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少年は見た |•ω•,,) 【舞師と楽師/episode 5.5】

【舞師と楽師/episode】は連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』の挿話です。
今回は、5話「砂嵐を越えていけ」と6話「プレイ・イン・オアシス」のあいだのザインのお話。

【旅の仲間たち】
ザイン……旅の少年。ヴィドとアッシュが好き
ハーヴィド(ヴィド)……強面で寡黙な楽師
アシュディン(アッシュ)……華やかな青年舞師


 このあいだからヴィドがへんだ。ぼく知ってるよ、こういうの〈きょどうふしん〉って言うんだよね。
 だってアッシュのいないときに、テントの中でごそごそと何かをさがしてるんだもん。きのうもアッシュの〈にもつ〉をあさっていた。
 もしかしたらヴィドはわるい人なのかもしれない。でも、そうだったらどうしよう……

 ぼくがつきとめなくっちゃ ٩( 'ω' )و

 少年ザインはテントの隙間からじっと目を凝らした  |•ω•,,)
 ハーヴィドがアシュディンの荷物から、何やら瓶のようなものを取り出しているではないか!
 ザインは息を潜めた。コルクの蓋を開けてくんくん匂いを嗅いでいるハーヴィド。その顔には普段見せたこともない恍惚の色が浮かんでいた。
「──っ!?」
 ハーヴィドはその視線に気付いて振り返った。ザインが覗いているではないか、やばい……
 彼は素知らぬ顔で瓶を元に戻した。ゆっくりと少年に近寄ると、目を合わせずに低い声で言った。「ザイン、今見たこと、誰にも言うなよ」
 そして、そそくさと去って行った。

 こわかった。やっぱりヴィドはわるい人だったんだ。ぼくとてもかなしい :;(∩´﹏`∩);:
 ……でもヴィドはいったい何をしてたんだろう? やっぱりちゃんとつきとめなくっちゃ。じゃないとアッシュがかわいそうだ。

 ザインはハーヴィドが漁っていた辺りをくまなく探した。出てきたのはアシュディンが髪につけている香油の瓶だ。中ではとろとろとした琥珀色の液体が揺らめいていた。

 これなんだろう? はちみつ? 甘いのかな?

 ザインは首を傾げた。好奇心に負けて瓶の蓋を開けると、中身をそ〜っと手に取った。

 ペロリ

 うえぇっ、にがいっ! _(꒪ཀ꒪」∠)_ ₎₎
 ぜんっぜんあまくないし、おいしくないし、へんなにおいがするっ!
 こんな〈へんなもの〉が好きだなんて、アッシュもヴィドもやっぱり〈おとな〉なんだな。ぼくも〈おとな〉になったらこれがおいしくかんじるのかな?

 はやく〈おとな〉になりたいな  (๑•́ ₃ •̀๑)


──fine.──



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