第4章 スキマ時間を活用する勉強法−机に向かう時間を減らす(2)社会科学では新聞講読も大切な勉強法
社会科学は社会を研究対象とする科学ですから、社会情勢を深く理解することが社会科学の学習の基本となります。
経済や経営も社会活動の一つですが、とりわけ、経営学を学ぶ場合は、「日本経済新聞」(日経)の購読をオススメします。
日経は他の一般紙よりも、経済や企業の記事が豊富で、日経の記事から新たな研究の着想が得られることも少なくありません。
経済や企業に関する最新の報道記事はもちろん、経済学や経営学に関するシリーズ連載のコーナーが常設されているのも、日経の大きな特徴です。
それが、月曜日から金曜日に毎日掲載される「経済教室面」です。
本面は3つのカテゴリーで構成されます。1つ目は「経済教室」で、第一線の経済・経営学者のほか、政治学や法学、社会学などの社会科学分野の研究者、エコノミスト、政治家などが経済や経営、政治などについての論説が掲載されます。文字数は3,000字程度で、比較的ボリュームのある論説となっています。第一線の論客がホットなトピックを掘り下げて解説していますので、経済・経営、政治などを深く考えることができます。
毎日熟読すれば、1年間で75万字もの論説を読むこととなり、漫然と日常を送る人に決定的な差をつけるができます。平均的なビジネス書が1冊12万字程度と言われていますので、年に6冊以上のビジネス書を読むのと同じくらいの知識を得られる計算です。論説の内容により変動はありますが、1回あたり8分程度で読了できます。
2つ目は「やさしい経済学」です。こちらも主に第一線の経済・経営学者が執筆しますが、10回程度の連載ものです。したがって、1回当たりの文字数1,000字程度と少なめです。こちらは年25万字の情報量ですので、計算上、年に2冊以上のビジネス書を読むのと同じくらいの知識を得られることになります。1回あたりの読了時間は約3分です。
3つめの「私見卓見」は、2016年5月9日から始まったコーナーです。こちらは一部日経からの依頼による寄稿がある以外は、一般読者からの投稿がメインです。投稿者は大学教授や弁護士などの職業的専門家、企業経営者、政治家、各種専門家、活動家のほか、主婦や大学生、一般のサラリーマンの論説が載ることもあります。文字数は1,000字程度です。1回あたりの読了時間は約3分です。
一般読者による投稿者とタイトル、掲載日を以下、ご紹介します。
中園直子(主婦(スイス在住))「レジ係は座って接客しよう」2017年5月3日
田中裕二(東京大学学生)「北欧の豊かな放課後に学ぼう 」2020年1月28日
実は私もこの「私見卓見」に投稿し、掲載されたことがあります。タイトルは「鉄道の持続可能性を高める方法」で、2020年9月28日に掲載されました。この論説のポイントは下記の通りです。
「経済教室」の3つのコラムを毎日欠かさず読むだけで、年10冊分のビジネス書を読むのと同じ分量の情報を得られることになります。毎日15分程度の時間を読むのに割くだけです。「塵も積もれば山となる」わけで、1年間で漫然と過ごすだけの人とは大きな違いが生まれます。
「経済教室」と「やさしい経済学」は研究者が執筆することが多いため、経済・経営の学問体系に沿った学習につながります。
しかし、日経は「経済教室」だけではもちろんありません。1面トップ記事をじっくりと読み、その後パラパラとページをめくってタイトルだけを目で追って、気になった記事を読む、というスタイルで日経に慣れていくのもよいでしょう。社説とコラム「春秋」、著名人の自叙伝「私の履歴書」もオススメです。
あとは「きょうのことば」も欠かさず読みたいものです。こちらは新聞休刊日以外毎日掲載されます。主要な記事の中にあるキーワードを解説するコーナーで、これを読むだけでも相当な勉強になります。1回当たり350字程度で、年12万字程度となります。分量としては、ちょうどビジネス書1冊分に相当します。
その他、皆さん自身の中で「キーワード」を決めて、新聞を読むことも効果的です。たとえば、"ESG"をキーワードに決めて、ESGに関する記事は特に注意深く読むという具合です。
日経には、パソコンやスマートフォン、タブレットで閲覧できる「日経電子版」があります。日経の冊子版の購読料+1,000円で電子版を利用できます。
日経本体と電子版を合わせて、約260万人が利用していますが、そのうち電子版は約80万人が登録しています。混雑した電車内で立ったまま、スマートフォンで日経を愛読しているビジネスパーソンをよく見かけます。
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