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【ASD育児】公園拒否から楽しめるようになるまでのサポートステップ

 公園が苦手な自閉症スペクトラムの子供は多いかと思います。人混みが怖かったり、子供の大声や泣き声に不安になったり、どう遊んでいいかわからなかったり。娘も元々あまり遊びませんでしたが、段々と楽しめるようになってきた頃、コロナ禍に突入。メルボルンでは公園が封鎖されました。2ケ月ほど前、ようやく開放されたものの、久しぶりの人出に驚いたのか、全く公園に寄り付かなくなりました。
 そこで今日は、ロックダウン明けの状況から、再び楽しく遊べるようになるまで、どんな風に進めていったか、最初の失敗を含め、セラピストさんたちのアドバイスに基づく段階的なサポートを書き留めたいと思います。

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1.今までにない激しい公園拒否

 ロックダウン直前、3歳半の頃、娘はブランコにも乗れるようになり、遊びの幅が広がって、公園で楽しめるようになってきていました。
 ところが、ロックダウン明け、事態は一変。何か月もの間、人との接触、特に同い年ぐらいの子供達と場を共有する機会が著しく減っていたことは、心に大きな影響を及ぼしていました。同じような経験をされている方々、いらっしゃるだろうなと思います。
 最初は、待ちに待った遊具に飛びついていったものの、人の気配に後ずさり。二度目は、子供達の遊び声が聞こえる公園に入ることを躊躇い、退却。三度目は、車から降りることを拒否。回を追うごとに、拒否の度合いが強くなっていきました。
 そこで、ここなら毎回楽しめた、という鉄板の公園へ、しかも人の少ない時間めがけて連れて行ったり、お菓子で釣ったりしてみました。また、長時間遊ばなくてもいいから、一回だけ大好きなトランポリンを跳んでみよう、とか、あの手この手で誘ってみました。
 しかし、抱っこして連れて行こうとすると、あいた両手で私のマスクを剥ぎ取り、顔を引っかこうとするまでになってしまいました。この強硬作戦は完全に失敗だったな、返って娘に悪いことをしてしまった、と自覚しながら、それでも「暴力に訴えれば止めてくれる」という飴を覚えるのは良くないと思い、ヒートアップしてしまった娘をなんとか抱きかかえつつ、少しだけ脇の小道だけ歩いて、落ち着いてから車に戻ったりしました。
 パニックになると、公園で遊ばない、おうちにも帰らない、と泣き、自分でも何がしたいのかわからない、あるいは説明できない状況になってしまいます。パニックになる前に止めておかなければならない、と改めて思います。ここまでは、迷走段階です。

2.ロックダウン明けに、引きこもり

 そもそも、公園は、身体感覚や運動能力、想像力など子供のいろんな発達を促してくれるところではあるものの、無理やり連れていくものでもありません。私も、ロックダウン前に娘がせっかく楽しめるようになったから、という固定観念に囚われすぎていました。この頃、娘は公園だけでなく、人の多くなった街の駐車場や道路など、とにかく出たがらなくなりました。
 私たちでも、ソーシャルディスタンスに慣れると、人の多い昔の映像を見ると「うわ、密だ」と思ったりするもの。まだコロナの分からない子供で、社交不安がある子供にとっては、違和感と不安が押し寄せても仕方ありません。
 とりあえず、しばらく外で遊ぶことは一切やめました。ロックダウンが明けて、我が家は逆に引きこもりです。

3.無人の早朝は公園が大好き

 1週間ほど間をあけて、朝食前の早朝、無人の公園に連れていき、そもそも公園自体にまだ興味を示すのかどうか、試してみることにしました。
 「誰もいないよ。どうする?」
 と声を掛けると、するすると車から自主的に降り、自分で遊具まで駆けていきました!その足の速いこと。そしてハンモックブランコで一休み。

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 ロックダウンの前よりも、バランス感覚や筋肉は発達していて、色んな遊び方ができるようにもなっていました。嬉しそうな娘の姿に、少し、安堵しました。
 ここから暫く、早朝や、誰も通らないようなさびれた小さな公園のみで遊びました。この頃、心理士さんより、「悪いイメージは絶対に植え付けない。楽しい場所と感じられる体験を色んな角度から作り出す」とアドバイスを受けていました。この段階の実践例は以下にまとめます。

 ◎無人の公園でのみ遊ぶ。無理強いしない。
 ◎廃材でミニチュア公園を工作し、好きな人形で遊ばせる
 ◎遊具で楽しく遊ぶ場面のある絵本の読みきかせ

4.外周散歩や見学のみ可能。あと一歩。

 一人きりの公園が楽しくて、行きたがるようになって暫く経ったら、次の段階。作業療法士さんの療育の時間に、人のいる公園に向かいました。でも、娘が遊ばないと言うと、中には無理して入らせません。代わりに作業療法士さんが、中に入って、こんなことも遊べて楽しいよ、という見本を見せてくれました。一回遊具を使うごとに、娘のところまで戻ってきてハイタッチして、注意を引きます。また、次はどこで遊んで欲しい?と娘に決めさせたりして、コミュニケーションをとりつつ興味も持たせるよう、工夫されていました。
 中には入らず、5分でも10分でも、無理しない範囲で、外周散歩や、見学することで、あまり怖がらせずに少しずつ、人がいるという状況に、再び馴らしていく段階です。並行して、楽しい無人公園遊びも続けます。

5.人がいても遊び始めた!

 ついにある時、人がいる、でもとても少ない公園に、誘ってみました。ここも無理強いはせず。すると、意外に「遊ぶ」と頷きました。私もクールに「そう」と反応し、大事にせず、車を停めました。あくまでも自主的に、娘が車から降りて、公園に足が向くか、確かめつつ見守って、遊具に駆けていく娘が頼もしく思えました。最初は5分。次は15分くらい、娘が公園から自分から去るまで、楽しめる時間が少しずつ、延びていきました。

6.行きつ戻りつ。無理せず諦めず気長に。

 こうして2ヵ月近くたった現在。やはり、日によって、また人出の状況によって、連れて行っても車から降りない日もあります。でも、その時はもう無理強いしません。メルボルンは現在ロックダウンがさらに緩和され、屋外であればお友達と遊ぶことも許されるようになりましたが、そういった家族ぐるみの社交はまだずっと先のことだと思います。
 今は何より、早朝の娘との二人きりの公園を、1日の始まりのフレッシュな時間として楽しみます。鳥の声も美しいし、メルボルンの朝の陽射しは眩しくも柔らかい。そして、無理せず、でも諦めず、気長に、まずは人がいる場所でもお出かけできるようになる練習を、少しずつ継続していこうと思います。

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