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アーティストのものづくりーEMARFで拡張する表現力ー


知人から「EMARFを使ってみたい人がいる」という紹介を受け、油画を中心に製作されているアーティストのnodomさんをサポートする機会を頂いた。EMARFによって水を得た魚のように製作者自身の表現性が変わっていく制作の様子を順を追ってご紹介する。

⽊製ものづくりのデザインからパーツに加⼯するまでの⼯程をオンラインで完結できるクラウドサービス「EMARF」を使用する。

nodomさんとの出会い

知人の紹介でつながったnodomさん。大学で油画を学び、現在はフリーで様々な作品を制作していく中で、木材を自由な形に切り出せるサービスがあると知り、いざ使ってみようとしたものの、始め方がわからず自分に相談してくれたそう。

nodomさんプロフィール:
1984年 山梨生まれ
2020年 東京藝術大学油画科卒業
2020年 フリーランスとして活動始める
絵画、デジタルアート、立体表現で主に空き缶等の廃材を使って“再生制作”
をされている。
▼nodomさんの過去作品。

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まずはラフスケッチから

まずはnodomさんが作りたいもののラフスケッチを見せてもらう。5cm四方のキャンバスで構成した作品の個展を開く予定があり、その展示方法として、ガチャポン玉に展示作品を入れ、来場者がガチャポンを回すことで観賞・購入してもらえる装置を作りたいとのことだった。その機構を作るうえで、Adobe Ilustoratorのデータを元に木材を柔軟に加工できるEMARFを知ったとのこと。


とはいえラフスケッチを見せてもらった時点で、入稿も間近のところまでnodomさんは来ていた。ガチャポンの構造はネットで見つけた小学生の自由研究を参考にしたらしく、機構まですでに出来上がっていた。

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買い物リスト

▲ホームセンターで入手できる丸棒と角材や輪ゴムなど既製品を組み合わせて、効率的に製作できるようにデザインされていた。

そして入稿へ

EMARFの基本的な使い方やできること・できないことの話を交えながらデータを詰めていくこと数日後、「入稿できました!」と一報が写真と共に送られてきた。


EMARFで木材を自由に加工できることを知り、「あれもやりたい」「これもやりたい」という思いが生まれ、一気に進んだそう。これまでは自分で加工できる範囲の中だけで考えていた造形が、EMARFによって一気に拡張された瞬間だった。

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▲実際の入稿画面。「手動で並べる」機能を使えば1枚に好きなように部材をレイアウトできる。

いざ工房で出力!

「実際にShopBotで切り出しているところを見てみたい!」との要望を頂き、VUILDの工房がある川崎で入稿したデータを一緒に切削することに。

nodomさんが描いた線が、EMARFを使うことで人の手を介さず にShopBotデータに書き換えられ、実際に合板からパーツが切り出される様子は圧巻。何度も見ている自分でも、人が描いた線が切り出される瞬間は新鮮に感じる。

※通常ShopBotで木材を加工する場合、2Dの図面をもとに専用のソフトで深さを指示して、手作業で3D化しなければならない。

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▲nodomさん自身も興味津々で、最初から最後まで切削の様子を見ていた。「板をカットするということを拡張させて2Dから3Dになっていく過程がとても魅力的でした」とおっしゃっていた。

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▲「郵送せずに持ち帰ります」ということで、その場で梱包して、電車でお持ち帰りに。颯爽と去っていった。

個展へ

後日、千駄木にあるカフェで展示が始まったとのことで、遊びに行ってきた。カフェに入ると壁のド真ん中にガチャポンが。固定治具も自作し、nodomさん自ら組み立てたとのこと。

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▲カフェでは途切れることなく大人も子供もこぞって回す姿が。大人は新しいアートの購入の仕方に対するワクワク感を、子供たちは見慣れたガチャポンに対する純粋なワクワク感をもってカフェにいる間ずっと回し続けようとする子もいた。


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▲5cm4方の画をガチャポン玉の中に入れていてコインを入れると回転して飛び出してくる。

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▲自分が回したガチャポンの中には、意味深なタイトルと共に立体的で色彩鮮やかな油絵が。展示が始まってから1週間後ぐらいに訪れたが、nodomさん曰く、出てくるタイトルは不思議と回す人に関連のあるワードが出てくるそう。

EMARFによって軽減された作業量

後日、nodomさんに初めてEMARFを利用した感想を聞いたところ、「これまでは加工の幅を一人でできる範囲内で抑えていたが、EMARFにより解放されることで巨人になった感覚だった」と話してくれた。

EMARFは、手作業では加工が難しい曲線も精度高く加工できるため、自由に線が描けるようになったことと、加工されたパーツをプラモデルのように組み立てられることで、製作と組み立ての作業量が一気に軽減されたことが今回感じたEMARFの魅力だったという。


また、PCの画面上で2Dで見ていたデータが実際に切り出されて3Dになっていく過程がとても魅力的で、「ギミック系をもっと作ってみたい」「アトラクションも作ってみたい」と今後の展望も語ってくれた。


nodomさんにとって今回の制作は、これまでメインの制作に集中し時間を割けなかった、展示方法などの表現を考え直す機会になったそう。過去作品を振り返ると、「EMARFを使えばより複雑な構造で大きなものを作れたのではないか」「もっと際限なく作ることもできたのではないか」という考えが巡ったという。

EMARFは絵の具の様な感覚だった

また、nodomさんはEMARFを使った感想をこう表現してくれた。
「まるで絵の具の様な感覚だった。」

EMARFは、工芸、油絵、彫刻、音楽と並ぶような文化の一部になれるツールのように感じたという。

nodomさんの初めてながらに、「まるで画を描くような感覚でEMARFを使いこせたと」いう言葉が印象的だった。
今後は、多くの人にとって、もっとアートがより身近になるような活動をしたいとのこと。


nodomさんが今後どのようにEMARFを活用していくのか、楽しみだ。














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