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日本で働きながらアメリカの大学院に入ってみた話

タイトルにある通り、去年の秋学期からジョージア工科大学が提供しているオンライン修士プログラム, OMSCSを始めてみた。

OMSCSとは

OMSCSとはOnline Master of Science Computer Scienceの略でジョージア工科大学が提供しているすべてオンラインでプロセスでCSに関する学位が取得できる。 オンラインとはいえきちんと学位が認定されたコースで必要単位をすべて取得すればCSの修士号を手に入れることができる。ではこのオンラインコースと他のオンキャンパスなコースの違いはなんだろうか。

大きく分けて2つある。

学費が安い

オンキャンパスで通うよりもずっと安い。卒業に必要な単位は全部で30単位だがこれを取得するのにかかる費用は約$7000で日本円で78万円ほどだ。日本の国立大学の標準授業料は年間53万5800円。これが2年間続き、加えて入学金もあると優に100万は超える。日本の大学院と比較しても格安だが、これがアメリカの大学院と比較するとなおさらだ。アメリカのCSの名門といわれるStanford大学だと年間少なくとも$16000 ~ $18000程度かかりこれが2年間続く。(卒業できなければもっと)

これほど格安の学費で提供できるのはキャンパスを維持するコストなどが省けるためらしい。実際ジョージア工科大学のキャンパスからアクセスできる場所に住んでいる学生でもOMSCSに参加している人がいるらしい。

講義システムにはUdacityというすでに確立されたMOOCSのサービスを使っている。それもコスト削減に貢献しているのだろう。このコストの安さはオンキャンパスのプログラムでは得られないメリットだ。

OPTが認められない

もう一つの大きな違いはOPTが認められないことだ。OPTとはOptional Practical Trainingの略で学生ビザ (F1)を持っている者に一定期間の労働を許可するものだ。これはアメリカ政府が優秀な学生にアメリカで働いてもらうために作られた制度と考えられる。通常12ヶ月だが、STEM分野での学位を持っている場合は24ヶ月延長できて最大3年間いることができる。

OMSCSはオンラインコースのため、アメリカに行く機会なくプログラムを修了することができる。そのためOPTが認められないのは当然といえば当然でそれほど大きなデメリットにはならない。元々アメリカのキャンパスに行くのが難しい人々のために作られたものだ。修了した後アメリカで働こうと考えている人はそれほど多くないはずだ。

それでもOMSCSにはビザの面で有利な点がある。専門性の高い人材を国外から雇用する際によく用いられるH1Bというビザがある。例年65000のcapがあるが、この内訳が20000が"For US Master" で残り45000が通常のcapとなっている。つまりUSで修士号以上を持っているものには65000のcapがあり、そうでないものは45000のcapしかない。更にここ最近アメリカの景気はよいためか、65000を大幅に上回る応募が続いている。その場合は"抽選プロセス"が走りくじ引きである程度ふるいにかけられる。このときくじ引きは2回に分けて行われる。

1回目: USで修士号以上を持ったものを対象に20000を選ぶ

2回目:残った応募と1回目で落ちた応募をあわせて45000を選ぶ

つまりUSで修士号以上を持つとくじ引きが2回引けるようになるわけだ。これは大きい。大事なのはアメリカで修士号以上を得る必要があるところで、日本の大学で修士号をとっても1回目の抽選に入ることはできないというところだ。そのためOMSCSのようなプログラムはアメリカ以外に住んでおり将来アメリカで働きたいと考えている人間には大きなメリットをもたらしてくれる。(この他にもソフトウェアエンジニアとして働くにはCSの学位や職歴がなければならないなどの条件があるが、OMSCSはその点でも追加点を与えてくれるはずだ)

なぜOMSCSを受講しようと思ったか

というわけでメリットいっぱいのOMSCSだが最後になぜ私がプログラムを始めようと思ったか書きたい。私のバックグラウンドを簡単に書いておくと

- 29歳 東京在住

- 日本の4年生大学でCSの学士号を取得。大学院にはいっていない

- ソフトウェアエンジニアとして7年程の職歴がある

私は将来アメリカで働きたいという夢があるが、上記の理由でビザの壁がある。くじ引きで落とされてしまうとたとえ学位や職歴があってもアメリカには行けないのだ。(ちなみにH1Bの審査プロセスは1年に1度だけなのでチャンス自体が頻繁にはやってこない)そのためOMSCSでアメリカのSTEM領域の修士号を持っていれば入りやすくなるのではと思っている。これがひとつの理由。

もう一つは私は学士しか出ていないのでもう一歩踏み込んだ専門性がいまいちない。これからも長らく何かしらのエンジニアリングの分野で働いていくことを考えると専門的な勉強をやっておくことはキャリアによい方向に働くのではという大雑把な考えを持っている。実際アメリカの修士号の取得平均年齢は33歳らしく、このくらいで自分のキャリアや専門性を見直すのはよくあることなのかもしれない。ちょうど私がOMSCSが修了するころには30代始めだ。以前ライフ・シフトという本を読んで人生100年時代を生きる上で学び直しの重要性を痛感していたのでちょうどいい学び直しの時期がきたのかもしれない。

というわけでOMSCSを始めてみた。私が入学したのは2018 Fallという学期でちょうどこの冬完了した。一連の流れがわかってきたので次回からはこのOMSCSにどのように応募したか、どのように講義を受けているかなどの具体的な話を書いていこうと思う。

Reference

How about the recognition of Georgia Tech OMSCS?

Tuition and Fees, 2018-19 Stanford University

- STEM

ソフトウェアエンジニアのUSビザ

What is the Average Age of a Graduate Student?

#大学院 #働き方 #海外 #ビザ #アメリカ #サラリーマン



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