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2023年7月の記事一覧
【掌編】五本指の龍狩
下降錘を減らして減速し、滑車槽から降りれば、二百八十七番の見張り梢に出る。洞から先の枝間は色褪せた網で編まれ、安定した床を成している。樹冠に設けられた小空間は、天井がなく吹き曝しだ。
雲一つない快晴、いつも通りの淡紫色。
先客が陣取っているのも、昨日と同じ。
「チゴノ博士、兆しは見えますか」
問われ、空に手をかざしていた老婆は、鷹揚に振り返る。
「おお、レザか。今日明日じゅうには墜ちるまい
下降錘を減らして減速し、滑車槽から降りれば、二百八十七番の見張り梢に出る。洞から先の枝間は色褪せた網で編まれ、安定した床を成している。樹冠に設けられた小空間は、天井がなく吹き曝しだ。
雲一つない快晴、いつも通りの淡紫色。
先客が陣取っているのも、昨日と同じ。
「チゴノ博士、兆しは見えますか」
問われ、空に手をかざしていた老婆は、鷹揚に振り返る。
「おお、レザか。今日明日じゅうには墜ちるまい