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(#14)受動的間欠的静的ストレッチ中の異なる弛緩期間が動脈硬化に及ぼす急性効果


【是非こんな方に読んでほしい】

この論文は、運動後の動脈硬化や血管機能に関心を持つ理学療法士、スポーツ科学者、運動生理学者、そして動脈硬化予防に向けた健康管理を考える医療従事者に有用です。また、血流や血管の硬さに対するパッシブストレッチの影響を理解したい方に適しています。

【論文内の肯定的な意見】

  • リラクゼーション期間が10秒または20秒のストレッチは、動脈硬化を効果的に減少させる。

  • ストレッチによる一時的な血流増加と血管内皮機能の向上が確認され、特にシェアレート(血管内での血流速度)は顕著に増加した。

  • 30秒間のストレッチとリラクゼーション期間を組み合わせることで、動脈の柔軟性が向上し、心血管リスクの低減が期待できる。

【論文内の否定的な意見】

  • 5秒または60秒のリラクゼーション期間では、動脈硬化の減少効果がほとんど見られなかった。

  • ストレッチングの効果はストレッチされる脚に限定され、他の部位への影響は限定的。

  • 心拍数や心拍出量に有意な変化は見られず、中央血流力学に大きな影響を与えない。


論文の要約

Background

動脈硬化は心血管疾患の独立したリスク因子であり、世界的な死因の主な原因となっています。近年の研究では、静的ストレッチが動脈硬化を軽減する効果があるとされ、ストレッチの繰り返しが心血管疾患の予防に役立つ可能性があります。しかし、静的ストレッチによる動脈硬化の減少メカニズムは明確にはなっていません。本研究では、異なるリラクゼーション期間が血流および動脈硬化に与える急性効果を調べました。

Method

実験1では、12名の若年健康男性を対象に、片脚に30秒間のパッシブストレッチを実施し、リラクゼーション期間を60秒間設定して動脈血流やシェアレート(血流速度)を測定しました。実験2では、17名の若年健康男性に対して、5秒、10秒、20秒、60秒の異なるリラクゼーション期間を設け、30秒間のストレッチを6セット行い、リラクゼーション期間の違いが動脈硬化に及ぼす影響を評価しました。

Results

実験1では、ストレッチ終了後10秒間で血流速度が有意に増加し、ストレッチによる筋肉の微小血管圧迫後の再灌流が動脈のシェアレートを増加させ、動脈硬化を減少させることが確認されました。実験2では、10秒および20秒のリラクゼーション期間で最も動脈硬化の減少が大きく、5秒および60秒のリラクゼーション期間では効果が限定的でした。

Conculusion

リラクゼーション期間を適切に調整した間欠的静的ストレッチは、動脈硬化を減少させるために有効であることが示されました。特に、10秒および20秒のリラクゼーション期間が、血流の再灌流による血管内皮機能を改善し、動脈の柔軟性を向上させます。これらの結果は、日常的なストレッチングが心血管リスクを軽減するための有効な手段となることを示しています。

限界点

  • 健康な若年男性を対象としているため、他の年齢層や性別における適用にはさらなる研究が必要。

  • リラクゼーション期間の影響はストレッチされた脚に限定されており、全身への影響は不明。

  • 中央血流動態(心拍数や心拍出量)に大きな変化が見られなかったため、血管反応は局所的である可能性がある。

読者が得られるポイント

  • 10秒または20秒のリラクゼーション期間を組み合わせたストレッチは、動脈硬化の軽減に効果的。

  • 適切なストレッチングは、血流増加と血管の柔軟性を改善する。

  • ストレッチの効果を最大化するためには、リラクゼーション期間の適切な設定が重要。


ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

Higaki Y, Yamato Y, Fujie S, Inoue K, Shimomura M, Kato S, et al. Acute effects of the different relaxation periods during passive intermittent static stretching on arterial stiffness. PLOS ONE. 2021;16(11):e0259444.
DOI:
10.1371/journal.pone.0259444.




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