マガジンのカバー画像

RIPPLE〔詩〕

132
運営しているクリエイター

2023年9月の記事一覧

ほどけ【詩】

ほどけ【詩】

不信と過信の狭間はどうせ谷底
澱んだ河川で錆びた関節
石化している暇があるなら
ことばの脚力に賭けてみないか

つまさきは月の方角へ
かかとでカルデラを踏め
リープ オブ フェイス

胸を突き出した跳躍
青と黄にフラッシュする虚空
黒髪が たてがみとなってなびく

一本ではない世界樹の間から
よその銀河の太陽光が漏れ入っている
知らない雲を突き抜けて生きた
いつだって風は未来から吹く

さあ塵とな

もっとみる
ひととき 【詩】

ひととき 【詩】

優男のグレーのマニキュアから
流れ出ていく現代音楽
英著論文を斜め読みしながら
直観で生きることを譲らず
不協和音を不測のリズムで
奏でる人のよく調和したフォルム

アイボリーのブラインドのように
遮るふりで誘い込みたい
憚らずに赦し合いたい

そこにない水槽の光と藻が揺れた
泡の群れは水面を超え
シーリングファンをすり抜けて
銀河の礫になるまでの道が用意されている
一瞬の気の緩みが即座に設ける天

もっとみる
虚の壁 【詩】

虚の壁 【詩】

鋼の壁は
すり抜けられる日を待っていた
天使を迎えたがっていた

不本意にもそびえたのは
誰かの過信が養分になったせいで
ほんとうは誰のことも閉じ込めたくなかった

不信が咲かせた花は永遠のイエロー
誤謬が招いた鳥の飛跡よ

鋼の壁のあるところに可能性があった
南南西に雲の王冠 東北東に注ぐ光彩
刻一刻と法則の変わるユートピア

ほら狼煙が上がった

スラムとメランコリーの摩擦熱に
浮かされた人々

もっとみる
青 【連詩】

青 【連詩】



Rhythm & Blues
深い深い青だ
天上の音楽と逆のベクトル
心の沈んだ先で
芥が煌めく音が聞こえる
それは
錆びたピアノの弦や
ケースの中のテナーサックスの輝き
クラリネット奏者の17年目の結婚指輪



リンドウを生けたコップを前に
すっかり動けなくなってしまった
まるで
「Rで始まる語を挙げなさい
制限時間内に できるだけ多く」と
誰かに回答を急かされたみたい
戸惑いを

もっとみる
インサイドアウト・イエローレイン 【詩】

インサイドアウト・イエローレイン 【詩】

言い伝えにあった黄色い雨は
坂に降り 丘に降り
ビルにも降ったが
どれもが紛い物だった

本物は そう
大樹の内側で ひっそりと
まるで 黒衣の僧たち数人が
粛々と蛇行したあいだを
きちんと埋めるかのように

黄色い雨は そうして
しゃらんしゃらんと降りしきった

みずいろのTシャツを着た少年がひとり
溶け始めのアイスクリームのように
笑った 染め上げられながら
大樹の天井のずっと奥に
水と光を放

もっとみる
永遠の鈍色の内 【詩】

永遠の鈍色の内 【詩】

雨だれ 七色
次の粒が落ちるまでの
期待の色と 中間色の もどかしい
望んだものは 手に入らない 当然
意識は 数秒さかのぼって
他の色を欲しがるものだ

雨だれ カスミ草
主役の不在を嘆いた人の
期待の花と 世間知らずの くだらない
確固たるものは 目に映らない 当然
意識は 勝手に先回って
他の花を飾り立てているものだ

倉庫の天井のような空
見上げるのをやめたら
右手に握られていたドライフラ

もっとみる