あなたを感染症から守るために必要なこと

Preprint (プレプリント＝査読前の論文を掲載するサイト）に、ビタミンCの効果についての論文1）がありましたのでご紹介します。査読を受けていないので、確実なデータ、という訳ではありませんが、総説論文なので、あまり嘘は含まれていないと考えています。

ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれ、人間にとっては栄養補給から摂らなくてはならない必須の水溶性栄養素です。通常は果物や野菜を食べることで補給しています。免疫応答に関わっており、抗炎症性作用、免疫調節作用、抗酸化作用、抗血栓性、抗ウイルス性を持つとされています。

従って、呼吸器感染症、その他の炎症性疾患の重症化予防に役立つ可能性があるのです。実際にビタミンCの補給で肺炎のリスクが有意に低下します。これまでの報告ではCOVID-19の死亡者ではウイルスの直接的影響による肺炎だけでなく、二次的に起きた細菌による肺炎を併発していることが多いのです。それに、肺炎の人を集めて血中のビタミンC濃度を測ったところ62％もの人でビタミンCが低値であったと報告されています。ですから、ビタミンCを与えることで改善する可能性が高いのです。

ビタミンCを補給することで、抗酸化作用が期待でき、直接ウイルスを殺す活性もあると言われています。またインターフェロンの産生を増強します。自然免疫と獲得免疫系の両方に効果があり、炎症を抑える効果があります。また、実際に疾患にかかることによって消費され、欠乏状態になってしまうことから、補給により減少したビタミンC濃度をを修正し、酸化ストレスを軽減し、さらに、グルココルチコステロイド（副腎皮質ホルモンのひとつ）の抗炎症作用をサポートするのです！

これまでなされてきた様々な研究から、COVID-19の重症化は、強力な炎症性サイトカインおよびケモカインの過剰な産生により起きる多臓器不全（サイトカインストーム）によると言われています。外因性グルココルチコステロイドの投与は実際の治療でも重症化の予防や重症者の死亡率低下に有効性が認められており、これをサポートするビタミンCが効かないはずはないという気がしますね。

COVID-19が出現する前から、風邪の予防効果があると言われていたことはよく知られているところです。コロナウイルスというのはもともと風邪のウイルスの一種でもあるので、そういう意味からも有効であると言えるかも知れません。

さて、それではビタミンCをどのくらい摂ればよいのでしょう？普通、ビタミンCが欠乏すると「壊血病（かいけつびょう）」といって出血しやすかったり出血が止まらなくなる病気になってしまいますので、その予防のために必要な最低量が80−90mg/日とされています。でも、その量ではストレスがかかった状態ではさらにビタミンCが消費されてしまいますので、それを含めて、現代人に推奨される量は200mg/日くらいとされています。

しかし、積極的に感染予防のためには、3-8g=3000-8000mg/日くらいがよいと言われるようです。人によって適正量は変わってきますので、適宜調節が必要です。もし下痢したら、それは多すぎる、と考えて少し減らして下さい。また、過剰な摂取は腎結石や腎不全の持病のある人には負担がかかり、危険ですので、控えめに摂取するようにして下さい。それと、ビタミンCは水溶性のビタミンで、数時間で排泄されてしまいますので、1日に数回に分けて摂取することがよいようです。また、野菜の低栄養化（野菜に含まれている栄養素の量が以前よりも減少している）が指摘されている現在、これだけの量を食物から摂取するのは、難しいと言わねばなりません。質のよい（原材料などを確認して）サプリメントを利用されることをお勧めします。また、'タイムリリース(time release)’をうたった長時間有効なタイプのサプリメントも多く出ていますので、上手に利用したいものです。

もし、感染症にかかってしまったら、一時的に6000−8000mg/日程度投与すると重症化が防げるかも知れません。

ワクチンを心待ちにしている方もいるかも知れません。今開発中のワクチンは、変異しやすいウイルスに対して遺伝子組み換えにより即製されたものが多く、治験の規模も小さく、期間は短くなっています。効果については近いうちに英国で「ヒトチャレンジ」を行うとの情報もあり、まだしばらくは有効なワクチンの完成まで、時間が掛かりそうです。まだできていないものを待つ前にまずはビタミンを補給して予防しましょう！

ビタミンCの他にも有効性が言われているものには、ビタミンDや亜鉛、マグネシウムなどのミネラルも重要です。良質のタンパク質もお忘れなく。人体は複雑な化学反応が絡み合って維持されているものですから、たったひとつの栄養分を摂ったからといって完全に病気を予防できるものではありません。栄養、睡眠、運動の3つに注意して、健康に過ごしましょう！

1）Holford P, et al. Preprint 2020 doi: 10.20944/preprints202010.0407.v1

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