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「ゆきのしずく」#ウミネコ文庫

みなさんはゆきをみたことがありますか?

もしもあなたがみなみしまにすんでいるのでしたら、もしかしたらみたことがない!かもしれませんね。そうでなくても何年なんねん一度いちどしかゆきらないところもありますから、ゆきをみたことがなくってゆきをみてみたいなあってあこがれているひともいるかもしれません。

雪は何色なにいろかな?といたら、みなさんはなんてこたえますか?

「それくらいってるよ!」っていうかしら。でもね、これはまだゆきがそのいろではなかったころのおはなしなんです。

❄︎

むかしむかしそのむかし、ゆきいろをもっていませんでした。かぜのように透明とうめいだったんですって。雨粒あまつぶ透明とうめいですよね。でも、かたちはあります。おもさもありますよね。コップにためることもできます。おみずみたいに。でもゆきおもみもなかったんですって。だれにもみえないし、でもつめたい、そんな不思議ふしぎな、ほらまるで透明人間とうめいにんげんのようだったんですよ。おはなのようにふわりとひらいて、それはかろやかにおどっていても、だれにもみてもらえませんでした。

はるがやってきたばかりのあるのことでした。ながふゆえて、はじめたはなたちのきれいないろをみていたら、ゆきかなしくてたまらなくなりました。なんだか仲間なかまはいれないがしてさみしかったんです。それで勇気ゆうきをだしていてみることにしました。

「おねがいがあります。わたしにいろをわけてくれませんか?」

ぷっくりとふくらんで、ほほえみかけているクロッカスはもうしわけなさそうに、こうこたえました。

「ごめんなさい。それはできません。マルハナバチがたのしみにっているんです。わたしのこのむらさきいろはなびらにつつまれて、おひるねするのを」

ゆきはとても残念ざんねんでしたが、マルハナバチがっているのだからしかたありません。そこで、ちかくにいていたちいさなスイセンのティタティタにいてみました。ないしょばなしきなティタティタはかわいらしくくちをとがらせて、くちぶえをくようにこういいました

「あなたにいろをわけてあげるのはちょっと無理むりみたい。だってあるきはじめたばかりのちいさなおとこがおねえちゃんとをつないで、わたしたちがさいいているあかるい黄色きいろ小道こみちをおさんぽするのをまっているんです。まだかな?まだかな?って」

勇気ゆうきをだしてみたけれど、だれもいろをわけてもらえません。かなしくなったゆきはぽろぽろとなみだをこぼしました。そのしずくは、ぽとん、ぽとん、とっぱのつたをつたってつちをぬらしました。

そのときです。おずおずとしたちいさなこえこえました。

「わたしはうつくしくはないけれど、もしもあなたがのぞむなら、わけましょう。このしずくのかたちをしたはなびらのまっしろいいろでもよいのならば。」

名前なまえたないちいさなはながそっとこちらをみあげていました。

ゆきはたいそうよろこんで、そのまっしろないろをわけてもらいました。ゆきはそのいろがなによりもうつくしいとかんじ、とてもしあわせでした。

そしていろのおれいに、そのはなゆきのしずくという意味いみの「スノードロップ」という名前なまえをおくりました。そのまっしろなはなびらによくにあうメドウグリーンのイヤリングもいっしょにおくりました。それからです。ゆき毎年冬まいとしふゆあいだはずっとそのちいさなはなまもっているそうなのですよ。

(⌘ドイツのつたえがもとになっています)


今回、ウミネコ文芸部の童話応募にぜひ参加したい!と思いました。というのも、長い間、絵本や童話を書きたい思いがありました。でも、思ったように挿絵が描けずなかなか本腰を入れることができませんでした。ですから今回のこの企画、是非とも!という思いで、以前、娘のために書いたものにしようかとか、構想だけあってまだ形にしていないものを書き下ろそうかとか、本当に色々迷ってしまいました。

このスノードロップ、雪待草のお話は、元々この春、詩として大人向けに作ったものです。(確か、noteでもみなさんにお目にかけた気がします。覚えてないという💦)このお話がとても好きで、小さい方にも読んでもらえるものにしたい、という気持ちが何よりも勝ることに気づいて、今回童話として書き換えました。年齢を広げるために全ての文字にルビを振ってあります。というのも、娘が小さいころのことを考えると、自分の対象年齢よりも高いものでも読んでとても楽しんでいたんです。意味が全てわかっていたかは定かではありませんが、ふわりと伝わればそれでいいのかなと。

長年スノードロップが見たくて、この春実際に目にしました。春一番に咲くこの花は雪の中にありました。

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