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#524 「三田労基署長事件」東京地裁(再々掲)

2020年11月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第524号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【三田労基署長(以下、M労基署長)事件・東京地裁判決】(2019年8月26日)

▽ <主な争点>
入社前の説明と異なる処遇に関する是正要求の拒否を理由とした労災請求など

1.事件の概要は?

本件は、Xが転職先のA社から転職前の説明と異なる処遇を受けるなどしたため、処遇の是正を求めて話し合いを続けていたが、突如話し合いを打ち切られて深い絶望を感じ、適応障害を発病したとしてM労基署長に対し、労働者災害補償保険法に基づいて療養補償給付の請求をしたところ、同労基署長が不支給処分をしたことから、同処分の取り消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびB社について>

★ Xは、平成19年9月、医療画像情報システムの販売等を営むA社に入社し、営業職または営業事務職として勤務していた者である。21年4月、B社がA社を吸収合併したことから、XとA社との労働契約はB社に承継された。

★ B社は、医療画像情報システムならびに関連するソフトウェアおよび機材の販売等の事業を営む会社であり、27年12月18日時点における労働者数は1248名、Xが所属する本社は363名であった。

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<本件不支給処分、本件提訴に至った経緯等について>

★ XはA社およびB社に対し、職位および賃金が入社前に受けた説明と異なることなどを度々申し出て処遇の改善を要求したが、A社およびB社はその都度、入社前の説明と異なる処遇をしたことはない旨説明し、Xの要求に応じなかった。

▼ Xは27年6月、東京労働局長に対し、入社時の合意の履行等についてB社に助言および指導をするよう申し出た。

▼ B社は同年9月9日、Xに対し、入社前に説明した内容と異なる処遇をした事実はなく、今後は誤った前提に基づき同社および関係者に対し同様の申立てを繰り返すことのないよう指示するとともに、この書面をもってB社の最終的な見解とする旨記載した通知書(以下「本件通知書」という)を交付した。

▼ Xは同月、医療機関を受診し適応障害と診断された(以下「本件精神障害」という)。

▼ Xは本件精神障害の発病は業務上の事由によるものであるとして、27年11月、M労基署長に対し、療養補償給付の請求をしたが、同労基署長は28年5月、本件精神障害は業務上の事由によるものとは認められないとして、上記療養補償給付を不支給とする処分(以下「本件不支給処分」という)をした。

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