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トートバック型の「LFCコンポスト」 名前のヒミツ

グレーの生地に深いグリーンのロゴがついた、トートバッグ型のコンポスト。雑誌やSNSなどで目にしたことはありませんか?

このバッグ型コンポストは「LFCコンポスト」という商品で、ローカルフードサイクリング株式会社が開発、販売を行っています。これまで生ごみとして捨てていた野菜や果物の皮、ヘタなどをコンポストに入れることで、手軽に栄養たっぷりな堆肥ができると、2019年の販売以来、利用者は増え続けています。

LFCの3文字の込められた思い

LFCとは、会社名でもあるLOCAL FOOD CYCLING(ローカル フード サイクリング)それぞれの頭文字を取ったもの。この3文字にはどんな思いが込められているのでしょうか。

LOCAL FOOD CYCLING(ローカル フード サイクリング)とは、
 LOCAL:地域で
 FOOD:食べ物(栄養)を
 CYCLING:循環していくこと

コンポストはあくまでも入口。生ごみを堆肥にする習慣の先に、ローカルフードサイクリングが目指すのは「地域で栄養循環が続いていく暮らし」なんです。ローカルフードサイクリング 代表のたいら由以子さん(以下、たいらさん)は、自身の体験をベースに半径2kmの栄養循環の大切さを説いています。

ローカルフードサイクリング代表 たいらさん

「事業のきっかけは、最愛の父が癌をわずらい、余命3か月の宣告を受けたことでした。家族で話し合い、入院ではなく自宅での食養生を選びました。無農薬野菜を求めて、毎日2時間、福岡市内を探し回って、やっとの思いで手に入れた野菜は高価で、しかも鮮度が落ちたものでした。それでも父は、毎日の食を通して元気を取りもどし、余命宣告を大きく超えて、2年後に旅立ちました。

『食べ物が、命を、大切な人の存在そのものを左右する。それなのに、安全な野菜が手に入らないのはどうしてだろう』憤りに近い思いを抱えて、調べていくうちに分かってきたのは、便利さと引き換えに自然と暮らしが分断されてしまったこと。化学肥料や農薬で土や水や生態系までが病んでいること。

昔の生活に戻ろうとか、みんな田舎で暮らそうと、言いたいわけじゃないんです。私も都会の暮らしが好きだから。そんな暮らしの中で、これから先も、いつでも食卓に安全な野菜がならんでいる、それが私が実現したい社会です。都市の中で忙しく暮らす私たちが自分事として実感を持てるのが、半径2kmの生活圏なんです。」

半径2kmの栄養循環の可能性


「父の看病をしていた2年。食材の買い物以外の時間は0歳の娘を近所の公園で遊ばせていました。そうした日々の中で、地域の空き地や畑に興味を持ったり、そこに暮らす人を身近に感じたり、地域に愛着を感じている自分に気がつきました。全てを自分ごととして考えるようになり、周囲に対して思いやりの気持ちになっていったのです。『主婦が感じる生活圏で、生ごみが安全な野菜になる循環を作れたら』これが、半径2km圏で栄養を循環させる構想の元になっています。」

半径2kmとは、どんな範囲なのか。たいらさんはこんなふうに定義しています。

「ものごとを、自分ごととして捉えることができる範囲」
・主婦が感じる生活圏
・都市部における中学校区の範囲
・自転車で約10分で移動できる距離
・地産地消の定理
・ニホンミツバチの行動範囲
・高齢者向けデイケアサービスの送迎基準

「半径2kmの定理」(1998/2019改定 LFCたいら)


LFCコンポストが意味するLOCAL(地域)とは、この半径2kmの生活圏のこと。CYCLEではなく、CYCLINGとing系になっているのも、自転車で楽しく周れる範囲の中で、その場所に暮らす人が自分ごととして取り組み続けることが大切という思いを込めているから。

LFCコンポストを通して、人と人がつながり、食べ物からできた堆肥で、野菜を育て、食べること。様々な場所で、それぞれの地域が持つ課題に合わせて、LFCコンポストを活用したコミュニティが生まれています。

そんな地域ごとの取り組みや、LFCコンポストのベースにある考え方を、一つひとつ紹介していきます。


▽ LFCコンポストをはじめる

文:小川 直美(ライター|LFCコンポストユーザー)


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