実家を離れての大学進学は交換留学以上に大変な経験かもしれない

 こんにちは。アメリカに交換留学中の日本人大学生です。普段は、アメリカで生活してみて感じる日本との文化・社会・制度の違いなどを発信したいと思っていますが、今回は少し違って、実際の留学経験について書きたいと思います。1つ目のノートにも書いた通り、ただの”留学生ブログ”はやりたくないと思っているので、普段は自分の留学経験をテーマには書かないのですが、少し違った視点から考えたことがあるので書いてみます。

 私は1年度(9ヶ月)の交換留学プログラムで、もう9ヶ月目なのでかなり終盤にさしかかってます。何を学ぶことができたのか、どう成長したのか、等、自分の留学生活を振り返り、後悔なく終えられるようにしたいと考える時間が増えました。一方で、帰国の準備をしたり帰国後の予定を考えたりする中で、家族や友人との久々の再会を想像して楽しみな気持ちもあります。

 そうして考えている中で、留学前に「辛くなったらいつでも電話して」「大変なこともあるだろうけど頑張ってね」と家族・友人など多くの人から声をかけてもらったことを思い出しました。私自身も、留学前は留学について”大変””辛い”というイメージが強かったです(もちろん、それが良い経験になると思ってます)。でも、今振り返ってみると、もちろん日本と同じようには暮らせないし、困ったこともたくさんありましたが、今までの人生の中で1番変化が大きくて辛かった期間かと問われれば、それは違う、というのが私の答えです。そして、私にとって1番変化が大きくて辛かった期間は、大学入学後の半年程度でした。

 私は実家を離れて遠い地域(関東→関西)で1人暮らしを始めたので、辛さも大きかったんだと思います。今回は特に、実家を離れて初めて1人暮らしをする大学入学後の生活を留学生活と比較して、留学と同じくらい、もしくはそれ以上に困難を経験する可能性があることを伝えていきたいです。今はあらゆる形態で留学する人は増えており、特別に珍しいわけではありません。それでも大学に進学する人の数と比べたら当然少なく、自然と留学には”何か特別なことをする”という覚悟を持って臨む人が多いです。一方で、幸せとも言えるかもしれませんが、大学進学という選択は非常に多くの人がしていて、留学ほどの”覚悟”を持って臨む人は少ない、というのも大学入学後に苦しむ原因の1つだと思います。(ここでいう留学と大学進学との覚悟の違いは、”大変なことが待っている””辛いこともあるかもしれない”という覚悟であって、その選択への感謝や有り難み、その選択にきちんと目標を持って臨むかどうか、などは全く別の話です。大学進学という選択ができることに感謝して、なんとなくではなく目標を持ち入学をする人であっても、”困難が待ち受けているかもしれない”とは想像しにくい、ということです。) 

大学入学後が大変な理由 
主に以下の3つの理由が考えられます。1つずつ見ていきます。
1. 地元を離れる
2. 努力の仕方(生き方)が大きく変わる
3. 準備期間が短い

1. 地元を離れる
 地元を離れることの大変さは、周りに知り合いが全くいなくなることです。それを考えると、日常的に戻れる近さでない限り、新幹線を使って6時間離れた場所への大学進学も、飛行機を使って13時間離れたカリフォルニアへの留学も、本質的には同じだと思います。単純に新しい環境に身を置くことには様々な困難がつきものですが、その時にもともとの知り合いとの関係が維持されているか否かは重要です。大学入学直後に、大学内で友達ができなかったり友達を作るのに苦労したりすることは誰にでもありますが、そんな時に、その大変さを日頃からなんとなく家族に愚痴れるとか、高校までの友達と会って気を使わずに盛り上がれるとか、そういう時間があると、ストレスも軽減されるはずです。
 もちろん、「ちょっとストレス溜まってきたから家族に相談したい」「昔の友達に悩みを聞いてもらいたい」というように、新しい環境での辛さを自覚していて、自発的にストレスを解消しようと思った場合の行動のしやすさは、関東 - 関西と日本 - カリフォルニアで大きく異なります。もちろん国内の方が実現しやすいです。また、国内外関係なく、今ならSNSもあるし話したい時には電話もできます。しかし、これも、ストレスを自覚している場合に限られることです。なぜこれを強調するかというと、新しい環境のストレスを自覚していなくて、気づかないうちに心に溜まっていってしまうと思うからです。
 地元で暮らしていれば、昔からの友達に偶然会うこともあれば、何かのついでに懐かしい場所にフラッと立ち寄ることもできます。家族が、何気ない変化に気づいて、さりげなく声をかけてくれたり励ましてくれたりすることもあります(親って本当によく見てるもので、色々気づいて気を使ってくれてたんだなあと、振り返ってみて感じます)。行きつけのコンビニでもスーパーでもマックでも、なんでも、自分が行き慣れた場所で落ち着いたり、なんとなく知っているくらいの人に話しかけてもらうだけでホッとしたり、そういう瞬間があると思います。ストレスを意識して行なっているわけでもない、こういう瞬間が、日常の気づかないうちのストレス解消に大きく役立っていると思います。
 だからこそ、意識的に会いに行くしかない地元を離れた人は、気づかないうちにストレスを抱え込んでしまう可能性があると思います。そういう意味では関東から関西の距離も、日本からアメリカの距離も、同じに思えてくるのです。

2. 努力の仕方(生き方)が大きく変わる
 高校までの学校と大学は、過ごし方が大きく変わります。私はこれにかなり戸惑いました。大学生活には選択肢がありすぎて、何を優先して過ごすのが正解なのかわかりません。もちろん、正解なんてないということもわかっていますが。これは今でも悩むことですが、だからこそ最初の頃は大きなストレスになります。
 一方で、交換留学の場合は国は変われど”大学”という機関であることには変わりないので、高校と大学ほどの違いはありません。新しい経験をしてみようと自分から何かに挑戦することはもちろん可能ですが、「これまでの生き方を変化させなくては」というほどの大きな違いはありません。

3. 準備期間が短い
 これは一般入試の場合に特に当てはまることだと思います。私はセンターと2次というよくある普通の一般入試ルートですが、運悪く前期入試で第1志望に落ちて、しかし運良く後期入試で第2志望に受かったということもあり、本当に入試から入学までがバタバタでした。前期の合格発表は3/5-10あたり後期の合格発表は3/20-22付近です。そして早ければ入学式は4/1ということもあります。推薦やAO入試の人は「この大学に行きたい」という強い意思を持っていたり、入試時期も早く年を越す前には入学が決まっていたりすることもあり、行きたい大学について、その大学の環境について情報収集を済ませて準備万端かもしれません。でも、もちろん推薦やAOの人を含め、受験である限りは理想通りの結果にならないことも多く、突然受験する大学を変えたり、併願していた大学に行くことになったりします。そして何より、受験期間は受験勉強で精一杯で、大学入学後の生活に目を向けることはできません。
 私は後期の合格発表までは、関西に行くのか(合格の場合)、東京に行くのか(不合格で併願校に行く場合)、実家に残るのか(不合格で浪人する場合)、わからない状況でした。そして結果が出たらまずは身の回りの準備(引っ越しや入学書類の手続き、必要な物の購入などなど)を済ませることに必死で、心の準備をしている暇はありません。
 それに比べて留学の場合は、留学開始の1年前に応募する必要がある分、応募までが忙しいところはありますが、だいたい半年前〜3ヶ月前くらいには留学先が決定することが多いです。決定してから身の回りの準備をする必要はもちろんありますが、取れる期間が長く、また多くの場合は留学を始める前は大学の長期休みなので、時間を取りやすいこともあります。

まとめ・終わりに
 以上、私が終わりかけの留学生活を振り返ってみて、「あれ、あんまり辛くなかった」と感じたことから、大学入学後の辛さを振り返ってみた文章です。今思い返しても、大学入学後は軽くうつ病状態だったのかな、と疑うほど、私にとって苦しい時期でした。でも、「たかが進学して1人暮らしを始めたくらいで苦しんでるなんて情けない」という感情がどこかにあり、それが余計に自分を苦しめていた気がします。
 だからこそ、「大学入学後が辛くなる根拠はこんなにあるんだよ」「留学と同じくらい、それ以上に変化の大きい生活を経験してるんだよ」ということを発信することで、同じように悩んでいる新入生の小さくても励みになればいいと思いました。”たかが”進学じゃない、”たかが”1人暮らしじゃない。それは本当に大きな変化です。だから、大変なこともたくさんあるし、気づかないうちにストレスが溜まっていてもおかしくない。自分の感情を無視せずに、意識的にいたわってあげてください。

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