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#はたらくを自由に:『セクハラはセクシャリティーではなく、パワーの問題だ』

というのは、「ディスクロージャー」中で、弁護士がセクハラの嫌疑をかけられたマイケル・ダグラスに言うセリフです。(一応、労働生産性の考察のつづきです。まだ、スタートライン以前のセクハラ・パワハラの話です。人的投資の話ではありません。)

Sexual harassment is not about sex, it is about  power.   She has it; you don't. -Disclosure

すべてのハラスメントがパワー関係の問題ではありませんが、はたらく現場でのセクハラ、パワハラは、その職場での関係性において生まれる優位な立場を利用したハラスメントであるということです。

パワー関係といってもいろいろあります。上司・部下だけの関係ではなく、マジョリティーに対する、マイノリティー、取引先・顧客との関係、採用担当者との間でも力関係は生まれてきます(なにかを強要するわけではない環境型のセクハラも、不快に思っている側の立場が弱いことが多いのです。)

部下・社員のパフォーマンスをあげる=生産性を上げることを第一に考えた場合、ハラスメントの蔓延する職場なんて生産性低そうですし、さすがに「ハラスメントはよくない」という意識は定着してきていると思うのですが、なかなか「ハラスメントゼロを目指しましょう」という空気にはなりません。クレームをした人がたたかれたり、そこまでいかなくても、なんかいろいろめんどくさいことになってきたな、とかモヤモヤしてる人が多そうです。

そこで、セクハラ・パワハラのモヤモヤを考察してみたいと思います。モヤモヤが晴れたからってハラスメントがなくなるとは限りませんが、少しは息苦しさが軽減されるかもしれません。 素人の考察ですので、法的根拠はありませ。

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みんな、セクハラ・パワハラっていうけど...

1.過敏になりすぎじゃないの?

確かに。いま、「ハラスメント」で検索したら、「...全35種類のハラスメント一覧」という記事がヒットしました。35種類...パワハラ、モラハラくらいまではなんとなくわかりますけど、アルハラ、ジェンハラとか知りませんでした。セクハラ関連では、「これもセクハラ50選」なんて記事もあります。ここまでくると、何も言えない、個人的な話は一切できない、飲み会はおろか、ランチににも誘えない。もう、仕事の話以外は一切しません!!くらいの気持ちになってきます。

ですが、過敏なくらいでちょうどいいのです。今まで、組織・社会のなかでハラスメントを容認してきたことへの反動ですから。ここで、何が良くてなにがダメなのかはっきりしろよ、というのはナンセンスです。「会社の飲み会で、女子社員にお酌をさせて、酔った勢いで抱きついちゃう」とか、「面接で恋人の有無を聞く」とか、明らかにアウトでしょってことを、いままで放置してきたのです。明らかにアウトなことはアウトだし、アウトかどうかわからないけど相手を不快にするかもしれないことは取り敢えず慎む。なにが相手を不快にするかわからない人は...取り敢えず上記の記事でも読んでみてください。

過度期が過ぎて、ある程度セクハラ・パワハラに対する共通認識ができればもう少しわかりやすくなるはずです。

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2.なんで、あいつはよくて俺が言ったらだめなんだよ!

どうしても、想定がMaleになってしまいます。差別的ですね。でも、これもよく聞きます。佐藤課長(気遣いのできる、さわやかなイケおじ)の、「あれ、おめでた?予定はいつ?」発言は、ハラスメントの苦情にならないのに、川口係長(威圧的、女性社員と男性社員の扱いが普段から違う)が、「えっ、できちゃったの?産休とるつもり?」は、人事部から呼び出しが、なんて。

ハラスメントは受け手がどう思うかですから、内容だけではなく、そのトーンや普段の言動から推察される発言の意味なんかも含めて、ご懐妊を祝う、または気遣っているのか、嫌味でいっているのか、受け手が判断します。

容姿や健康状態(妊娠を含む)は、ビジネスには関係のないパーソナルマターなので、向こうが自己開示してくるまで、気が付かないふりをしておくというのが、特に親しくない同僚、部下、取引先相手では無難だと思いますが、普段の言動に嫌味がなく気遣いのできている、佐藤課長なら、つい気付いたことを言ってしまっても、せいぜい、「課長、それってマタハラですよー」「え、そうかい?ごめん」くらい0で終わります (多分。)

それって、不公平じゃないか? 

はい、不公平です。 いままで、セクハラ・パワハラという理不尽が見過ごされてきたのですから、それくらい当然です。

川口係長、普段の態度を改めましょう。そうすれば、パワハラ・セクハラで訴えられるリスクは確実に減ります。

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3.「イケおじ」だって差別発言だろ!!

どうしても、想定が40代後半から60代くらいまでのMaleになってしまいます。「今時の若者は...」とか「女・子供は黙ってろ」とかの対にくるのは、「今時のおっさんども」になってしまいます。対立や分断は、物事を解決する妨げになりますし、世代や男女で括るのは差別的です。

なので、「おっさん」や「イケおじ」という呼び方はアウトでしょう。「おばさん」や「ねえちゃん」がアウトならば。 たとえ統計的にみて差別発言、セクハラ・パワハラの加害者が、ある年代、ある性別に偏っていたとしてもです。 みんなで気を付けていきましょう。 相手に配慮を求めるならば、川口係長も個人として尊重してあげましょう。

ごめんなさい。以後、「イケおじ」発言は自重します。

4.俺だって部長のパワハラを我慢してきたんだ!!!

組織的・社会的にはこれが一番の問題だと思います。

自分の受けたストレスを他で吐き出す。上からのストレスを部下に、会社でのストレスを家で、家でのストレスを学校で、学校でのストレスを…一番弱い者は逃げ場がありません。

セクハラ・パワハラが蔓延している職場。部長どころか、会社のトップが役員会で役員を恫喝している、なんていう会社では、残念ながら、ハラスメンはなくならないでしょう。転職先を探してください。どんな立場の人であれ、怒鳴りつけても許される、とか人前で叱責してもいい、なんてことはないのです。

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マネージメントが問題に気付いている。企業として、息苦しい環境を変えていきたい、という組織は希望があります。中間管理職クラスが新しいポリシーになじめなくても、川口係長が各フロアに1人、2人いても、トップが企業文化を変える必要性を感じているのなら、そこに投資していくつもりがあるのなら、これから変わっていけるでしょう。

今まで根付いた組織文化・社会文化を変えるのはなかなか難しいことです。会社の規定を1つ、2つ付け足したり、クレーム担当係(兼任)なんかを配置したくらいじゃ、今マネージャー職にある、今までパワハラに耐えてのし上がってきた人々の意識を変えるのはほぼ無理です。「この言い方なら、パワハラじゃないだろ」、「じゃー、忘年会は男性部下だけで」なんて全く生産性のないあの手、この手で抵抗してきます。あまり被害にあったことのない無関心層も、「騒ぎすぎじゃね?」「忙しいんだから」と、見て見ぬ振りをするかもしれません。

でも、お互いに気持ちよく働ける環境、風通しのよい組織、ハラスメントの無い社会の方が生産性が高い気がしませんか? 「クリエーティブマインド」、「イノベーション」、「コラボレーション」、今日本の企業に求められている資質とストレスフルな環境というのは、相性が悪そうです。

では、どうしたら変えていけるのでしょう? 教育とトレーニング、つまり人的投資、人材開発です。(つづく)

ー写真はヨセミテ国立公園です。

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