれないと感じました。物語は一人称で進んでいく故、観客が知ることのできる夫の姿は女の目線を通したものでしかない。あやつり人形のごとく女の意のままに支配され動かされた夫は、赤い血塗れの両手を見て何を思うのか…。
目的の為には手段を選ばない強かな女というキャラクターは、やはり紗弓さんの真骨頂ですね。全てを自分の思い通りに運びたい、生き方も死に方も個であり主でありたい。死に向かいながらも生命力に溢れていて、きっとそこには悪や善などなく、ただひたすらに身勝手なばかりの生き方があったのだと。そんな揺るがない生き方を全うできたとしたらとても幸福なのかもしれない、と想像しました。
果たしてメッタ刺しになったのは女の肉体か夫の精神か。もしくは何もかも妄想という線もアリでしょうか。夢オチならぬ妄想オチ。
『駆け込み訴え』
原作で予習してからの拝見でした。フルサイズではなく、今回の朗読用に脚色していた模様。
ジェットコースターのように駆け抜けていくユダの心の内を鮮烈に演じたしひろさん。観客をぐいぐいと導いていく語りに追随するように、ユダの分身としてその圧倒的な肉体でキリストとの対比を体現したみきさん。憧憬、愛情、苦悩、失望、憎悪。二人が一つとなり、数十分の間に次々と湧き出ずる感情の波に身を委ねていく。「復讐の鬼となった」の言い回しがしひろさんらしい。最後に、自分は商人である、金の為にしたことなのであると、自らに言い聞かせるような押し込めるような様が、哀しく印象に残った。
聖書の類いに疎い私なのですが、浮遊感すらある常人でない異質さを醸し出すマナさんの佇まいはイエス・キリストにぴったりのように思えました。殆ど感情の見えない表情は、一人称での朗読において、ここで語られるのはユダ目線のあの人の姿でしかないという意味を持つようでとても効果的に感じられ。このあたり、予備情報を持っていれば更に深くわかることもあったかもしれない。この作品の文章では、あの人の意図はユダフィルターを通してしか伝えられない。
話を聞いている内に私もユダと共にあの人を憎み、すえに駆け込んできたこの哀しいお人に情がわいてくる。
そういえば『メッタ刺しの女』の女も、自らに関わる全ての人を愛していたと言っていた。愛と憎しみは、背中合わせだ(女の場合は愛と無関心か?)
『水の村』
これが最も難解でした。たぶん、私から一番遠い話なのだろう、と。
まなむさん演じる青年が、祖父の遺品整理をしている最中に見つけた若かりし頃の手記の物語です。語り手の男(祖父)はマナさん。その声を聴きながら何故かふと『マージナル』を思い出しました。異なるのは書き手が読み手だということでしょうか(マージナルでも空白の部分はそうでしたが)マナさんの頭の中をダイレクトに覗かせてもらっている気分になります。こちらの作品は私の知るマナさんと地続きで、どちらかと言うと『メッタ刺しの女』のほうが意外でした。
そして、男を監視する役割を担いながら、ただそっと傍に佇む彼をみきさんが言葉なく表現します。ここでも肉体的な逞しさと美しさが、軍人という彼のバックボーンまでも匂いたたせるようで。何度も出てくる、草木の緑の中を歩いていく彼の白いシャツの背中、という情景に、事実目の前にあるみきさんの背中そのままかちりとピントを合わせられる気持ち良さ。キャスティングの妙でした。
これまでの二話は語り手の分身となるダンスアクターがいましたが、このまなむさんは祖父の手記を手に旅をし追体験しているような青年(孫)の面持ちでした。今回は一貫して動きの少ないまなむさん。ただそこに存在する、ということがどれ程難しいことか。観る者の想像力に委ねられたようにも思える居かたは、あるいは語り手への絶大なる信頼でもあるのかもしれません。
いつもながら
長くなってしまいました…(語りたくなるのはオタクの性よね仕方ないよね)armaさんでの能動的な観劇体験は面白い。
明日が千秋楽!無事に走り抜けられますように!念!
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