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シンギュラリティと人間の拡張

AIの指数関数的成長に伴ってシンギュラリティ(技術的特異点)という言葉が社会に浸透してきている.我々の生活を大きく変え、AIが仕事を奪う、AIが人間を超えた知能を有することになる.そんな議論が中心になっているが全くのナンセンスな会話である.AI>人間はアプローチとしては単純であり明快な答えになってしまう.しかしAIの本質を見ていくとAI>人間は単純で欠陥だらけであることに気づくだろう.AIのプレゼンスとシンギュラリティに関して少し考える必要がある.

実業家であるレイ・カーツワイルはシンギュラリティは2045年に起こると主張した.ここから意見が氾濫し、今では既にシンギュラリティは起こっていると主張する哲学者も少なくない.これはシンギュラリティが技術的特異点と呼ばれるように我々には馴染みのない単語なため、勝手な理解や誤解が蔓延してしまっていると思う.(下記はMediumのSingularity may not require AGIから抜粋)

この表はシンギュラリティを代表する図として見たことがある方も多いかもしれない.指数関数的な発展アプローチを取っているが、Human IntelligenceとSingularityでは比較対象が見えず分かりにくい.そこで新しい考え方として提示できるのがComputer×Human Intelligenceの考え方である.

中国がES細胞から猿のキメラの作製に成功した事例とは少し異なり、実存する人間に対し機械的なアプローチを加え知能指数を大きく向上させる結果を出すことをカーツワイルは想定している.理論の段階では人間の脳の毛細血管にナノロボットを送る技術やElon Maskが考えている脳に電極を直接刺すのは人間の知能に大きく影響を及ぼすものである.

そして今行われている医療行為はシンギュラリティの前段階と言える.iPS細胞から修復不可能な臓器の再生を可能にしたり一昔前のロボトミー手術は人間の生み出した反省すべき歴史だが人間の知性に触れた点で大きな関係はあった.こういった内面的作用の他に外面的作用も存在する.

先日、東京ミッドタウンで行われている21-21design sightの「未来のかけら」にお邪魔した時に正に人間と機械の融合が素晴らしい事に感動した.

稲見昌彦教授の考える「人機一体」はHuman Physical×Computerのような融合美を兼ね備えた新人類だ.今まだ不可能だった人間の行動範囲を大幅に変え様々な場面で多様なアプローチを可能にしている.

こういったPhysicalの面でもシンギュラリティに大きく貢献するのではないだろか.

江戸時代に庶民にも使われるようになったメガネは外面的要素を持ち、人間の行動範囲を大きく変えた.『南総里見八犬伝』で知られる曲亭馬琴も執筆中に左目の視力低下に伴ってメガネを使ったとされている.江戸時代か知られる名作を残してきた偉人にメガネが存在したからこそ素晴らしい作品ができた.

今では人間に与える技術はメガネに留まらず街中を歩けばApple Watchを付けている方やApple Vision Proのコモディティ化が進めば街中にゴーグルを装着した人が出てきてもおかしくない時代だ。(友人は普段からVison Proをつけて外出するが全く問題ないそう)

こういった人間に直接的なアプローチを与える技術と外面的要素からアプローチを加える要素が人間と融合することで今まででは不可能だった問題が解決したり、面白いアイデアが生まれてきたりする.

メガネに始まり義足といった技術によって健常者と障害者の壁を完全になくそうとしている.2021年に行われた東京オリンピックとパラリンピックではパラリンピック選手の記録がオリンピック選手の記録を更新するのではないか.と話題にもなった.

SingularityがHuman Intelligence×Computerであるように今後に出現するのは“AIなどの物理的世界に存在しない仮想空間の計算機”と“物理世界に存在するHuman Intelligence×Computerの融合的存在”そして“Human”といった枠組みになる.

この社会をどう評価するのではなく、それぞれが違った思想、知性で生きていく社会になり正に
多様性社会が進むのではないかと思う.一種の未来的想像に過ぎないが、徐々に手触りのある未来になっている事もまた事実である.

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