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#369 「サンランドリー事件」東京地裁

2014年9月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第369号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【サンランドリー(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2012年12月14日)

▽ <主な争点>
代表取締役であった者の労働者(従業員)性など

1.事件の概要は?

本件は、S社の代表取締役であったXが同社に対し、自身のS社における労働者(従業員)性を主張して、退職金および未払賃金等を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、衣類の洗濯等を業とする会社であり、その株式の75%を現代表取締役であるAが保有している。

★ Xは、大学卒業後、S社に従業員として入社し、出産のため一旦退職した後、再び同社に入社した。その後、Xは平成5年9月から21年9月30日までの間、S社の代表取締役に就任し、同日代表取締役を辞任するとともに取締役に就任したが、同年11月、同社に対し、同月末日をもって退職する旨の退職届を提出した。

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<Xが代表取締役に辞任するまでの経緯等について>

▼ 平成5年8月末日以前、B(XおよびAの父、平成13年4月没)が代表取締役に就任していたが、病気のため退任することとなった。

▼ 5年9月、BがS社の代表取締役を辞任する一方、Xが代表取締役に就任するとともにAが取締役に就任した。

▼ 21年9月、XがS社の代表取締役を辞任する一方、Aが代表取締役に就任した。

★ Bの死亡直前において、S社の株式はBが50%、Xが25%、Aが25%の割合でそれぞれ保有していたところ、Bの死亡後の遺産分割協議により、Bが保有していたS社株式の全てをAが取得し、その結果、Aが同社株式の75%、Xが25%をそれぞれ保有することとなった。

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<XのS社における就業形態、勤務時間の管理、報酬等について>

★ S社の就業規則上、1日の勤務時間は午前8時から午後5時まで(休憩時間は正午から午後1時)と定められていたが、Xの就業形態は一般的に午前8時から9時頃に出勤し、午後2時頃まで業務に従事した後、午後5時頃まで休憩を取り、その後、午後8時頃まで再び業務に従事するというものであった。

★ S社においては、従業員の勤怠管理等を目的として、タイムカードを作成・使用しており、X以外の従業員については主に経理担当従業員がタイムカード打刻時刻を管理して賃金計算等に用いていたが、Xについては代表取締役であった間、氏名の記入されたタイムカードが作成されていたものの、他の従業員等からタイムカード打刻時刻を管理される等の方法により勤務時間が管理されることはなかった。

★ Xが代表取締役に就任した後の報酬は役員報酬のみで諸手当等は支給されていなかった。決算報告書上もXの収入は代表取締役に就任する前は従業員の給料ないし賃金として計上されていたが、就任後は役員報酬手当として計上されるようになった。

★ Xは代表取締役に就任する前日、雇用保険被保険者資格喪失手続をとり、以後、雇用保険に再加入することはなかった。

★ 21年3月頃、AはS社の副社長に就任後、Xに対し、重要な経営事項であって株主による意思決定が必要と思われる事項については、Xの社長人事権を行使する前にAの決裁を正式に得るよう要求したり、採用人事についてXがAに相談しなかったことに対して反発して副社長を辞任する旨表明したりする等、同社の経営事項(人事事項を含む)についてAの意思を介するよう強く要求するようになった。

3.元代表取締役Xの主な言い分は?

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