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オンライン授業へのフィードバック:ポストコロナ社会に向けて思うこと

Covid-19のパンデミックにより世界中で発達せざるを得なかったオンライン教育。学生、教職員を含め、皆が苦労して対応していますが、全てがマイナスな訳ではなく、プラスの側面も浮かび上がっています。そこで、学生たちのフィードバックを踏まえ、この経験を今後の糧にできれば、という思いを今日は記します。

◆これまでのオンライン教育

これまでも既に、IoT革新によりオンライン教育(eラーニング)は大きな発展を遂げてきましたが、Covid-19パンデミックは、世界中で、教育界全体のICT化をこれまでになく一気に加速させました。特筆すべきは、学校のような主要な教育現場でオンライン授業(ライブ或いはオンデマンド)が実施されたことです。

オーストラリアでは、現在小学校~大学まで、全てオンライン教育。日本では、小学校~高校までは、そこまでリモート化されていないようですが、一方多くの大学ではオンライン講義に切り替わり、学生も教職員も対応に追われて大変な一年となっています。
(日本のオンライン教育事情について、興味のある方は以下のNHKの記事をご覧ください。)

これまでのように、自分からeラーニングに足を踏み入れた人たちのみならず、賛成の人も反対の人も、とりあえずオンライン教育を経験せざるを得なかった、ということで、フィードバックが気になっていました。

◆賛否両論のフィードバック

日本の大学では、春学期が終わり学生のフィードバックが集まる時期。そこで、姉(文系)と父(理系)に、担当講義に対する学生の反応を聞いてみました。もちろん講義科目によっては、オンラインだと難しいものもあるので、それを差し引いた上で、オンライン授業が可能な科目についてのフィードバックを対象としています。

すると、苦労を強いられたというネガティブな反応が目立つのかなと思いきや、オンライン講義の感想は二極化しているようです。

ネガティブな感想
・授業に参加するには自分でやる気をださないといけない
・勉強している他の学生がいないと、講義にあまり身が入らず気が散る
・リモートだから、モチベーションが高まりにくかった
・逃げることができれば自分がいかに逃げられるかわかった
ポジティブな感想
・(オンデマンド配信の講義では)わからないところでは一時停止し、巻き戻してもう一回聞けるのがありがたかった
・普段人前だと恥ずかしくて出来なかった質問を、先生に個人的に送ることができたりして、とても有意義だった
・他人がいないことで、講義に集中できた

より広範で詳細な記録として、ICU(国際基督教大学)が早くも1000人以上のアンケートを公開しており(↓)、こちらも参考になります。

https://sites.google.com/info.icu.ac.jp/onlineclass-j/home?authuser=0

◆コロナ禍のリモート教育を経て見えてきたニーズ

フィードバックの傾向を見ると、まず、モチベーションを自主的に維持するのが困難な学生はリモートでよりドロップアウトしやすいということが改めてわかります。大学生でもそうですから、低学年になればなるほどこの傾向が強まるかと思います。実際、オーストラリアでも、リモート授業だと勉強に身が入らないため、常に隣りにいて注意しなきゃいけない、と言っている小学生のママたちもいます。

一方、オンライン教育によって主体的な学び(アクティブ・ラーニング)が寧ろしやすくなる、というポジティブな側面も浮かび上がりました。それには、巻き戻しが出来たり、再聴講したりできる、というテクニカルな要因に拠ることもありますが、他人の目を気にせずに勉強できる、質問できる、というより精神的な要因に拠ることもあります。相乗効果で、父の講義のように、受講率は若干下がったが、受講している人の成績は通年より上がった、という結果も出たのは頷けます。

リモート教育の実施により、一般的な大学の講義においても「ソーシャルな環境よりもよりクローズドの環境でこそ能力を発揮しうる」学生たちが、潜在的に一定数いるのだ、ということが浮き彫りになりました。もちろん小学校~高校生にもこうした人たちはいると思います。前回の記事でも触れましたが、私の娘のように社交不安を伴う自閉症スペクトラムの当事者だけでなく、定型発達の子供たちの中でも、HSC、いじめ、コンプレックスなど多様な要因により、勉強は嫌いじゃないのに集団授業に馴染めない子供が一定数存在します。

◆ポストコロナ社会におけるオンライン教育

これまで、オンライン教育は、効率的な勉強方法で更なるスキルアップを目指そうとする意識の高い人々に最適なツールとして知られてきました。

また、国内外で推進される教育のICT化は、ICT化した現代社会に教育も沿わなければならないということを主眼に、あくまでも画一的な教育の範囲内で模索されてきた側面が強いように思います。

しかし、コロナ禍中に発展した教育のリモート化は「オンライン教育によって、ストレスを軽減しつつ習熟度をさらに高められる幅広い一定層」のニーズに応えられることを明らかにしました。このスキルと発見は、非常事態下の財産だと思います。

ポストコロナ社会では、対面の集団授業というプレミアムな価値を取り戻しつつ、しかしこの財産も失わず、全世代の主要な教育機関において、オンライン教育がよりピンポイントでフレキシブルに利用できる形態へと進化することを、期待したいです。姉の大学では、質疑応答に限りオンライン形態を残すなど、早速、リモートを生かした教育サービスの提供を含め、ポストコロナへの議論が始まっているとか。

教員の負担を考えたり、学務規定との兼ね合いを考えたり、新しい取り組みというのは決して簡単ではありません。けれど、実際に動き出している教育機関の知らせを聞き、今後に希望が持てる気がしました。


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