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【ビジネス法務実践編】オウンドメディアマーケティング

実践編の第2回目として、コロナ禍で重要性が高まっている、オウンドメディアを活用したマーケティングと、法務を戦略に取り入れるポイントについて書きます。

以下のnoteにも書きましたが、売上の構成要素は、「売上=人口×認知率×購入率×購入個数×購入頻度×購入単価」です。そして、お客さまは知らないモノやサービスを購入することは原理的にありえないので、認知率を高めるためのメディア活用は非常に重要ですが、落とし穴も少なくありません。法務を戦略に取り入れることで落とし穴を避けるとともに、低い費用で高い効果を狙うことができます。

このnoteは、オウンドメディアの活用を検討・実施している会社の経営者、広報・マーケティングの担当者の方におすすめです。「オウンドメディアとは何なのか」「オウンドメディアの重要性は分かったけれど、どのように活用すればいいのか」「活用に際してどのようなリスクが有るのか?」「リスク低減のために注意すべきポイントと、社内リソースをどれほどかけるべきか?」といった疑問を解消するための内容になっています。

1. メディア活用のスタンダート、トリプルメディア戦略

トリプルメディア戦略とは、2010年前後に提唱されたデジタルメディア活用の方法論の一つであり、メディアを以下3つの種類に分類して施策を行う事を言います。

1. オウンドメディア(Owned Media)→ブランド選好を高める
2. ペイドメディア(Paid Media)→認知を獲得する
3. アーンドメディア(Earned Media)→拡散される

簡単にいえば、オウンドメディア=自社ウェブサイト、ペイドメディア=広告・宣伝、アーンドメディア=SNSや取材による記事化です。

2.オウンドメディアとは

その中でも、オウンドメディアを一言でいえば、「お客さまが知りたい情報を提供するための、自社が運営するウェブサイト」です。
運営の目的は「お客さまが知りたい情報の提供」によってお客さまとの間に接点を作り、その接点を通じてブランド選好を高める(ファンを増やし、育てる)ことです。

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3.オウンドメディアに優先的に取り組むべき理由

そして、3種類のメディアのうち、最優先に取り組むべきはオウンドメディアです。理由は3つあります。

- 1つめの理由は、費用と内容のいずれの観点においても、オウンドメディアが最もコントロールしやすく取り組みやすいためです。ペイドメディアは効果を出すために少なくない費用をかけ続ける必要がありますし、アーンドメディアは拡散される内容のコントロールが難しく世界観やブランドの維持が十分できないことがあります。

- 2つ目としては、他メディアで認知を得た際のお客さまの受け皿として機能するためです。広告・宣伝(ペイドメディア)の活用や拡散を狙ったコンテンツを活用(アーンドメディア)する場合、折角認知をいただいても、購買や拡散をしてくれる状態にはなっていないのがほとんどです(購入率、購入単価が低い)。そのため、お客さまとの接点を継続的に持ち、好きになっていただくための場として、オウンドメディアが必要となるためです。受け皿がない認知獲得は、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので、徒労となってしまいます。

- 3つ目として、コロナ禍において新しい集客チャネルの構築に迫られていることもあり、多く会社が取り組み始めており、運営していないこと自体が他社との差分となり、信用されなくなってしまうことがあるからです。

4.オウンドメディアの具体的なコンテンツ

では、オウンドメディアを運営する際の具体的なコンテンツはいかなるものでしょうか。大きく3つあります。

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(1)まず、本noteのようなコラム型コンテンツがあります。これは、Google等の検索エンジン経由や、他のメディアにフィーチャーされることによって、自然流入(「オーガニック」といいます)による認知・集客を狙うためのコンテンツです。
(2)次に、お客さまの声を中心とする、事例コンテンツがあります。こちらは、将来のお客さまの背中を最後のひと押しし、コンバージョンにを促すコンテンツです。
(3)更に、昨今では、文字だけでは伝わりづらい新しいコンセプトを備えた製品やサービスも増えてきているため、短時間でより多くの情報を伝えられる動画コンテンツの利用も増えています。動画は、ブランド選好を高める段階からコンバージョンまで広く効果のあるコンテンツです。実際、オウンドメディアという言葉が生まれる前からECサイトのメディア化を進め今では月間1,500万PV以上のアクセスを誇る『北欧、暮らしの道具店』や、料理動画の『デリッシュキッチン』・『クラシル』等が、動画を活用することで世界観をユーザーに伝え、結果として多くのファンを獲得(ブランド選好の向上)するとともに、コンバージョンにつなげています。

5.オウンドメディアの失敗を避けるために必須の3要素

ここまで、オウンドメディアに取り組むべき理由を説明してきましたので、ここからは、気を付けるべき点に触れたいと思います。まずは、メディア運用そのものについての注意点です。

(1)ビジネス上の目的を明確に
ビジネスとして活用する以上、当然、明確な目的を持って運営する必要があります。目的無きメディア戦略は、大変なだけで得るものが無いという最悪な結果にしかなりません。そして、目的は以下の要件を満たす必要があります。

1. 月間PV数○万といったの形で具体的かつ測定可能である
2. 非現実的なものでなく、達成可能である
3. ブランドのミッション・ビジョンや世界観との整合性が取れている

(2)4W1Hでミッションを組み立てる
「誰に/誰が?、何を?、どのようにして問題を解決・実現するか?、なぜか?最終的な目的や与える最高の価値は何か?」という4W1Hについて考え抜かれていないメディア・コンテンツは多いですが、目的の達成に繋がりません。例えば、本noteは、オウンドメディアの活用を検討・実施している会社の経営者、広報・マーケティングの担当者の方に、「オウンドメディアとは何なのか?」「どのように活用すればいいのか?」「その活用に際してどのようなリスクが有るのか?」「リスクの低減のために注意すべきポイントと、社内リソースをどれほどかけるべきか?」といった疑問を解消するために整理した事実と考察を、noteというコラム形式・媒体を通して届けることで、疑問を解消することを目的としています。

(3)リソースの明確化
そして、「戦略」= 目的達成のために、ルールの範囲内で、リソースの配分を選択することであるため、上記目的を達成するために、限られた社内リソースをどこまで配分し、どこからは社外リソースを活用するかの判断が重要となります。

例えば、オウンドメディア活用のノウハウや成功経験がない場合、闇雲に立ち上げても時間とリソースが取られる割には効果が得られず徒労に終わることが多いので、経験のある代理店等の外部リソースを活用するのも、立ち上げのタイミングでは一つの手です。

一方、運営フェーズにおいては、自社内にノウハウを蓄積し、柔軟かつタイムリーにお客さまとの接点を持つことが重要となってくることに加え、閲覧数が増えてくれば効果も計算ができるようになってくるので、社内リソースでできる限り対応するべきでしょう。

6.法務を戦略に取り入れるポイント

そして、オウンドメディアを運営するうえでは、さまざまな法律や権利に配慮する必要があります。

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(1)知っておくべき法律・権利
業種・業態によりますが、オウンドメディアを運営する際に理解しておきたい法律や権利には以下があります。

・景品表示法
・薬機法(医薬品医療機器等法)

・個人情報保護法
・著作権
・肖像権
・パブリシティ権


例えば、「今、注目の●●商品10選」といった商品の比較コンテンツで、競合企業の商品より自社の商品の方が優れているとアピールしたい場合は、同種もしくは類似の商品を提供している他の事業者よりも有利であると「誤認」させ得る表示(景品表示法上の優良誤認表示)にあたらないように、第三者機関のエビデンスを掲載する等、細心の注意が必要です。

さらに、自社以外の制作した文章や写真を許可なく使うことは著作権侵害、SNS上に投稿されているものも含め人物の画像の無断掲載は肖像権侵害、その人物が有名人である場合は肖像権とパブリシティ権侵害になる可能性があるので、許諾を得る必要があります。

これらのルールに反すると指示・措置命令や課徴金が課せられお客さまからの信頼(レピュテーション)が大きく傷つく可能性があるので、お客さまとの間に接点を作り信頼を構築するメディアであるオウンドメディアにおいては、ルールに従う必要があります。したがって、エビデンスの収集、内容チェック体制構築、許諾取得のフロー作りといった運用体制を構築し運用するためのリソースを確保することは、コンテンツ制作のためのリソースと同レベルで重要です。信頼が既存された場合、マイナスの情報伝播スピードは非常に早く、回復することが困難なことを踏まえれば、リソースの投入は十分にペイすることが多いです。

(2)更に、違反した場合に、行政指導や製品回収・広告中止による損害、レピュテーションリスクをはじめ、事業運営に多大な影響がある、薬機法に関しては、美容関連・化粧品関連の会社をはじめ意図せず違反してしまうことも多く、その知識を整理しておくことの重要性が高まっています。

薬機法において禁止表現が規定されているのは、「医薬品ではないもの(食品、化粧品、等)が、医薬品と誤認されてしまうことを避けるため」であることという背景を理解することで、より判断がスムーズになります。

具体的に覚えておくべき禁止表現は以下となりますが、「医薬品と認識されてしまわないか?」を常に頭においておくことで、意図せず禁止表現を使ってしまうことが少なくなると思います。

【1】効果効能の記載:医薬品的な効果効能を明示・暗示する表現 (= 医薬品)
例:「新型コロナウィルスに効果あり」「免疫力を高めます」

【2】含有医薬品成分(原材料)の記載:医薬品成分を含有する(= 医薬品)
例:「タウリンを含む」

【3】用法用量の記載:用法用量を詳細に決めたもの(= 医薬品)
※摂取量やタイミングに決まりがあることは医薬品の特徴のため
例:「1日3回 毎食後、1粒/回が目安です。」「朝・晩に、2錠お飲みください。」

ただし、薬機法の解釈は、弁護士でも判断に迷う場合がある程であるため、違反を避けるために、健康食品や化粧品等を扱う場合は、上記の説明やガイドライン等を参照しつつも、判断に迷う場合は専門家に相談することをおすすめします。

7. 最後に

オウンドメディアを上手く活用することで、お客さまとの接点を増やし、ファンを育てる(ブランド選好を高める)ことができ、持続的かつ効率的な集客を実現できます。コロナ禍で、オフラインでのファン育成には限界があるため(もちろん、オフラインを疎かにしていいわけではなく、自社の長期的成長にとって重要なお客さまとの接点としての活用に、一層絞っていく必要があります)、競合に遅れることなく積極的な活用を図るが求められています。

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ただし、オウンドメディアだからといって規制は緩くなりません。
「オウンドメディアにおける規制は、広告やECサイトより緩い」という誤解を持った方にお会いすることがありますが、注意が必要です。確かに、テレビ等のマスメディアでの広告・宣伝やAmazon・楽天のようなECサイトで掲載するよりも発見されずらい(=違反となる可能性は比較的低い)側面はありますが、発見された場合の影響度の大きさは変わりません。

特に、中小企業においては、そもそもリスク意識がなかったり、軽くみてしまう傾向があるように思われます。既に述べたように、一度違反がバレてしまえば、お客さまからの信頼を大きく損なうのみならず、最悪の場合、当局から摘発され、業務を継続できなくなる可能性があります。したがって、専門家を適宜活用しつつ社内にノウハウを蓄積するとともに、違反をしない体制・仕組みを作りにリソースを割くが、中長期的な収益を最大化します。

踏むべきでないリスクの回避のためには、少なくないリソース投下が必要になるため、ルールとリスクの正確な把握・見積と、目的に照らしたリソース投下の判断が不可欠なのです。

判断に迷われたときは、デジタルマーケティング、法務、経営のすべてに関する専門家がおりますので、ぜひ当社にお気軽にご連絡下さい。

最後までお読みくださり、有難うございました。コロナ禍の大変な状況ではありますが、差をつけるチャンスでもあります。
がんばっていきましょう!

メールアドレス:contact@legalize.co.jp

会社ホームページ:https://ligalize.co.jp/ 

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