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磨かれてしまう【詩】


波音を掻き消すプロペラ音
旋回するブレードが
たびたび頭をかすめるも
完璧な設計のもとに造られた重機が
やすやす落ちてくるはずもなく
ギロチンみたいに
斬り落としてはくれない
なにも切り離さない

プロペラはむしろ
与えられた役目に忠実だった
燻りきった風の表皮を
洗い磨いて(enhanceして)
そうやって
生き永らえさせてきたのか
送電線の一束すら
繋がっていない心の錆を

いずれこの羽根はなくなるという
塔も海上に移転するらしい
発電の場を転々とする
……転々とする
わたしはもう
波音では物足りなくなってしまったのか
確かめたくて耳をそばだてるも
風はいつまでも止みそうにない

海に寄ろうとして立ち上がる
思いのほか腰が軽くて
立ち尽くす
たったそれだけで
生き尽くした気がしてしまった
踵を返していったいどこへ
背を向けながら
寄りかかるものとは



#詩 #ポエム #文芸 #創作

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