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日記と短歌と俳句と

忙しかった年末年始がやっと落ち着きました。

あけましておめでとうございます、というには少し躊躇う日にちと、心配なニュースの数々ではありますが。

ふりかえりを兼ねて。
去年最後の授業だった『短歌と俳句』から、自分が提出したものをこちらに載せたいと思います。
自分の去年1年を表すような短歌と俳句になったので、備忘録をかねて日記のようなかたちで記します。

まずは短歌。

コーヒーの色の瞳に溶けていく きみのアフガニスタンの空は

この短歌は、2023年に出会ったアフガニスタン出身の友人について詠んだもの。

私は高校までずっと発展途上国支援に興味があり、国連や外務省の生徒向け講演会や、JICAのワークショップなどによく足を運んでいました。大学でもボランティアで電動車椅子の送付などをしていましたが、まったく関係のない職に就いて5年、自分の生活で目いっぱいの私はいまなにも出来ておらず。

大学に入り、世界史をもっと勉強したいという気持ちが生まれたときに、彼と出会いました。

アフガニスタン。
波乱な歴史をもつ多民族国家で、支配され、衝突が繰り返される土地。最近ではアメリカの統治がタリバン政権によって崩れ、現在はテロが多発することから退避勧告が出されています。

危険情報ーアフガニスタンはレベル4

そんな危険なイメージが強いアフガニスタンですが、彼と見た祖国の写真は強く濃い青空が印象的な、美しいものでした。

タリバン政権が復権する前の穏やかな風景では、子どもたちが無邪気に笑い、庭では羊が群れており、工場では重厚な趣のある絨毯を女性たちが織っている。複雑な歴史や痛ましい現状の狭間で、彼らは『生活』しているのだなと、当たり前のことを強く実感しました。

濃い茶色の瞳の彼は、懐かしそうに、大事そうに、今は帰れない祖国の写真を見ていました。それが印象的で、詠んだ短歌です。

講評では、
・『瞳』『溶ける』『きみ』の羅列は恋の歌と思われがちなので、『きみ』との関係性を迷ってしまう
・『きみ』と『あなた』では印象がまったく違うし、最後を詠嘆にするかしないかでも変わるため、必然性をもって選ぼう
・重いテーマかと思うが、全体的に柔らかくまとまっていて巧み
・『コーヒー』だと重さ苦さを感じにくく軽やかなので、『珈琲』でもよかったのでは

など、さまざまな批評を頂けて勉強になりました。
短歌は、『自分にとっての印象』と『受け取った人にとっての印象』が違うと意図ががらりと変わってしまい、本当に難しいです。

ただ、講義後に声をかけてくださった方から、下の句を『アフガニ』と『スタン』で切れて句またがりさせているところに意味があると言って頂き、おおお〜〜! と思いました。『スタン』とはペルシャ語で『国』を表し、ウズベキスタン、パキスタンなども同様にその地方を占める多数派の民族名+『スタン』となっているという特徴があります。こういった知識が短歌でも巧みに織り交ぜられるとよいなあと思いました。

また、『アフガニスタン』の戦争のイメージから『空』が曇り空や雨空を連想されてしまうかなという懸念もありました。聞いたみたところ、何人もの方に「真っ青に晴れ渡る空が見えたよ!」と言って頂き、それはちょっと涙が出そうなくらい嬉しかったです。

作者意図を正しく読み取って貰うことは短歌の真の目的ではないと思います。それでも、自分のイメージが素直に伝わっていると無性に、言い表しようのない感動があるなと、今回思いました。

2023年、勉強の年でした。
文芸を学びに入学して、芸術学や歴史やさまざまな芸術に触れ、自分が囚われていた固定観念が少しずつ壊れていきました。
勉強、ときに苦しく悔しく知りたくなかったことにも直面しますが、そのすべてが自分の再構築に繋がっているなと思います。

いま世界でなにが起こっているかまっすぐに見ること、歴史を学ぶこと。文芸とかけ離れているようでいて、すぐそこにあった大切な視点でした。


次に、俳句。

夫隣 冬三日月の珊瑚色

夫は、『つま』と読みます。昔は配偶者の一方をそう呼んでいたことから、俳句では使われることが多いと聞いたので使ってみました。
夫も妻も『つま』と呼ぶ、そのこと自体が美しいなあと思って気に入っています。

2022年の5月に結婚して、夫婦生活がそろそろ2年になろうとしています。
「結婚願望なんてない」「ひとりの方がラク、絶対に結婚なんてしたくない」と思っていた時期がとても長かったのですが、いざ結婚してみるとあまりに心地よく穏やかで心強く、決めつけるものじゃなかったなと思いました。感謝……。

『冬三日月』は見てのとおり冬の季語です。
時間が早いと月は赤茶色っぽく見えることがあり(地平線近くに月があるときは、厚い大気に青い光が吸収されるらしい)、おどろおどろしくて少し苦手でした。

歩道橋を夫と歩いているときに、ちょうど赤い三日月が見えて「見て、凄い色!」と言ったら、「綺麗だね〜」と返されて、その月は私にとってはピンクのような綺麗さに様変わりしました(単純なので)。
そんな、いわば惚気俳句でした。

感情優位の私と思考優位の夫、もちろん合わないところもたくさんあります。
一緒に暮らして3年、気になる部分が増えたしお互いに小言も増えた気がする。まだ相手の分からないことなんていっぱいあります。

尊敬できるところもできないところも、ぜんぶひっくるめて認め合って、これからも同じ月を見れたらいいな。などと思いながら。

こちらの俳句は、時間の都合上講評なし。
短歌と違い、俳句は歳時記という作り手と読み手の共通辞書があることで、とても作りやすいなと感じます。

たとえば、『レース』とだけ言われたら人によっては「雪の結晶みたいだな」「ウエディングドレスかな、結婚式なら春かしら」などイメージが分かれると思いますが、「レースは涼しげだから夏の季語!」と決まっているので、そこに齟齬が発生しない。5・7・5という短い中で表現するには、合理的でよいなあと思うのでした。

海苔は春、ブラックバスは夏、相撲は秋、ラグビーは冬の季語などなど、歳時記を眺めているだけでも楽しいですよ。


大学でたっぷり学び、自主企画の運営も始まった2023年。仕事も充実しており、友人も増えてぎゅっと濃い年になりました。

今年・2024年はどのような年にできるかな。
去年に負けず劣らず、充実した年にしていきたいです。ということで。

今年もどうぞ、よろしくお願いいたします!

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