Vol.14 レコード

音楽メディアの主役だった

最近は「アナログレコード」と言われるようになりましたが、70年代当時は単に「レコード」でした。
デジタルメディアがないわけですからあえてアナログなんてつける必要はないですからね。

ざっと1950年代中頃から80年代中頃の30年間はレコードが音楽メディアの代表でした。
その後CD(コンパクトディスク)に主役の座を奪われ、そのCDも2000年代のiPod登場で音声ファイル方式に置き換わっていくことになります(意外と短かったですね)。そしていまや「配信」の普及でメディアすらない時代になってきています。

それでもアナログレコードファンは途切れることがありませんでした。
オーディオマニアにとっては音質の高みを追求するための最適なメディアですし、コアな音楽マニアはCD化・デジタル化されていない音源を中古レコードで発掘するということを喜びのひとつにしてきました。
(90年代クラブDJのスクラッチプレイのための需要は別の話です。あれは音楽メディアではなく「楽器」ですので。)

ここ数年は新譜にアナログレコード版を用意するアーティストも増えてきました。その音質や大判ジャケットの質感は配信の時代にも(というか、そんな時代っだからこそ)大きな魅力になっているようです。


一枚2500円

70年代、LPレコードは2500円でした。
2枚組とか特別仕様とか多少の前後はありますが、ぼくにとっては「2500円あればレコードが買える」というのがお金の価値の目安でした。ちなみに「輸入盤」というのもあって、それはもうちょっと安かったのですが田舎の街では簡単に買えるものではありませんでした。

73年の少年ジャンプの値段は120円。いまのほぼ半分以下です。
レコードの2500円は当時の小中学生にとってなかなかの大金だったわけで、それはもう大切なものでした。
お小遣いを貯め、何を買うかをとことん考え(これが楽しい!)、そして友達ともシェアするのが一般的でした(ここでカセットテープ&ラジカセという必殺ツールが出てくるのですが、それはまた別の機会に)。

そんな宝物的存在を通して聴く音楽(特に洋楽)との出会いは、これはもう尊いものでした。
レコードクリーナで丁寧に手入れした黒く輝くホコリひとつないレコード盤をプレイヤーに載せ、針を落とすという作業はちょっとした儀式です。
正座こそしませんがスピーカーから出てくる音にすべての神経を集中させて聴いたものです。
シャシャっと選んでポチッと押してイヤホン経由で歩きながら聴くというスタイルとはかなり違った音楽との向き合い方だったように思います。

またレコードジャケットというのも大きな魅力でした。
アーティストのこだわりが30cm角の紙に詰まっているように感じられて、ポスターとはまた違うその独特な質感は所有する喜びにもつながっていたのです。

LPレコードはA面+B面合わせて大体50分弱、8曲くらい。丁度いい長さですよね。スキップも早送りもできず、しかも途中で盤をひっくり返す作業があります。
この長さとひっくり返すという前提はアーティストの作品作りにとっても大きな要素だったはずです。
A面1曲めはシングルカットの勝負曲(売りたい曲)、A面の最後は自身が推したい作品、B面1曲めは味付けを変えて勝負にでる。なんていう意識は作る方にも聴く方にもあったものです。

ぼくも今はしゃしゃのポチでお空からやってくる音源を聴くほうがメインになってしまいましたが、やはりこういう楽しみ方のほうがより深く音楽を楽しめるような気がします。

最近はアナログレコードプレーヤーも手軽で便利なものが多く販売されています。
ブルートゥーススピーカーに飛ばせたり、音声ファイル化できたり。
中古レコードも入手しやすくなっていますし、音楽が好きな方は一度試してみることをオススメします。
「暖かい」と言われる音質は言葉で説明しようがないのですが、これは聴いてみれはすぐわかります。

ミュージシャンへの感謝と愛が深まりますよ。


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