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《小説》おじいちゃんありがとう【おばあちゃんへの手紙外伝】

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朗読手書き小説としてYouTubeでもお聴きいただけます♪ 寝る前に流し聞きなどいかがでしょうzZ 【あおいろ万華鏡ch】にてお待ちしております🩵 https://youtu…
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2022年7月の記事一覧

おばあちゃんへの手紙 外伝5

おばあちゃんへの手紙 外伝5

おじいちゃんありがとう

南蔵院編 2

「なくなった?願いが?」

「そう、願いを手放すことができたんだ」

「どうして願いを手放すと縄をほどくの?」

「勇くんはこのお地蔵様が
かわいそうに見えたんだろう。」

「うん、とってもね。」

「どうしてかわいそうに見えたんだい?」

「痛そうで、苦しそうで、
縄に縛られて身動きが取れないって
悲鳴を上げているように見えたんだ。

まさにみんなのお願

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おばあちゃんへの手紙 外伝6

おばあちゃんへの手紙 外伝6

おじいちゃんありがとう南蔵院編3

おじいちゃんは予想と裏腹に
とても明るくさらっと答えてくれた。

「おばあちゃんだよ。」

「おばあちゃん?」

「うん、おばあちゃんにはまた会いたいなって…。」

「あぁ。」

僕の身体には電流のようなものが走った。

実は先月、
おばあちゃんの三回忌だった。

おじいちゃんは
二年前におばあちゃんを亡くしている。

おじいちゃんが
おばあちゃんをとっても大切

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おばあちゃんへの手紙 外伝7

おばあちゃんへの手紙 外伝7

おじいちゃんありがとう南蔵院編4

振り返って見下ろせば、

青々とした芝生が太陽の光を受けて綺麗だった。

生き生きとしていた。

その向こうには
白い砂利が波模様に敷き詰められている。

良く整えられていて美しい。

五段の石階段を降りて
左手に行くと藤棚があり、

その下にベンチが二つ。

そのうち一つにおじいちゃんと二人で腰掛けた。

「ふぅー」

と、おじいちゃんは大きく息を吐きながら

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おばあちゃんへの手紙 外伝8

おばあちゃんへの手紙 外伝8

おじいちゃんありがとう
雪編1

「おっ、これは積もりそうだな」

縁側から外を眺めたおじいちゃんが、
白い息を吐きながらそう呟いた。

真っ暗な夜空から白いぼた雪が、
フワフワと音もなく舞い降りてきている。

地面に次々と着地しながら、
家の前の庭をうっすらと、
白く染め始めていた。

部屋の窓からもれた明かりで
照らされたところだけ、キラキラしている。

「明日の散歩は長靴を用意しておこう。」

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おばあちゃんへの手紙 外伝9

おばあちゃんへの手紙 外伝9

おじいちゃんありがとう雪編2
「勇一、おはよう。」

その声は降り積もった雪が音を吸収するせいか、
一切の雑味がなく、ストレートに
最短距離で僕の耳に飛び込んできた。

まるで、
すぐ隣で耳元に話しかけられたみたいに。

でも、おじいちゃんはすでに
庭で長靴を履いて立っていた。

「おじいちゃん、おはよう。今行くね。」

僕は急いで着替えて長靴を履いた。

滑って転ばないよう、
上から雪を押さえつ

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