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#119 「青森セクハラ(バス運送業)事件」青森地裁

2006年1月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第119号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【青森セクハラ(バス運送業)事件・青森地裁判決】(2004年12月24日)

▽ <主な争点>
損害賠償(セクハラ行為と会社の使用者責任)

1.事件の概要は?

本件は、S社の女性従業員であったXが、上司の立場にあったYからセクシュアルハラスメントに該当する行為(以下「セクハラ行為」という)を執拗かつ継続的に受けていたにもかかわらず、S社は何ら防止策や抑止策を講じず、Yの行為を野放しにしたため、Xは退職することを余儀なくされたものであり、Yらによって人格権(性的自己決定権)や快適な職場環境の中で就労する権利を侵害されたとして、YおよびS社に対して、損害賠償を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社、XおよびYについて>

★ S社は、乗合旅客自動車運送事業、団体旅客自動車運送事業ならびに観光事業、地方鉄道等を目的とする会社である。

★ X(昭和27年生)は、昭和48年11月、S社に会計係として入社し、平成10年4月、経営企画部経営企画主任となり、14年3月には観光部観光課を命じられたが、同年12月、S社を退職した。なお、Xには夫と2人の娘がおり、夫および次女夫婦と暮らしている。

★ Y(昭和25年生)は、養父がS社の取締役(先々代の社長にして現在の監査役)であったことから、昭和50年に同社へ入社し、総務部長・経営企画部長などを経て、14年4月以降は取締役事業本部長となり、S社のナンバースリーの立場にある者である。なお、Yには二男一女がおり、妻および長女の3人暮らしである。

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<YのXに対するセクハラ行為等について>

▼ 平成6年2月頃から、YはXに対し、職場で睨みつけたり、1年にわたってラブレターに類する手紙を送ったりするなどした。

▼ 8年3月に仙台へ出張した際、YはXの部屋に入り込み、Xを押し倒し、猥せつな行為を行った。この出張以降、YはXに対し、個人的な予定を書き込んだカレンダーのコピーや出張土産のスカーフを渡すなどした。また、YはXが帰宅した後に、Xの家に電話をかけ、夜間、飲食店に出てくるよう呼び出すこともあった。

▼ Xは上記のようなYからの理不尽な仕打ちに悩まされていたが、職場での立場が悪化することを恐れ、強い態度で応対することができず、8年7月、退職届をS社に提出したものの、結局退社には至らなかった。

▼ Xは9年2月、労働組合委員長のAにYからセクハラ行為を受けて悩んでいる旨を相談した。AはYに対し、注意をなし、YがXを睨んだり、夜間に呼び出したりすることはなくなった。

▼ Xが主任に任ぜられた10年4月頃から、Yは社内にあまり人のいないときを見計らってXに近づき、Xの肩に触ったり、脇の下に手を入れたりするなどの行為を繰り返すようになった。

★ S社では男女雇用機会均等法の改正を受け、12年7月、就業規則にセクハラ行為に関する禁止条項を追加し、13年1月にはセクハラ被害に対する相談窓口として総務部を充てる措置をとったが、15年2月以前には手続マニュアル等も準備されていなかった。

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<Xが退職に至るまでの経緯>

▼ Xは14年2月、平社員の身分として観光課へ配置転換をする旨、内示を受けた。Xは労働組合委員長のBに対し、異動への不服と、Yから受けてきた仕打ちを相談した。同時に直属部長のCに対しても、Yから受けてきた被害の骨子を伝え、異動はYからの嫌がらせであると訴えた。

▼ 同年3月、XはB委員長および社長と話し合ったが、「配置転換は不当ではない。セクハラについてはYからも聞いてみる」という趣旨の言葉を得た程度で終わった。その後、B委員長から「XにもYにも家庭があるので我慢してくれ」と言われたXは生活を考え、異動の内示を受け入れた。

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