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メキシコ生活にしんどくなったら

私が現地採用の通訳として働いていたとき、おそらく当時の私のレベルはB1程度。自分の言いたいことは言える。日常生活でも困ることはない。

でも、仕事で使う言葉はスペイン語はおろか、日本語でも専門的過ぎてわからない。当事者たちは設備不良の理屈や不良品発生の原因がわかっても、私にはわからない。

理解できるようになるためにはどうするか?単語をつめこんで、わからない言葉は教えてもらい、わかるまで聞き返す。自分なりに考えたことをひたすらやっていた。

あるとき、同じころに入社したメキシコ人に言われた。

「お前の通訳のせいで、自分の発表はうまくいかなかった。」

そんなの言われなくたってわかってる。わかってるのに、悔しくて情けなくて、その日の夜は家で泣いた。

はじめてスペインに留学したとき、私はまだ過去形の活用も知らない段階で、バルセロナへ一か月行った。そのときもホストファミリーの娘が(たぶん)こう言っていた。

「あの子、留学できているのに、全然スペイン語話せないじゃん。」

「あのときから私、何もかわってないのかな」と思うと、猶更悔しかった。さらに、追い打ちをかけるように、ローカルトップの人から私の上司に「あと2か月様子をみて、今後のことを社長に相談する。」と話があった。

いま、思えば、先輩通訳が言ったとおり、脅しだったのかもしれない。でもそのときの私には、「過去に通訳で実力不足が原因で切られた人なんていないのにどうしよう」という思いでいっぱいだった。

鬱になることが怖くて、サプリを飲んでいた時期もあった。それでも、1年経った頃には出張先での同行通訳も一人でこなせるくらいにはなり、さらに半年経つと、他の通訳がいない部署で一人で通訳を任せてもらえるようにはなった。

我慢することはない。逃げてもいい。でも、続ければそれなりにできるようになる。私はただ続けた。期限を決めて。

しんどくなったら、もう一度「なぜ来たか」「いつまでいるのか」を考えてみてほしい。その上で、しんどかったら逃げちゃえばいい。


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