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⑤あきらめない

通院ができない以上、診察はおろか、薬も処方してもらえない・・・

私は、落ち込みました。

病気だと分かっているのに、このまま放置しておくなんて、いいこととは思えない。

たとえ、認知症に特効薬はないにしても、今あるだけの医療は受けてほしいのだけれど・・・

私はこの先、どうしていいか分かりませんでした。

でも、夫はあきらめませんでした。

次の診察の予約には、二人で行こうと言うのです。

そんなことってできるのかな。患者本人がいないのに?

先生は、私たち二人しかいないのを見て、仕方がないですねと仰り、終了という流れになった時、夫はちょっと待ってくださいと食い下がりました。

「この病院に義母が来ることはないと思うのです。けれども、せっかくここまで来たのに、ここで糸が切れてしまっては、これまでの診察が無駄になりかねないですし、我々としては、病気が進むのを放置するわけにはいかないのです。先生、何とかなりませんか。もし可能であれば、薬を処方していただきたいのですが、何か、どうにか手立てはないものでしょうか」

すると先生は、「かかりつけ医の先生に処方していただくという手はあります」と仰いました。

いわゆる2人主治医制のことと思いますが、専門病院の医師が「診療情報提供書」なるものを作成し、それを元にかかりつけ医の先生が薬を処方する、というもののようでした。

また、会計を済ませた時、夫は、この専門病院で相談員のようなことをされている看護師さんを見つけると走って捕まえ、

「今、義母は義父の看病で大変なストレスがあると思うのです。介護認定は今の段階では難しいかもしれないですが、本当はデイサービスとか訪問看護とか、そういうものを利用できるといいと思っているのです。どうにかなりませんでしょうか」

すると、その看護師さんはこう言いました。

「利用できますよ。うちの病院は市が認定する専門病院ですから、うちの診断書を持って「自立支援医療(精神通院医療)」を申請すれば、一定の料金で訪問看護を利用することは可能です」

私たちは、その場で診断書を申請しました。同時に、希望の訪問看護ステーションはあるかと尋ねられましたが、勉強不足でよく知らないですし、こちらの病院は認知症等精神科の専門ですので、こちらの病院が運営する訪問看護ステーションの看護師さんを紹介していただけませんか、と依頼しました。

担当となった訪問看護師さんはとても柔和な感じの人で、私たちの話をじっくり聞いてくれました。

そして、母の嫌がっている病院の関連施設だと分かると拒否するかもしれませんので、訪問時、ネームプレートは名前だけのものにしますね、という細かい気遣いで対応してくれました。

父の病が悪化し入退院を繰り返す中、母のために、専門病院、かかりつけ医院、訪問看護ステーション、市役所の間を走り回り、目まぐるしい毎日でしたが、母の状況を見ると必然だったと思います。

また、介護について、認知症について無知だった私一人では、こういう流れは作ることができなかったと思います。

こうして、主治医による投薬と、看護師さんの訪問が開始されたのでした。



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