マガジンのカバー画像

RIPPLE〔詩〕

132
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

無力を焚べて【詩】

無力を焚べて【詩】



 尽きることない炎を囲み
 陣太鼓を轟かせながら
 原始の挫折は
 業火を拒否して燃え盛る

    その子は暗闇のうちに
    きちんと座り
    祭り火を睨みつけていた

 身じろぎもなくぶつかり合い
 躍動する人と人と人
 思念の火花は縦揺れの持つ反撥で
 祭り火へと飛び込んでいく

    孤独な老獪の学者が
    傍に寄ってきて
    顕教を懇々と諭した

 通り過ぎていく

もっとみる
磨かれてしまう【詩】

磨かれてしまう【詩】

波音を掻き消すプロペラ音
旋回するブレードが
たびたび頭をかすめるも
完璧な設計のもとに造られた重機が
やすやす落ちてくるはずもなく
ギロチンみたいに
斬り落としてはくれない
なにも切り離さない

プロペラはむしろ
与えられた役目に忠実だった
燻りきった風の表皮を
洗い磨いて(enhanceして)
そうやって
生き永らえさせてきたのか
送電線の一束すら
繋がっていない心の錆を

いずれこの羽根はな

もっとみる