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#503 「紀北川上農業協同組合事件」大阪地裁(再々掲)

2020年1月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第503号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【紀北川上農業協同組合(以下、K組合)事件・大阪地裁判決】(2017年4月10日)

▽ <主な争点>
賞与、定期昇給に関する就業規則変更の合理性など

1.事件の概要は?

本件は、K組合の職員だったAら10名が、スタッフ職制度の導入に伴う就業規則の変更は労働条件を労働者に不利益に変更するものであって、労働契約法(労契法)9条および10条の要件を満たすものではないから、Aらにはその効力は及ばないとして、同組合に対し、定期昇給が実施されたことを前提とした未払賃金ならびに賞与およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<K組合およびAら9名について>

★ K組合は、組合員のためにする農業の経営および技術の向上に関する指導等を目的とし、平成13年4月、K町農業協同組合、I農業協同組合およびH市農業協同組合の3つの農業協同組合が合併して設立された農業協同組合(農協)である。

★ Aら10名は、いずれもK組合の元職員であり、平成27年4月1日までに定年等によって退職した者である(ただし、定年後再雇用制度によって、定年後もK組合において就労している者もいる)。

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<本件就業規則等の変更、Aらへの適用等について>

★ K組合は組織発足当初から、和歌山県下の他の同一規模の農協と比較して、収益性が低く、平成13年度から3期連続で事業損失を計上していた。

★ K組合は職員の年齢構成が高いという課題を有していたにもかかわらず、13年度などは業績等の事由により新規採用を抑制せざるを得なかったほか、高年法の改正により、65歳までの雇用確保措置を実施する必要があった。

▼ K組合は平成13年4月、組織発足と同時に「役職定年制」を定め、満57歳に達した役職者は役職定年となり、以後は役付手当を支給せず、スタッフ職として処遇するとした。

▼ K組合は14年度以降、就業規則や給与規程(以下「本件就業規則等」という)の一部変更および関連規定の新設によって、(1)スタッフ職制度、(2)選択定年制度、(3)シニア職再雇用制度(定年後再雇用制度)を順次導入し、それ以降も改正を重ねた。

★ K組合には職員によって組織される労働組合(以下「本件労働組合」という)が存在するところ、上記の本件就業規則等の変更に関し、本件労働組合が明確に反対の意思表示をしたことはなかった。

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