「本当に大きかった」鈴木一真、アメリカ生活を後押しした矢沢永吉の言葉
西島秀俊、濱田岳、上白石萌歌が、警察組織の中の“ワケありトリオ”として、事件解決に奔走する刑事ドラマ『警視庁アウトサイダー』(テレビ朝日系列)。2月2日(木)放送の第5話より、俳優・鈴木一真が本格参戦を果たす。
鈴木は、暴力団「鷲見組」の傘下「信濃一家」の組長・当麻秀和として、スマートなルックスの内側に、底知れぬ恐ろしさを秘める“危険人物”を体現。実際の彼は、アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動しており、日本のテレビドラマに出演するのは2020年の『探偵・由利鱗太郎』(カンテレ・フジテレビ系)以来とのこと。「すごくワクワクしています」と語る今作への思い、また日本を離れた動機や生活ぶりを聞いた。
■コロナ以来約2年半ぶりの国内ドラマ
――ようやく海外渡航も制限が緩和されてきましたが、いつ頃帰国されていたんですか。
「昨年の11月に、コロナ以来およそ2、3年ぶりに帰ってきて、今回のドラマの話をいただきまして。改めて撮影のために年明けに帰ってきた感じですね。」
――今回、久しぶりの国内ドラマ出演とはいえ、物語の軸となる“ひとつの殺害事件”に関わる重要な役ですね。
「はい、一人の重要なキャラクターから入れ替わりの様なポジションで僕が演じる当麻秀和が入るわけなんですけども、そのバトンをしっかり受け継がなければならないプレッシャーはあります。ただ、ちょうどいいプレッシャーとして受け止めて、存在感を何倍にもして返していきたいなと思っています」
――現在はアメリカでの活動が主だと思うんですが、向こうでは具体的にどういったことを?
「基本は俳優には違いないのですが、常にオーディションを受け続けている気分ですね。滞在中の7年間に受けたオーディション用のペラ紙を集めてみたら、辞書2冊分より高く積み上がりましたから(笑)。以前はインディーズ作品やコマーシャルが主戦場でしたが昨年ようやく大きな作品の素敵な役を勝ち取ったので発表できる日を楽しみにしています。」
■空港を出発するギリギリまで迷っていた
――アメリカには、2014年に文化庁の新進芸術家海外留学制度を使って行ったとのことですが、日本ですでにキャリアを重ねていた中、そこまで掻き立てるものがあったのでしょうか。
「たしかに、コンスタントにお仕事をいただいていたし、結婚もしていたので、家族を養うためには日本にいた方がいいという気持ちもありました。ただ、元々モデルで海外にチャレンジしていた経験があったことから、俳優としても、海外でやりたいって気持ちはずっとあったんですよ。この制度の年齢制限が45歳までと、もうリミットが迫っていたということもあり、いざ決断しました」
――何事も新しいことをはじめるのに年齢は関係ないと言いますが、40歳を過ぎて、ゼロからの環境を気にせずチャレンジできるのはすごいですね。
「正直、空港を出発するギリギリまで『誰か止めてくれないかな』って、ちょっと思っていましたよ(笑)。この決断に関しては、奥さんも後押ししてくれました」
――矢沢永吉さんともご交流があると伺いました。以前から親交があったんですね。
「滝田洋二郎監督の『お受験』という映画で共演して、バイクがお互い趣味だったこともあり、以来、ツーリングやクルージングにお誘いいただく様になり、過酷なアクシデントを乗り越えた事も何度もありまして。矢沢さんにもご相談させていただいて『行って後悔することがあるかもしれないけど、行かなかった時のほうがもっと後悔するかもしれないよな。』と言われたんですが、その言葉は決断するうえで本当に大きかったです」
■海外でも視聴できる作品に出演したい
――そんなエピソードがあったんですね。いま現在、語学のレベルもかなり上達したのでは。
「日常生活には支障はないんですが、やっぱり俳優業となると、アクセントが大切になってくるので、その都度発音のコーチにお願いしています。その他にもネイティブらしい喋りのリズムだったり、まだ苦戦することが多々ありますね」
――移動もしやすくなったことから、日本でお仕事することも増えてくると思うんですが、今後の展望はありますか?
「もう何でもやっていきたいっていうマインドですね。欲を言えば、拠点がアメリカにあるので、海外にいる人たちが観ることができる配信ドラマですとか、映画に出演できたら嬉しいです」
――鈴木さんのような前例をあまり聞いたことがないだけに、ワールドワイドに活躍する姿、期待してしまいます。
「モデルの時も、日本を飛び出してパリやミラノコレクションに行って、最初は結果が出なかったんですけど、続けてくうちにどんどん信頼してくれる人も増えて、いろいろと仕事が増えていった経験がありました。それが俳優で当てはまるとは限らないんですが、ようやく結果が出てきているので、このスタンスを続けていきたいですね」
【リーズンルッカ’s EYE】鈴木一真を深く知るためのQ&A
Q.鈴木さんのInstagramを拝見していると、お子さんとの投稿で埋め尽くされています。本当に「良きパパ」の様子が伝わってくるなと。
「もう完全に親バカになってます(笑)。正直、子どもが生まれるまでは、苦手だと思ってたぐらいなのに、何ものにも変えられない、自分より大事な存在なんだって、対面してじわじわ分かってきたんですよね。いま息子はスケートボードやドラムとか、いろいろと楽しんでいて、将来は僕の希望としては、アートの方面に進んでほしいな……なんて思っています」
Q.ロサンゼルスではどんな格好でいることが多いんですか?
「日々アクティングクラスやジムに行きますし、息子と公園にも行く事が多いので動きやすい服装が多いですね。決めすぎちゃうと、変な浮き方をするので、僕もスウェットとか楽な格好が多いです。ただ日本でも、スウェット上下が流行ってるって聞いて『あ、良かった』と(笑)」
<編集後記>
90年代のストリートカルチャーを通ってきた筆者にとって、鈴木一真さんへのイメージは「俳優」と双璧して「モデル」の印象が強い。その当時のカッコよさそのままに(54歳にはまず見えない!)、目の前に現れたときは、何かカタルシスのような、不思議な気持ちになった。アメリカに行った歳のエピソードにしろ、チャンレジし続ける姿勢にしろ、年月を経てもカッコいい人は変わらないんだなあ……。
<マネージャー談>
約2年半ぶりの日本のドラマ出演ということで、本人共々撮影を楽しみにして迎えた当日、夜のレインボーブリッジが綺麗に見える場所での撮影でした。
いつも頂いた役に対して真剣に丁寧に取り組む姿勢、少しでも気になる点があればとことん追求するところなど、とても尊敬しています。
今回この取材を通して、海外での活動や過ごし方など知っていただくいい機会を頂けたと思います。
【番組情報】
1月期EX木曜ドラマ『警視庁アウトサイダー』
テレビ朝日系にて毎週木曜21:00~21:54放送
出演:西島秀俊、濱田岳、上白石萌歌、斎藤工、片岡愛之助、鈴木一真ほか
原作:加藤実秋
脚本:髙橋泉
音楽:末廣健一郎
演出:木村ひさしほか
ゼネラルプロデューサー:服部宣之
プロデューサー:藤崎絵三、長谷川晴彦、山形亮介
制作協力:KADOKAWA
制作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
取材・文/東田俊介
写真/佐藤亮