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葬舞師と星の声を聴く楽師 【読書ガイド】

葬舞師そうまいしと星の声を聴く楽師がくし』マガジン

【前話の振り返り】

ラスト3話はぜひ本文でお楽しみください!


【登場人物】

アシュディン
宗教舞踊ダアルを生業とする帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマールの正統継承者の青年。第12代正統を務めるはずだったが、不当に団を追放されて旅をしている。痩身の美形は「伝説の踊り手の血統を証明するもの」と噂されるほど。心根は真っ直ぐだが、向こう見ずで喧嘩っ早い一面もあり。

ハーヴィド
移動民族ロマの流浪の楽師の男。11本の弦を指で掻き鳴らす木製楽器ヴィシラの弾き手。芸道にストイックで、長旅のため頑強な体つきをしている。樹をはじめとして自然をこよなく愛する男。168年前に帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマールを追放されたエル・ハーヴィドの末裔。

ラファーニ・ドルベスク
帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマール第12代正統にして初めての女正統。アシュディンの姉。弟を団から追放した元凶だが、どうも裏の思惑がありそうで……

ビャロン(通称)
西の国、東方侵攻部隊司令。名を呼ばれるのを好まないという無茶苦茶な理論で、ファーマール帝国が信奉するスファーディ教の一精霊の名を語った。

ディ・シュアン
アシュディンの祖先。173年前、エル・ハーヴィドと同時に帝国伝統舞楽団ダアル・ファーマール第5代正統舞占師を継承した天才舞師。団の中ではダアルの礎を築いた男と謳われている。エル・ハーヴィドの日記では〈星天陣の舞〉で発狂したと伝えられる。

エル・ハーヴィド
173年前、帝国伝統舞楽団ダアル・ファーマール第5代正統楽占師を継承した天才楽師。〈星天陣の舞〉という儀式で呪術を用いたという冤罪をかけられ、団を追放されて旅に出た。ハーヴィドが言うには、ヴィシラの開祖であり移動民族ロマの始祖でもあるとのこと。

ワーグラム
帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマール正統補佐としてラファーニを支えるひとり。元はアシュディンの教育係にして恋人関係にあった。男舞師の一番手。

トルシカ
エル・ハーヴィドが旅の途中で孤児院から引き取った養子。後に養父の手解きでヴィシラの才能を開化させ、2代目ハーヴィドとして世に出て行くことになる。

ジールカイン
帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマールの正統に次ぐ第二権力、老師団の長。老獪の雰囲気が漂っているが実は心優しい。歴代の老師長だけが預かってきたディ・シュアンの遺言の見届け人となった。

ナドゥア
帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマール老師団の一員。人一倍厳しく団員を指導してきた人で、アシュディンの帰還に最後まで反対した。

ムドファーマル
ファーマール帝国の第15代皇帝。48歳の粋な男。豪快で気さくな性格で民から慕われている。

ウォールズとレグルス
ファーマール帝国の衛兵隊の一員。アシュディンの幼馴染にして良き親友。

ザイン
ファーマール/ラウダナ国境付近の村落で育った少年。母を亡くしたことで、ラウダナ国に住む叔父の家に預けられた。アシュディンとハーヴィドを兄のように慕っている。

ダルワナール・エルジヤド
エルジヤド家の長女(第2子)ラウダナ国市民街北東の酒場〈魅惑を放つケレシュメ〉のオーナーにして人気No.1の踊り娘。強気な性格と抜群のスタイルを武器にして奔放に生きている。

カースィム・エルジヤド
エルジヤド家の次男(第3子) ラウダナ国市民街西の酒場〈葡萄の冠グレイプ・クラウン〉に入り浸る厭世家で極度のアルコール中毒。マホガニー材木の卸商社の社長。

ユスリー・エルジヤド
エルジヤド家の長男(第1子)にして当主。ラウダナ国都の都議で複数の会社経営を兼ねている。品格に厳しく、放埒な妹と弟に対して屍鬼ゾンビを見るような目を向ける。


【はじめに】

本作は中世西アジア風の架空世界を舞台にした小説です。性愛、同性愛の描写がありますが、そういった作品に興味のない方にも楽しんで頂けるよう配慮しつつ書きますので、お読みいただけたら嬉しいです。

本記事には前話までの振り返り・あらすじ・登場人物紹介・用語解説など、作品をより楽しむための情報を載せていきます。物語の進行に伴って加筆する形で記事を更新していきますので、ときどき見に来ていただけると幸いです。(毎話リンクを貼ります)


【全体のあらすじ】

舞台はファーマールという名の帝国、ラウダナという共和制国家とその周辺地域。帝国はスファーディ教という一神教を国教に指定しており、宮殿には儀礼の際に舞を披露するお抱えの伝統舞踏集団ダアル・ファーマールがいた。

主人公はダアル・ファーマールの正統な血筋を継ぐ青年アシュディン。しかし団内の覇権争いのために放り出されてしまった。彼は宮殿に残してきた姉ラファーニのことを気にしつつも、外の世界で新しい生き方を模索していた。立ち寄った村落にて、身寄りをなくした少年のために葬送の舞を踊ると、そこに偶然居合わせた流浪の楽師ハーヴィドと縁が繋がる。

伝統的な舞師と楽師の過去の因縁、或る宮廷舞師の思惑と暗躍、国家間の闘争。様々な運命に翻弄されながら、アシュディンとハーヴィドは未来を切り拓いていく。


【用語解説】*五十音順

ヴィシラ
11本の弦を備えた木製楽器。胡座をかいた太ももの上に胴を置き、指で掻き鳴らして演奏する。古楽器であり奏者は希少となっている。器体の一部にはマホガニーが使用されている。

スファーディ教
スファーダ神を唯一神として崇める一神教。偶像崇拝を禁止する教義が様々な無形文化を生んだ。ファーマール帝国の国教に指定されている。生死に重きを置いた穏健な宗教。

星天陣の舞
帝国伝統舞楽団ダアル・ファーマールで30年に一度だけ執り行われていた一大祭祀で国を動かすほどの大きな占術。しかし帝国暦97年(168年前)にディ・シュアンとエル・ハーヴィドが行ったのを最後に伝統は途絶えた。この年の失敗により、ディ・シュアンは発狂し昏睡に陥り、エル・ハーヴィドは舞楽団を追放された。

UpDate !!  ダアル
スファーダ神を祀るための伝統舞踊。宗教詩になぞらえた表現、形而上学的な思想、自然の礼讃など様々な要素を含んでいる。

《これまで登場したダアル》
・祖霊供養の葬舞・最高位(1話,31話)
・脚の修練(3話,14話)
・三日月の舞(7話)
・大地讃頌(11話)
・凪に木立(16話)
・不帰の輪を統べる舞(24,25話)
・ファーマール皇族のための葬舞(43話)

舞楽ダアルの占断、失われた舞楽ダアル
・〈不帰の輪を統べる舞〉でアシュディンは初めて恐ろしい光景を見た(24,25話)
・〈風向きを予見する舞楽〉でアシュディンとハーヴィドの占断は一致せず、結果は大外し(29話)
・祖霊供養の葬舞(31話)ではアシュディンとハーヴィドの想いが一致し、はじめて降雨の占断が〈一致〉
・〈星天陣の舞〉アシュディンとハーヴィドで168年ぶりに再演。10日後に災禍が訪れるという占断が〈一致〉する

帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマール
ファーマール帝国に仕えるダアルの舞踊集団。正統な血統を頂点に据えたヒエラルキーがある、はずだったが……

UpDate!!  西の国
存在を囁かれている程度の謎の国家。軍事技術の発達した一方で、あらゆる信仰を捨て去った国と目されている。
〈西の国の軍事技術〉
・青銅砲(9話)
・着火不要の手銃(22話)
・大砲群(42話)
・長銃(42話)

ファーマール帝国
大陸の半分を制する大国。北の山岳地帯と南の砂漠地帯に挟まれた草原地帯を主領土とする。絶対的な帝政を敷き、歴代皇帝が信奉してきたスファーディ教以外の信仰を認めていない。

マホガニー
木材の一種で、高級家具や楽器に用いられる。湿潤地域でしか生息できない樹木で、ラウダナ国のマホガニーはブランドになっている。ハーヴィド曰く、先住民族の神木だった。

yan()ヤン
ラウダナ国の通貨。1yan≒1yen

ラウダナ国
ファーマール帝国の南東に位置する小国。共和制を敷き、さまざまな文化や宗教が混淆する……というのは表向きで、どうも貴族階層がのさばっているヒエラルキーがありそう。木工と石工の産業が盛んな職人たちの街。

葡萄の冠グレイプ・クラウン
ラウダナ国、西の歓楽街にある酒場。世界各地の輸入品を提供しており、店舗で葡萄酒が飲めるのはここのみ。

魅惑を放つケレシュメ
ラウダナ国、北東の歓楽街にある大衆酒場。広いフロアには20卓以上、大きなステージで夜毎ダンスや演奏が繰り広げられている。

《マホガニー卸商社》
カースィムが経営する会社。敷地面積はかなり広く、いくつもの棟に分けて木材を保管している。


【過去話の振り返り】

1章 越境

1話「舞師の青年」
美しい容姿を持つ青年アシュディンは旅の途中で或る村落を訪れた。彼は伝統舞踊ダアルの舞師で、母を亡くした少年のために葬送の舞を披露する。少年は心を開き、村人は彼の舞に深い感銘を受ける。しかし偶然訪れていた楽師の男がひとり、アシュディンのダアルをこき下ろした。

2話「流浪の楽師」
アシュディンは村落に響く謎の音を辿って、寝泊まりする予定の宿舎へと向かった。そこではハーヴィドと名乗る楽師が古楽器を奏でており、アシュディンはその不思議な音色に心惹かれる。楽器に触れようとするもハーヴィドに拒まれ、また夕刻に舞ったダアルについても修練不足を厳しく指摘された。

3話「難航する交渉」
舞師アシュディンはダアル(舞)の修練に明け暮れ、母を亡くした少年ザインはその真似事を始めた。ある日、待ち望んでいた行商人らが村落を訪れたが、アシュディンは目当ての駱駝を買えず、楽師ハーヴィドもまた必要としていた木材を買えなかった。そんな中、村役の男がふたりの前に現れて「相談したいこと」があると言った。

4話「優しさよりも刺激を」
村役の男の相談とは、母を亡くした少年ザインをラウダナ国の都へと連れていってほしいというものだった。ザインに懐かれていたアシュディンと、旅に必要な駱駝を持つハーヴィドは、ふたりでその依頼を受けることになる。めいめいが違う目的で、目的地を同じにする3人の旅が始まった。

5話「砂嵐を越えて行け」
ラウダナ国へ向けて広大な土砂漠を抜けていく三人。歩きながら交わす会話の中で、アシュディンは帝国伝統舞踏団の一員だったことを、楽師ハーヴィドは移動民族の出身であることを明かした。何度か砂嵐に襲われ、その度にハーヴィドが身を挺して一行を守る。疲労に襲われながらも、三日月の夜までにオアシスへの到着を目指す。

6話「プレイ・イン・オアシス」
オアシスにたどり着いた一行、アシュディンとザインは湖に飛び込んで水遊びをして時を過ごした。それは単なる〈あそび〉にとどまらず〈禊〉でもあった。ザインの母を弔うための「三日月の儀」を目前にして、ハーヴィドは葬舞の演奏に参加すると言い出した。アシュディンの戸惑う心を置き去りにして、宵が訪れ、儀式の舞台が用意された。

7話「三日月に架け橋」
ザインの母を弔うための「三日月の儀」が始まった。母の信仰していたスファーディ教の詩文に乗せて、舞師アシュディンと楽師ハーヴィドの息のあった演技が披露される。しかし過酷な舞に、終盤でアシュディンの脚に限界が来てしまう。倒れそうになるのを助けたのはハーヴィドの弾き奏でる音色だった。疑問を残しながら、儀式は無事に幕を閉じた。

8話「黄金樹を抱く男」
オアシスを発った3人はハーヴィドの発案により北のステップ地帯を進んでいた。その先にあるマホガニー樹林が目的地だ。マホガニーは先住民の神木であり、ハーヴィドの楽器・ヴィシラに用いられている木材だった。しかし3人を待ち受けていたのは、乱伐されて大地ごと枯れ果てた樹林の姿だった。哀しみに暮れるハーヴィドをザインが慰めたとき、突然の轟音が森を襲った。

9話「西の無神論者たち」
轟音の正体は大砲の砲撃だった。撃ったのは西の国の砲隊たち。ハーヴィドは森に仇をなす彼らを咎めようと勇み出た。一方、アシュディンはザインを逃すために森を駆け抜けた。スコールに襲われながらも、なんとかテントまで辿り着くが、ハーヴィドはなかなか帰ってこない。ようやく姿を現したハーヴィドのマントは血塗れで、彼はアシュディンの目前で喀血して倒れてしまう。

10話「生きて、生きた木と」
生死の境を彷徨うハーヴィドは最期の頼みと言ってアシュディンを抱きしめた。そこには生きたマホガニー樹林に出逢えなかった深い哀しみが秘められていた。必死で励ますアシュディンも遂には眠りに落ちてしまう。翌朝、少年ザインが目にしたのは、穏やかな呼吸で眠るハーヴィドと寄り添って寝るアシュディンの姿だった。

11話「もう舞ってるんだ!」
ハーヴィドの怪我は砲兵たちの暴行によるものであった。生命の危機からなんとか持ち直したハーヴィドに、アシュディンは自身の旅の目的と過去を打ち明ける。恋人や姉に裏切られたことが原因でダアルをやめるつもりだった、と。そんなアシュディンに対し、ハーヴィドは次の道が見つかるまで付き合うと言った。三人は気持ちを新たにして、いよいよラウダナ国都へと向かう。

2章 蜜月

12話「ヒエラルキーを足蹴に」
新章突入! ラウダナ国都に到着した一行はハーヴィドの怪我を診てもらうためにまず医院へと向かう。しかし彼らを待ち受けていたのは圧倒的な階級社会で、貴族でない限りまともな診療を受けられない実情を知る。そこに突如、貴族の娘ダルワナールが現れる。彼女は特にハーヴィドを気に入った様子で、貴族街に立ち入るための〈特別手形〉を発行してくれる。

13話「自虐と自堕落」
ザインを叔父の元に送り届けたアシュディンとハーヴィドは、市民街の宿に滞在することになった。アシュディンは、ダルワナールに挑発されたハーヴィドを思い返して、ふと情欲に駆られた。そしてダンサーの仕事を見つけるために西の歓楽街へと足を運ぶ。必死に自身を売り込むも全て門前払い。帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマールにいた時との扱いの差に、ひとり煩悶するのだった。

14話「隣には快楽主義者」
アシュディンはダンスの職を探して「葡萄の冠」という酒場を訪れ、そこで酔っ払った快楽主義者に絡まれる。男は仕事を紹介してくれると言うが、それ相応の代償が必要と。そんな中、満月の日の夕方となって、ハーヴィドが北東の酒場へ行こうと誘ってくる。道で助けてくれた貴族の娘に礼をしたいとのことだったが、それをきっかけにアシュディンとハーヴィドは喧嘩をしてしまう。

15話「玩具への果たし状」
ラウダナ国市民街北東の酒場〈魅惑を放つケレシュメ〉は熱狂の渦に包まれていた。その中心には人気No.1の踊り娘、アシュディンたちを助けてくれた貴族の娘ダルワナールがいた。彼女はハーヴィドのことを気に入り、専属楽師にならないかと勧誘してくる。それを阻止しようと慌てるアシュディンに、女は舞踊対決を仕掛けてきた。

16話「シュールかマニアか」
舞踊対決が始まった。先攻のアシュディンはあくまで伝統舞踊ダアルで勝負。驚異のバランス感覚と音に反応する奇妙な動きで観客を沈黙させる〈凪に木立〉という難しい演目を成功させた。しかし後攻のダルワナールが王道の官能的なダンスを披露して勝利を収める。ハーヴィドは彼女の専属楽師になることが決まり、酒場のオーナーへの挨拶のために二階の一室に向かわされた。

17話「真紅と珊瑚赤」
ダルワナールがハーヴィドを誘惑する現場を目撃してしまったアシュディンは、仕事と居場所を求めて市街を駆け抜ける。〈葡萄の冠グレイプクラウン〉に行き着くと、快楽主義者の男に舞台をもらえないかと頼み込んだ。男はアシュディンを控え室へ連れて行き、珊瑚赤のドレス、アイシャドウ、そして怪しい口紅で彼を女装をさせた。アシュディンはその格好で店の舞台へと向かった。

18話「乱痴気の火付け役」
西の酒場〈葡萄の冠グレイプクラウン〉で女装させられたアシュディンは、これまでにない衝動で野生的なダンスを披露し観客の乱痴気騒ぎを先導した。しかし控え室に戻ると快楽主義者の男が待ち受けており、裸にされ拘束されてしまう。辱めを受けるすんでのところでハーヴィドが駆けつけて事なきを得た。媚薬を盛られたアシュディンは意識朦朧状態で宿の部屋に帰還した。

19話「ふたりだけの部屋」
媚薬を盛られたアシュディンと介抱するハーヴィド。ふたりは惹かれ合って唇を重ね、そのまま体の交わりを持った。アシュディンが薬のせいではなく自分の意思でそうしたことを告げると、ハーヴィドはそれに応えて互いの気持ちが通い合った。しかし深夜になるとハーヴィドはいつも通り外へ出て行った。部屋に取り残されたアシュディンは彼が隠し持っている木箱の存在に気付いた。

20話「恋敵! 野蛮人!」
アシュディンは〈葡萄の冠グレイプクラウン〉に置き忘れた舞踏衣を取りに向かった。そこで快楽主義者の謝罪を受け、再度踊りの仕事を紹介してもらう流れに。連れられて行った場所は貴族街の大豪邸。なんと彼は踊り娘ダルワナールの弟で、マホガニー卸商社の社長カースィム・エルジヤドだった。長兄のユスリーがアシュディンたちに謝罪し、アシュディンはようやく職を得ることになる。

21話「片棒を担ぐくらいなら」
カースィムの会社の倉庫で、ハーヴィドは楽器の修繕に必要なマホガニー材を得た。しかし彼の目に依れば、倉庫にある木材の大半が偽装品とのこと。詐欺を否定するカースィム。しかし材木のチェックを担う検査診断士の男が金を持って逃げていた。再び酒場で酒に溺れるカースィムは、店を出た瞬間に凶賊に誘拐されてしまう。現場を目撃したアシュディンにも刃物が突きつけられて……

22話「笑いながら助けてと」
カースィムを誘拐したのは、マホガニー材の偽装詐欺の首謀者と、社の材木検査診断士の男を含むグループだった。連中はカースィムの身代金として3億yanを要求した。アシュディンが伝令役にされエルジヤド家で作戦会議が行われる。しかし長兄のユスリーは金を払う気も交渉する気もないと突っぱねた。ダルワナールは歪んでしまった一家を憂い、再び兄に助けを求めに部屋へと向かった。

23話「エルジヤド家の家訓」
ユスリーは既にカースィムの救出を裏社会組織マフィアに依頼していた。その上で、妹弟を奮い立たせ、詐欺集団への復讐を誓った。
ハーヴィドの楽器ヴィシラの修繕がついに完了。アシュディンと彼は恋仲のような関係に落ち着いた。しかしヴィシラの音を聞いたアシュディンの体に異変の兆候が現れる。帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマールにはもう帰らないと言うアシュディンだったが……

3章 帰還

24話「初舞台は異変の旗印フラグ
転居先を探すも全く意見が〈一致〉しないアシュディンとハーヴィド。そこにダルワナールが現れて、逝去した父に向けて葬舞を披露してくれと頼んできた。快く引き受けたふたりは、屋外の斎場にて〈不帰の環を統べる舞〉を始める。しかし演技中にアシュディンが全くハーヴィドと視線を合わせない。ハーヴィドは彼が何かこの世ならざるものを〈見て〉いるのではないかと訝る。

25話「天才舞師のアナグラム」
〈不帰の環を統べる舞〉の後より、アシュディンに異常が起こり始めた。虚ろで精彩に欠ける青年を心配して、ハーヴィドはついに自分の秘密を明かすことを決心する。古い日記に拠ると、アシュディンの祖先ディ・シュアンと、ハーヴィドのいた移動民族の始祖エル・ハーヴィドは、帝国伝統舞楽団の対偶だった。そしてその頃の舞楽ダアルは災厄を予知するための占術だった。

26話「塗り替えられた伝統」
ハーヴィドの持つ日記によれば、173年前に正統を継承したエル・ハーヴィドとディ・シュアンは、見事災厄を予言していた。舞楽ダアルの占術の真髄は、超感覚、憑依トランス、舞占師・楽占師双方の占断の〈一致〉に集約されることを知る。しかしアシュディンは占いの存在を頑なに否定した。ハーヴィドは、ディ・シュアンが舞踏団の伝統を塗り替えたのだろうの推測していた。

27話「栄華と追放と愛と」
恋仲でもあったエル・ハーヴィドとディ・シュアンは168年前に起こった〈星天陣の舞の失敗〉をきっかけに引き離されることになる。その時のエル・ハーヴィドは半年後に隕石襲来メテオ・ストライクがあると占断した。しかしディ・シュアンは何も見えなかったと言い、後に発狂して昏睡状態になる。エル・ハーヴィドは呪術使いの汚名を着せられ団を追放された。
そして以前の舞で天変地異を朧げに見たと言うアシュディンは、舞楽ダアルの謎を解明するために帰郷を考え始める。

28話「乾杯の音は夜毎鳴る」
舞楽ダアルの謎と自身が団を追放されたことが気がかりで、目の前の仕事に集中できないアシュディン。ダルワナールが現れて叱咤するも、当人はなかなか煮え切らない。しかしダルワナールが「姉は弟のことを大事に思っているはずだ」と諭したことで、アシュディンはラウダナ国での生活をやめて帰郷することを決心した。旅の弟・ザインとの再会を約束して、アシュディンとハーヴィドは再び旅立った。

29話「クロスロードに笑う」
アシュディンたちが以前訪れたマホガニー樹林の乱伐跡地に来ると、復活の兆しが見えたことに喜んだ。その場でふたりで舞楽ダアルの占断を試してみようという流れになったが、ふたりの占断はまったく〈一致せず〉失敗に終わる。
【エル・ハーヴィドの日記】団追放から4ヶ月後に、初めての旅の仲間ができた。

30話「微睡の言葉はショートする」
オアシスの管理小屋でイチャイチャするふたり。ハーヴィドが寝入ってしまうと、アシュディンは過去の男のことを思い出してしまう。その元恋人は姉と共にアシュディンを裏切ったようだった。
【エル・ハーヴィドの日記】移動民族は段々と大きくなり、団員に子どもが生まれるようになった。エル・ハーヴィドも孤児院からトルシカという男の子を息子として引き取った。

31話「占師でも歴史家でもない」
国境付近の村落に来ると、アシュディンの他にも帝国伝統舞楽団ダアル・ファーマールの団員たちがここを訪れたことを知る。アシュディンとハーヴィドは帝国に戻る前に、不遇の死を遂げたザインの母を弔うための葬舞をする。そしてそこで初めて、ふたりは「雨」を予見してしまう。
【エル・ハーヴィドの日記】トルシカにヴィシラを教え始めたエル・ハーヴィド。しかしその天才ぶりに、ならず者ばかりの団から外に出すことを考え始める。

32話「なんべんでも鐘を鳴らせ」
帝都に入ったふたり。占断は的中して雨が降った。アシュディンは自身の過去を打ち明けた。正統継承順第1位としての覚悟は出来ていたが、継承を目前にして真の正統を決める演舞会が開かれ、姉と恋人の密約に嵌められて敗北したと。
【エル・ハーヴィドの日記】エル・ハーヴィドは、トルシカにハーヴィドの名を託して外に出した。その名を残したのは、いつか子孫に団に戻ってもらいたかったから。

33話「ここは俺たちの庭だ!」
アシュディンが宮廷の敷地内に入ると、衛兵や団員たちから熱烈な歓迎を受けた。皆から信頼されている青年の帰郷は全く問題ないように思われたが、正統となった姉が男舞師たちを除名している事実を知る。そこにナドゥア老師が現れ、アシュディンを再び追い払おうとした。ハーヴィドはそれを不当だと切り捨て、日記の文言を引用して「ここは俺たちの庭だ!」と豪語した。

第4章 Now Going!

34話「皇帝陛下の観相学」
帝国伝統舞踏団ダアル・ファーマールに乗り込んだアシュディンたちはジールカイン老師長の口添えによって一時的に入宮を許可された。老師長は5代目正統ディ・シュアンの遺言に従って受け入れたのだった。玉座の間にて皇帝陛下と謁見することになり、ここで熱烈な歓迎を受ける。宮廷の様々な人々から受け入れられているアシュディンだが、いよいよ彼を追放した張本人と対峙することになる。

36話「修練場というか修羅場」
元彼と今彼の対決。ワーグラムはバネを生かした勇猛な舞で、ハーヴィドは民族音楽を取り入れた豪快な曲で勝負した。舞と楽とを交互に披露し、最終的には同時演技を見せ素晴らしい芸術へと昇華させた。結果は引き分け。老師長の嘆願もあってアシュディンの残留が決定したが、ラファーニは彼に国内で舞うことを禁止した。抗議の声を上げた舞師たちが次々と除名されていく。

37話「継がれた魂の邂逅」
ジールカインの手引きで図書館で帝国正史の調査をしたところ、帝国暦98年に隕石襲来の記述を見つけた。さらに3人は舞踏団の肖像画が飾られている部屋に足を踏み入れた。そこでハーヴィドは168年越しにディ・シュアンと再会し、肖像画の壁に隠された彼の日記を発見する。また、アシュディンが追放されたきっかけとなった演舞会は姉ラファーニの提案によるものだったと分かる。

38話「変革は未来を担う子のために」
ディ・シュアンの日記より、彼が舞楽ダアルの占断を恐れ、快く思っていなかったことを知る。発狂寸前だったことをエル・ハーヴィドに相談できずに〈星天陣の舞〉を迎えてしまった。結果、二度もの隕石襲来を予知して発狂・昏睡に陥ってしまう。不屈の闘志で肉体と精神を復活させたが、その際に伝統を変革し危険な占断を封印した。そして彼が予見したふたつ目の隕石群襲来は、なんと今年のことだった。

39話「極秘会議の妙な韻律」
今年の隕石群襲来が本当に起こりうるのか、アシュディンは〈星天陣の舞〉の占断を試みようと提案する。そのために舞踏団が勤労感謝祭レイバーフェスに出払うタイミングを狙おうとしていた。アシュディンを気遣って反対していたハーヴィドもついには折れることになる。一方ハーヴィドは、ラファーニが団員やアシュディンに冷たく当たっていることには何か理由があると推測していた。

40話「ドゥ・セレナーデ」
アシュディンが自室で舞の練習をしていると、元恋人のワーグラムが夜這いをかけてきた。強引さと懐かしさに押し切られ、つい体を許しそうになる。しかし自身の中でハーヴィドの存在が大きくなっていることに気付いて事なきを得た。その後ハーヴィドの部屋で話すふたりは、互いに助けられていることを知り、信頼関係を確かめ合った。

41話「星天陣に華のコラージュ」
勤労感謝祭レイバーフェス、通称、花舞祭の日。帝都各地で様々な舞が披露されていく。アシュディンは衛兵2人を見張りにつけて、神殿でこっそりと〈星天陣の舞〉を始めた。体力、技術、精神、どの面からも最難関と思われる舞楽だったが、ハーヴィドを傍に感じながら憑依トランスに飲み込まれずに舞い切った。そして災禍が〈10日後〉に訪れるという占断が一致する。アシュディンが勝手に舞ったことを咎めるラファーニ。その時、帝都の方で爆音が3発立て続いた。

42話「苦しみは天秤に乗るか」
爆音は西の国による侵略の狼煙だった。ファーマール帝国は100門の大砲に取り囲まれた。敵国の軍人ビャロン(通称)と帝国の皇帝ムドファーマルⅡ世が対峙する。敵国は、国と民を丸ごとよこさなければ〈10日後〉に一斉砲撃を開始するという。その宣言がアシュディンたちの占断した日と一致してしまう。皇帝は絶望し、民たちが次々と蹂躙されていく中、深夜にアシュディンの部屋の扉がノックされた。

43話「めいめいに魂を売れよ」
アシュディンの部屋を訪れたのは皇帝陛下だった。皇帝は彼の葬舞を見て命の重みを再認識し、翌朝に無条件降伏に応じた。次々と西の国に連行されていく帝都民。舞踏団にも魔の手が伸びようとしたその時、ラファーニが侵略者との交渉を始めた。女舞師を敵国の国都で保護しろ、男舞師は離散させろという内容だった。彼女は、間者であったワーグラムを牽制しつつ、舞踏団員を守るためにひとり陰で奮闘していたのだった。

44話「その花道は荊棘の道」
ラファーニは弟のことを思い続けていた。ワーグラムが間者だと知ってから、鉄の仮面を被って不幸を未然に防ごうとしていたことを弟に告げた。姉を尊敬するアシュディン。姉は最後に、弟には新しく生まれ変わる舞楽団の初代正統になってほしいという願いを託し、西の国に連行されていった。離散の沙汰が来ず、男舞師たちは抑留と空腹に絶望していた。そんな中、ナドゥア老師が病死してしまう。その直後に離散の沙汰が下りた。

45話「」
46話「」 
47話「」

ラスト3話はぜひ本文でお楽しみください!


【舞師と楽師/episode】

サイドストーリーです。毎回違う主人公たちが本編とは違うコミカルな一面を見せてくれます。

episode 5.5「少年は見た |•ω•,,) 
砂嵐に襲われた日あたりからハーヴィドが変だと少年は気付いていた。楽師の挙動不審とその原因は? 名探偵ザイン、真実はいつもひとつ!

episode 19.5「推しのためなら」
闇夜に紛れるふたつの影。追っかけと言えば聞こえは良いが、その実は痛いファンだった。人気No.1の踊り子と追っかけが手を組んだ。その被害者は?

episode 23.5「マスターの退屈」
ラウダナ国の酒場の中でも客足の少なめな〈葡萄の冠グレイプ・クラウン〉 美形の女装舞師が来たところでそれは変わらない。諸悪の根源はマスターの退屈だった?

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