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【ライブレポート】yonige、チリビ、tricotらが渋谷で躍動 対バンイベント『Baby steps.』が提示した「音楽の本質的な楽しさ」

ホリプロとスペースシャワーTVの初となる主催イベント『Baby steps.』が7月1日に大阪、5日に東京で開催された。
 
「少しずつ1歩進む」というイベントタイトルには、音楽ファンが様々なアーティストと出会うきっかけになってほしいとの願いが込められている。今回、決定したのはChilli Beans.、tricot、yonigeの3組に加え、鈴木実貴子ズ、ロザリーナの計5組。バラエティに富んだ才能と出会えた2公演より、5日渋谷O-EASTの模様をレポートする。

■「お客さんが音楽好きなことが伝わってくる」

トップバッターはyonige。このイベント前に行われた各バンドの“顔合わせ”では、出番に関してごっきん(Ba,Cho)が「うちらは最初が良い」と語っていたが、見事希望通りの順番になったこの日。場内がまだ薄暗い中、「さよならアイデンティティーよ もう少し早く気付けたら」と、牛丸ありさ(Vo,Gt)の歌いだしとともに始まったのが、「さよならアイデンティティー」。まだ空気感を掴みきれてないフロアを刮目させる、強度を持った一曲だ。
 
「リボルバー」「our time city」とアッパーな曲を立て続けに披露した後、ここで初めてのMCへ。「改めましてyonigeです。ずっとタイミングを逃して言ってなかったんですけど、3月からホリプロに所属しました。1年間独立してやってきて、こういう縁に恵まれました。ということで、どんどんやっていきます」と、らしさあふれる朴訥とした報告をした後は「最終回」へ。「リボルバー」からのこの3曲の流れは、武道館ワンマンでも披露しており、ファンにとっても“鉄板”となっているのではないだろうか。
 
そこからミディアムテンポの「2月の水槽」「往生際」「催眠療法」、牛丸がアコギに持ち替えて「ピオニー」を披露。改めて、yonigeのメロディラインは、聴く者に心地よさを与えてくれるなと実感する。ラストの「春の嵐」を演奏する前に、牛丸自身は「お客さんの表情とか顔を見てて、音楽が好きなことが伝わってきます。すごく良いイベントですね」と、フロアの“音楽を聴く姿勢”を称えていた。いや、今日のイベントに限って言えばその好循環は当然とも言える出色のライブだった。

■チリビは経験が少ない対バンイベントに「楽しいです!」

転換の時間には、サイドステージでも演奏が行われた今回のイベント。登場したのは、愛知県名古屋市を拠点とする男女2ピースロックバンド、鈴木実貴子ズ。ドラムの高橋イサミ(バンド内での呼称は「ズ」)が、「10年やってきても、僕ら仲が悪いんです。売れてもないし、でもいつかいいことあると思って今日来たら、テレビ愛知さんから花が置いてあって。愛知県の僕らに…!と思ったら、ロザリーナさんへの花でした」と冒頭から魅力全開のMCとともにはじまったのが「ファッキンミュージック」。
 
次回のアルバムに収録されるとのことなので詳しくは割愛していくが、「ものすごく心が揺さぶられる曲」とだけは言える。MCのおもしろ具合からは想像できない求心力を持った曲で、一瞬で会場の空気感を変えていた。

鈴木実貴子ズの全4曲が終わり、メインステージに登場したのはChilli Beans.。2019年に同じ音楽塾で出会い、バンドを結成した3人組で、早々にサマソニなどの大型フェスが決定するなど、その才能をいかんなく発揮している。同音楽塾の主宰、西尾芳彦氏が作曲した「See C Love」からスタートし、同音楽塾出身のVaundyをフィーチャリングした「rose feat. Vaundy」と、“縁”が生んだ曲が続く。そして3曲目は「duri-dade」。こちらは、サポートドラマーYuumiとともに制作した曲で、途中、メンバー3人が一緒になってドラムを叩くなど、“今日を楽しもう”という様子が見て取れる。
 
MCでは、Maika(Ba,Vo)が「同じステージに立てて楽しいし、嬉しいね」と言うと、間髪入れずにMoto(Vo)が「楽しいです!」と相槌を打つ。普段の会話のようなカジュアルなやり取りの後に披露されたのが「School」だ。「こっちに来ちゃえば単純なストーリー」という歌詞の通り、Chilli Beans.に身を委ねていれば問題ないというぐらい、構えることなく音を楽しめる(そもそも彼女たちがステージで目一杯体を動かし実践している)。その後「lemonade」「HAPPY END」「シェキララ」「you n me」という、グッドメロディな曲を連続で聴いて、そんな感想が浮かんできた。

■“らしさ全開”で締めたtricot

再び転換に入ると、サイドステージではロザリーナがスタンバイ。1曲目は、彼女の知名度をグッと押し上げた「えんとつ町のプペル」だ。そして、テレビ朝日系ドラマ『unknown』の挿入歌「I knew」や、「何になりたくて、」などのミディアムバラードが続く。それでも、物足りなさは全く感じさせず、彼女の特徴でもある、歌声の力強さを十二分に味わえるセットリストになっている。
 
「大勢の前だとあまり喋れない……(笑)。いろいろやっているので、ワンマンライブに来てください。楽しいと思います」と控えめなMCを経て、「コカ・コーラ」CMソング「Life Road」。「どんな普通な事でも鮮やかに変わる」という前向きなメッセージとともに、開放感のあるメロディが空間を包む。秋に決定している東阪ワンマンライブではさらにカラフルな楽曲を聴くことができそうだ。

そして、イベントのトリをつとめるのがtricot。比較的バンドの中では“ストレート”な曲とも言っても良い「エコー」からはじまり、キダ モティフォ(Gt,Cho)の特徴的なギターフレーズが出色の「餌にもなれない」と続く。そして、今やライブの定番曲、すなわち盛り上がる曲のひとつとなった「おちゃんせんすぅす」で前半を締める。ここで中嶋イッキュウ(Vo,Gt)がギターを置き、最新アルバム『不出来』からのリードトラック「#アチョイ」を披露。3人の演奏に乗せて、イッキュウが韻を踏んだ歌詞を畳み掛ける異色ナンバーだ。
 
同アルバムより「OOOL」、そしてヒロミ・ヒロヒロ(Ba,Cho)のイントロフレーズが印象深い「Potage」を終えた後、この日はじめてのMCへ。「今日出たアーティストたちは最近ホリプロに入ったんですかね?知らんけど(笑)。私たちも、1年ぐらいホリプロにいますが、そもそも入るとは思わなかった。こんな感じの音楽でいいんやって」と、イッキュウらしいひょうひょうとした話の後に、ラスト「不出来」が鳴らされる。「アルバムから漏れた名曲たち」が収録された同タイトルのアルバムの中でも、とくに暗く、重い曲で締めた。「うちらはどの順番で出ても、それまでの空気をぶち壊して帰る」とインタビューでキダが言っていた通りで、tricotらしさを味わえたステージだった。

大阪、東京にて計5アーティストで開催した『Baby steps.』だったが、-1st step-とタイトルについているように、今後もシリーズ化していきそうだ。同事務所というくくりだけではなく、各アーティストともにはっきりとした存在感があり、マスに届くメロディセンスを持ち合わせている。今後出演者(所属アーティスト)が増えていけば、さらなる大きな会場、何なら野外でも……そんな期待をしたくなる、「純粋に音楽を楽しめる」一夜となった。

<セットリスト>

7月5日 Spotify O-EAST

■yonige

M1 さよならアイデンティティー
M2 リボルバー
M3 our time city
M4 最終回
M5 2月の水槽
M6 往生際
M7 催眠療法
M8 ピオニー
M9 春の嵐

■鈴木実貴子ズ

M1 ファッキンミュージック
M2 ベイベー
M3 新宿駅
M4 正々堂々、死亡

■Chilli Beans.

M1 See C Love
M2 rose feat. Vaundy
M3 duri-dade
M4 School
M5 lemonade
M6 HAPPY END
M7 シェキララ
M8 you n me

■ロザリーナ

M1.えんとつ町のプペル
M2. I knew
M3. 何になりたくて、
M4. Life Road

■tricot

M1 エコー
M2 餌にもなれない
M3 おちゃんせんすぅす
M4 #アチョイ
M5 OOOL
M6 potage
M7 不出来
 
取材・文/東田俊介
写真/Kana Tarumi


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