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神話部発足の原動力・佐野史郎さん①〜小泉八雲

どうも、note神話部・発起人の矢口れんとです。今日は神話部発足の原動力の「1つ」についてお話したいと思います。2回に分けてお届けします。
この記事は神話の魅力の一端について伝えるもので、note神話部をご存じない方にも楽しんでもらえるように心がけました。

ある日のこと、出張から帰ってきた妻がこう言ったのです。
「会場に……佐野史郎がいた!!」
あまりに意外な人物の名を出されて驚きました。妻の仕事は芸能関係でもなければ、メディア関連でもありません。

「佐野史郎って……冬彦さん?木馬に乗った」
「うん」
「佐粧妙子の?(僕が好きだったドラマ)」
「それは知らんけど」
「まさかぁ、他人の空似でしょ?」
「(ほれ写真)」
「た、確かに、佐野史郎だ」

ホテル宴会場の白い円卓でフツウにご飯食べてました。佐野史郎さん、隠し撮りしてごめんなさい。妻に代わって謝ります。
ここで、若い読者のために「木馬に乗った冬彦さん(ドラマ中の役名)」の画像を置いておきます。ミドサー以上は無条件で知っているものと判断しますw

うわ、、、と思った人もいるかもしれませんが、すごい俳優さんなんですよ。不気味さを演じさせたら右に出るものはいない、狂気における静から動までの振り幅と勾配は、他のどの俳優にも替えがたい魅力のひとつだと思います。(最近こういう俳優さんいないなぁ)

さて妻の出張先は島根県でした。業界の文化交流の一環だったのでしょうか、学術大会のゲストとして佐野史郎さんが呼ばれていたそうです。佐野さんは島根県出身です。そこで彼が披露したのは「小泉八雲の朗読」だったそうです。

小泉八雲については後程述べるとして、この10数年、佐野さんは朗読パフォーマンスをライフワークとされ「神話の世界」の魅力を伝える仕事をされております。多くの場合、同郷のギタリスト・山本恭司さんとのコラボレーションだそうです。では、「木馬に乗った冬彦さん」のイメージを一挙に覆す、佐野さん・山本さんの圧巻のパフォーマンスをご覧ください。

カ、カッコいい(ためいき)
エレキギターに始まる神話を称える音楽。次第にディストーションがかかり、ドラムのシンバルがリズムを刻み始める。そしてエレクトリックサウンド……自分がどの時代に生きているのかを忘れそうになります。
やがて遠くから電子化された笙が響いてきて、厳かに、佐野史郎さんの朗読が始まります。情緒豊かで、力強い語り。単なる「朗読者」ではない、まさに「語部」と呼ぶにふさわしい。

彼らはこのようなパフォーマンスで全国行脚されています。また佐野さんは2019年に「古代歴史文化賞」記念イベントで、朗読に加えてインタビューにも答えています。

小泉八雲『知られざる日本の面影』の一部が朗読されています。文字に起こしてみました。

神道を単なる祖先崇拝だとする者もいれば、それに自然崇拝が結びついたものだとする者もいる。神道とは、およそ宗教とは定義できないとか、無知な宣教師たちには、最悪の邪教だとか言われたりもした。神道を解明するのが難しいのは、つまるところ、西洋における東洋研究者が、その拠り所を文献にのみ頼るからである。(中略)神道の真髄は、書物の中にあるのでもなければ、儀式や戒律の中にあるのでもない。むしろ国民の心の中に生きているのであり、未来永劫滅びることも、古びることもない、最高の信仰心の表れなのである。(中略)自然や人生を楽しく謳歌するという点では、日本人の魂は不思議と古代ギリシャ人の精神によく似ていると思う。

ここに書かれているのは、多様な信仰体系、文献学・形骸化した儀礼や戒律の批判、自然および人生の肯定、そして地域を超えた精神の普遍性です。

僕はこれらを「人々がそれぞれの人生を肯定し謳歌するための神話」というふうに捉えます。神話の持つ奥行きのある豊穣な世界に心惹かれたのです。

そして、この世界観は古代人だけに適用されるようなものではありません。佐野さんの朗読パフォーマンスのように芸術的に昇華され、現代人にもあらたな驚きと感動を提供してくれます。それはもはや信仰に関係なく、魂の奥底に根付いた感動の喚起なのでしょう。

「僕もこんな創作活動をしたい!」と強く思いました。

こういった背景があるため、note神話部では神話の地域・時代を問いません。そして創作ジャンルも文章・音楽・絵画・写真、なんでもアリとしています。

さて、最後に何度も名前の上がっている小泉八雲について簡単に紹介します。

小泉八雲は、ラフカディオ・ハーン(1850-1904年)の日本名です。ギリシャ生まれ、イギリス育ちの新聞記者ですが1890年に取材のために来日、その後日本に帰化し小泉八雲の名となりました。もっとも有名な著作に『kwaidan』があります。そうです「怪談」です。八雲の妻・節子が語った伝説や幽霊話を、彼が独自の解釈を加えて再話したものになります。「耳なし芳一」「のっぺらぼう」「雪女」などの話が含まれます。

『知られざる日本の面影』は島根県松江市滞在時の記録で、ジャーナリスト時代に培った取材力を活用し、日本の習俗や文化について述べたものです。日本に恋をした外国人として知られ、西洋的価値観が日本で広まることに不満や憤りを抱いていたそうです。

次回は、佐野史郎さんとクトゥルフ神話についての対談記事をもとに、神話の魅力をお伝えしようと思います。ではまた。

note神話部に興味を持って頂いた方はぜひとも下の記事をご照覧ください。

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