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【音楽ジャンル】ロシア及び旧ソ連構成国の現行Post-Punk/Indie Rockについて【番外編】

記事のタイトルは現行と書いていますが、今回は現行のバンドではなく今のPost Soviet的な音のPost-Punkバンドと同じような感覚で聴ける90年代、80年代の音源をいくつか紹介したいと思います。
ソビエトロックの代名詞的なレジェンドバンド、Кино(Kino)
読み応えのあるBUNKER TOKYOさんの記事はこちら
1stアルバムがBRIAN ENOプロデュースなのも有名なЗвуки Му(Zvuki Mu)
この二組は特に今のバンドのインタビューでも良く目にしますが、他にも面白い音のアーティストを沢山見つける事が出来ました。

※ちなみにペレストロイカの始まりは1985年、ソビエト連邦が崩壊してロシア連邦が成立したのは1991年。

Стук Бамбука в 11 часов

ラテン文字表記: Stuk Bambuka V XI Chasov
唯一のアルバムを91年にリールテープで発表。その後にCDとLPで再発されています。
80's minimal synthとPost Industrialの曖昧な領域を女性Vo.乗せてモダンにしたような音。
かなり好みです。個人的にCOILを思わせる所もあるかなと思ってます。素晴らしい。
グループ名は直訳すると11時に竹を打つ、みたいな意味になる様ですが、引用元とかあるのでしょうか。

MVも作られています。どちらも独特の世界観をよく表しているので是非観てみてください。


Самцы Дронта

ラテン文字表記: Samtsi Dronta
ロシアの90年代前半に活動してた男女二人のバンドの編集盤。80年台のオブスキュアな音からシューゲイザーの手前くらいの振り幅。
三曲目が好きです。

 MVもあります。

 

Закрытое Предприятие

discogs
共産テクノ ソ連編でも紹介されたバンド。
1st、2ndのカセットアルバムが12 Chasov recordsから再発されてる。
1stはまだ中途半端なロックの要素があるけど
2ndからは個性がしっかりしてきていい。
↓は2ndアルバム。

基本的にDepeche Modeの影響が元になってる音楽性に聴こえますが、やっぱりどよんとした暗さがあってDMでも2ndアルバムやシングルにはなってない曲みたいな。
↑のYouTubeで上がっているMVの曲の様に、後の方の音源の方が今のSynthwave的な音で
ちゃんと再発されたら評価されると思います。

Биоконструктор

ラテン文字表記: Bioconstructor
BANDCAMP
こちらも共産テクノ ソ連編で紹介されているバンド。
後に分裂してVo.がいるБиоと、それ以外のメンバーが中心となったТехнология(Tehnologia )となり、Биоконструкторの時点でかなりDepeche Modeの影響の強い音楽性だったのがさらに強まり、特にТехнологияはボーカルのニュアンスを含めてDM味が凄いとこになっていて感心します。
メンバーの中で、お前のボーカルじゃDMに近付けない!みたいなやりとりがあったのでしょうか。
でもどこかアングラ感のあるБиоконструкторが一番良いですね。
ちなみにMolchat Domも好きなバンドとしてCure、Depeche Modeに並んでБиоконструкторを挙げています。


Нечистая Сила

情報があまり無い謎のSoviet Post-Punk。
YouTubeに何曲かあるけど発売された音源はあったのか。どれくらいの知名度があったのか全然分からない。


Игорь Лень

ラテン文字表記: Igor Len
discogs
タルコフスキー監督作品での音楽が有名なソビエト電子音楽の巨匠Eduard Artemyevの助手を務めていた事もあるらしい作曲家/エンジニア/ミュージシャン。ソビエト国営レーベルМелодия(Melodia)から89年に出されたアルバムが素晴らしいです。
宗教歌、民間伝承歌が素材に使われ巨視的なスケールで崩壊と再生の様を眺めているような気分になります。
«Здесь...» = «Here...»


Гражданская Оборона

ラテン文字表記: Grajdanskaya Oborona
discogs
バンド名は市民防衛という意味らしいです。
フロントマンのYegor Letovを中心に84年に活動を開始した、シベリア発の伝説的なバンド。
編集盤やライブ盤も大量でどれがオリジナルアルバムに相当するのか良くわかってないのですが
↓はベストアルバムになるのかな。
シベリアの、肌を削るような吹雪を思わすガサガサなRaw Punk。

ノイズインダストリアルミュージックディスクガイド本INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!の持田保さんのブログでYegor Letovにも関係する記事が読めます。
こちらこちら

Хуго-Уго

ラテン文字表記: Hugo-Ugo
discogs
1990年にロシアのTolyattiで活動開始したPost-Punkバンド。93年辺りまで活動していたらしい。
初めはアコースティックギターを使った弾き語りで、メンバー増員をしてからはPost-Punk系の音にがらっと変わっています。
RAWなパンクロック寄りの曲から涼しげなネオサイケ寄りの曲までありますがどれもモノクロの写真のアートワークの様な寂寥感があります。
2000年代に再結成してライブなど行っていたようですが中心メンバーの死亡により活動を停止しました。

メンバーによるよりNew Wave色の強い別名義のХэй Джуд Структураもおすすめです。各種サブスクで聴けます。


Раббота Хо

ラテン文字表記: Rabotta Ho
discogs
1988年に活動開始して90年代の半ばまで活動して音源を残したウクライナのバンド。屈折系Post-Punkだけどロマンティックな要素もあって現行の旧ソ連系のバンドにはない個性がある。
後期JAPANをさらにひねくった感じも。
↓アルバムの中でもそんなにリードトラック的ではない曲がMVになっていますが、この映像好きです。

ライブ映像を観ると80年代のUK New Waveを強く感じますね。


Цукор Бiла Смерть

別表記: Cukor Bila Smert、Sahar Bilaya Smert、Sugar - White Deathなど
discogs
ウクライナのグループで、90年代前半に二本のカセットのみリリースしているようです。
前衛的かつ幻想的/魔術的な曲調の女性ボーカル曲。
これがとても良いけど再発もされてなければ現物も入手困難。どうにか何処かのレーベルで再発してくれないでしょうか。
※追記 なんと2024年3月にウクライナのMuscutのサブレーベルShukaiよりコンピレーションアルバムが発売されました。
当時録音された全てではないのですが未発表曲も含めて多くの曲が収録されています。
Cukor Bila Smert’ – Recordings 1990-1993

発売に合わせたインタビュー記事
翻訳機能を使って読みましたが、かなり読み応えがあります。

↓最初のカセット音源。 


二作目のカセット音源。

中心人物であるボーカル/ピアニストのСвітлана Охріменкоはグループ活動停止後もSvitlana Nianio名義でソロやコラボ音源をいくつか制作しています。
discogs
↓特にこの95年頃に録音された音源は本当に素晴らしいです。

 

Оселедець

ラテン文字表記: OSELEDETS 
単語の意味としては鰊、そこから転じてコサックの伝統的な髪型の意味も。
1985年に結成されたウクライナ人初のポストパンクバンドらしい。ポーランド内エルブロンで結成して活動とあるけど、おそらくポーランド内のウクライナ移民コミュニティの人達という事かな。
1989年に解散。ポーランドのレーベルKoka Recordsから音源がカセットで出てて入手は難しいけどYouTubeなどで聴くことは可能。
このレーベルはCukor Bila Smertなどウクライナのアンダーグラウンドの音源を多数リリースされています。
wikiで当時の社会情勢と絡めて解説がされています。
演奏を聴いた保守的なコミュニティから追い出されたりして大変そうだけど映画にすると面白そう。

rymによるとボーカルだったOlga Nakonieczna-Harasymは、ポーランドの神秘的な音楽グループKsiężycの最初期のメンバーだったようです。


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