見出し画像

#504 「メディカルプロジェクト事件」東京地裁(再々掲)

2020年1月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第504号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【メディカルプロジェクト(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2018年9月20日)

▽ <主な争点>
医師の労働者性、特定の月の勤務実態から他の月の休憩時間における労働状況を推認することなど

1.事件の概要は?

本件は、医師であるXがM社に対し、雇用契約に基づき、(1)平成27年1月分の賃金150万円、(2)26年12月分の賃金として支払われるべき未払のインセンティブ報酬4万7557円、(3)26年8月1日から27年1月23日までの間(以下「本件請求対象期間」という)、所定休憩時間に休憩できず1日8時間を超えて労働したことに対する時間外割増賃金104万8206円の合計259万5763円から、既払金73万5329円を控除した残額186万0434円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびXについて>

★ M社は、医院の経営に関するコンサルタント業務等を目的とする会社である。A医院(仙台市所在)とB医院(東京都所在)はいずれも美容外科等の診療科目で同社が開設した医院である(以下「本件各医院」という)。

★ Xは、平成25年10月から27年1月まで、本件各医院において医師として稼働していた者である。

--------------------------------------------------------------------------

<本件契約について>

▼ XとM社は25年10月、次のような内容の契約を締結した(以下「本件契約」という)。

(1)XがM社の運営するクリニックに関し「個人事業主」として参画するものとする
(2)勤務地 M社が運営する本件各医院とする
(3)報酬 基本報酬月額150万円(年間報酬額1800万円)インセンティブとして、Xの勤務日において売上金額が日額80万円以上の場合、売上額の2%を支給
(4)勤務条件 月間22日
(5)契約期間 5年を基本とする

--------------------------------------------------------------------------

<Xの勤務状況、本件契約の解消に至った経緯等について>

▼ Xは25年10月からA医院で医師として稼働を始め、当初はA医院のみに勤務していたが、B医院が開業した26年2月以降、基本的に月22日の勤務のうちB医院に14日、A医院に8日という割合でシフトが組まれ、これに沿って勤務していた。

▼ 26年6月、B医院でモニターとしてXの施術を受けた患者が事前の説明では著名な海外の医師による施術を受けられるとのことであったにもかかわらず、Xが施術を担当し、その後、施術箇所に不具合が生じたなどと申し立て、トラブルとなる事態が発生した。

▼ これを受け、XはM社に対し、27年1月23日付で同社との契約関係を解消する旨を通知し、以後、本件各医院における業務を行っていない。

ここから先は

3,483字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?