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体の硬さを取るストレッチ3種

今回は脳性麻痺に限らずすべての人に使えるストレッチの方法を紹介します。

低緊張型脳性麻痺とは「体の筋肉や関節、骨などの器官がことごとく柔らかくなるタイプの麻痺」がある状態ですが、硬い部分もたくさんあります。硬さがあるから柔らかくなるのか、柔らかい身体を何とかして使おうとするから部分的に硬くなるのか、その関係性はいまだにはっきりしていません。ですが子供が大きくなるにつれて「全体が柔らかいのに部分的にすごく硬い」という場所が増えてきました。そこでそれをほぐしてやると、その周りの気になっていた柔らかさが解消したので「やわらかさを取るためには硬さを先に取るべき」という一見矛盾したようなことをしなけば、筋肉とは正常に発達していかないのだと気づきました。

硬さを取る方法としては、マッサージ・ストレッチ・指圧・鍼灸などがありますが子供や筋組織が弱くなっている病気の人や高齢者にはマッサージなどの強い刺激は良くないです。低周波治療器などの超音波の機械も骨などの発達に悪影響があると言われているので私も子供には使ったことがありません。

「筋肉が上手く使えていないから硬くなった筋肉をほぐす」ことと「筋肉を使いすぎて硬くなった部分をほぐす」という2つのことをするために、弱い刺激でも十分に効果のある方法を探すべきです。強い刺激は残された筋肉を傷めます。そしてその方法は自分の身体に合っていて、やっていて心地が良くてリラックスできるものであるほうが効果があると思います。無理してやっていることに効果はないですからね。

無理して頑張る筋トレや訓練は残された弱い筋肉を傷めるだけでその後の発達を阻害します。筋肉が弱い人は普通の人と同じような運動をしたら筋肉がさらに弱くなって前よりひどい状態になることが多いのです。

このことは特別なことではなく元気でよく動ける健康な人にも通じることだと思います。

もしも筋肉をつけて脂肪を減らして痩せたいと思っていて、同時に体のどこかにある痛みを取りたいと思っていたり、柔軟性を上げていきたいと思っているなら、このストレッチ技術は必ず効果を感じられるはずです。



でもまずはストレッチをする前に、小脳のケアからいきますよ。
しばらく脳の話が続きます。

何をするよりもまずは最初に麻痺を取ってから!


小脳と麻痺と筋肉の硬さは密接な関係があります。体の硬さを取る前にまずは麻痺がどこにあるのか正しく把握する作業を行います。全身のどの部位にどのような状態があるのかを地図にしてやるとわかりやすいです。

これが今現在の麻痺マップです。

少し前の麻痺マップがこちらです。場所に関してはあまり変化がありませんが、範囲は狭まってきました。

この記事にこれ以外の麻痺マップを公開しています。

手と足の圧倒的で強固な麻痺に関しては温冷療法が効果がありました。これは今でも毎日続けています。方法としては「お風呂に入ったときに氷を体に当てる」というシンプルなものです。

このとき「足の麻痺を取るには手に握らせる」「手の麻痺を取るには口の中や周りに氷を当てる」「口の周りの麻痺を取るには肋骨に当てる」と言うやり方をします。足が悪いから足に当てるというのでは改善しません。

これは脳に直接働きかける温度を利用したマッサージです。

麻痺は脳のダメージによって起こっているので脳に刺激を与えたいのですが、直接そういったことができないので体に刺激を与えます。触っても効果がないのは当然で、この部分は「細かい振動」と「温度変化」に対して動きのある場所だからです。もし触るのであればバイブレーターのようなものを膨らませたビニール袋に当ててさらに小さな振動を作り、それを体に当てるなどしないといけないのですがこれをしてもあまり大きな変化はありませんでした。

なぜなら小脳のプルキンエ細胞が手のひらのような形をしており、手のひら側が頭の近く、指先側が足先、その真ん中が手、といった構造になっていて中央の手首側から機能が活発なので、「足先の麻痺を取るにはまず頭の方の麻痺を取ってから」という法則があります。足の麻痺を取りたいときに足を触っても麻痺は取れません。

普段のハンドケアで大事なのは麻痺がある場所の周囲で「皮膚が冷たくなっている場所」です。この血流の悪そうな場所を触っているといつの間にか麻痺があった部分の範囲が縮小しています。皮膚が冷たくなっている場所を触っていてもあまり変化がない時もあります。その時はそれよりも頭に近い場所で皮膚に違和感がある場所を探します。皮膚の違和感とは「ほかの場所よりも硬い」とか「反発がある」とか「ざらざらしている」とか「触ると指がぐにゃっと入るような感覚がある」と言ったような小さな違いです。

そういった場所をお風呂の暖かいお湯に入っているときに触ってやります。氷を当てるのは基本的には「毛穴のない場所」「口や手のひらや足」が中心ですがそういった「違和感のある場所」はカイロを当てたり足湯やお風呂に入れたりして温めてやります。

小脳への働きかけは常に「温めることと冷やすこと」から始まるので、部屋の温度を一定にして過ごしやすい環境を普段から作っておくことも、温冷療法を成功させるコツです。温度にしても振動にしても「皮膚感覚の変化を体に感じさせる」ということなので、普段を均一にしておいたほうが上手くいきます。

こういった違いのある場所を細かく触っていると体全体に変化があります。言葉が出てくるようになったりとか、笑顔が多く出るようになったりとか、声が大きくなったりとかそういう変化です。この変化は数値に表せるようなものではなく毎日一緒に生活している人でなければ気づかないような小さな変化です。

「ちょっと元気になってきたかも」

と言うような変化がしばらく続くと、「足の動かし方が変わる」とか「手で小さなものを上手につまめるようになった」と言うようなことにつながっていきます。

ここで私が何を言いたいのかと言うと、「口周りの変化」が「手足の麻痺の大幅な改善につながるので、ちゃんと立って歩いて元気でいたかったら口のケアを一番最初にすべき」と言うことです。よく笑うというのは口が動くようになったということです。これは順序的には足よりも先に起こる変化ですから正しいのです。

小脳の中央部分から順番にケアしないと体の末端の麻痺は取れないので、そこを刺激するには「口の中に冷たいものを入れる」と言う方法が有効です。ただ寒くなるとコルチゾールが出て低緊張が強くなってしまうので、それを防止するために暖かいお風呂の中で行います。

夏なら暑いので、パピコなどのアイスを食べさせるのがいいです。一番冷たい部分を長時間手で握って食べるし、口の中が冷えるし。いっそパピコの中がすべてブドウ糖水溶液でできたものがあれば最高ですがないので、家で氷を凍らせてお風呂に入りながら舐めさせます。お風呂に長時間入っていると血糖値が下がるのでお風呂の前に甘いものを食べさせたりするのも良いです。


日課にして継続することが大事!急がば回れ!

こういったことは急には効果が出ないのである程度続けていると、「あれ?いつの間にかなんか変わった?」と他人から言われて気づくような差が生まれてきます。この変化は小さい変化ですが良くなったり悪くなったりというものではなく一歩ずつ前に進んでいくために必要なものです。

この温冷療法は小脳のケアの基礎になることなのでこれをせずにほかのことをいろいろしてもなかなか難しいです。麻痺が取れてもいないうちから装具だけつけて歩かせようとする理学療法士がいますが、そんなことをしても子供は苦しむだけで全く歩けるようにはなりません。

「急がば回れ」と言うのはまさにこういった作業のようなもので、「風呂の中で氷を舐めて、それが何の意味があるの?」と思う人が多いですが、私が「子供が立つ為に、歩くため、しゃべるようにするためにしたこと」がまさにこれです。

これができたら体をちゃんと動かせるようになっていくので、そのあと「体の動かし方がやはりうまくいっていない場合にできる硬さをストレッチで撮りましょう」というステージに上がれます。


背中とお尻と肩のストレッチで全身をほぐす!


それがこちら。背中のストレッチを一番最初に行います。これが基本!

まず台の上に寝ます。

そして足をもう片方の足の上に載せて交差させます。

このときにできるだけ台の端っこに寄って、お手伝いをする人がこのような形で立ちます。お手伝いをする人の人数とやり方で大勢はどんな形でもいいと思います。やりやすいようにやってみてください。

この体勢からストレッチをスタートさせます。赤い線をひいていますが、これは背骨の横の盛り上がった筋肉の部分です。

足を交差させたときに上になるほうと逆の方を軽く押します。

硬くなっている筋肉は触ったらわかると思います。

そしてさらにこの状態で上になっている方の足を左右に動かします。筋肉の硬さによっては交差させて上になっている方の足と同じ側を押すほうがいい場合もあります。お手伝いをされる方と施術を受ける側の相性もあるので様子を見ながらやってみてください。交差した足と反対側の方を押すほうが苦しいはずです。背中の筋肉は片側ずつは動きません。必ず左右一緒に動くのでどちらを押してやるかは、様子を見ながら力のいれ具合を含めて考えるべきです。みんながお互いにやりやすいほうを選ぶので良いと思います。

お手伝いをしている人が自分の足を動かすと楽にできると思いますがうまくできない場合はもう一人の人に手伝ってもらってもいいです。人でやると足を動かす係と脊柱起立筋を押さえる係に担当を分けると楽にできると思います。

これが「背中のストレッチ」です。

これを終えたら今度はお尻のストレッチに行きます。

このように足を片方ずつ反らせます。自分ではできないと思うのでお手伝いの人が後ろに座って足を持って引き上げてあげてください。

その時緑の矢印の方向に少し引き上げるようにしてやると効果がありますが、とてもつらいと思うので手加減をしながらゆっくりとやりましょう。

えいやっと強い力をかけると逆効果です。「この程度でいいの?」と思うくらいやんわりとした動きで十分です。

このときこの画像の赤い線の位置を指で押しながら足を引き上げると効果が高いですがおそらく悲鳴を上げます。無理は禁物。

押す場所はここ、上げている足と同じ方を押して

背中をほぐしたら今度は手足を反らせる動きをすると背中だけではなく足も手もよく動くようになります。最初は足を交差させましたがお尻のストレッチは足をまっすぐにした角度でそのまま反らせることが大事です。できる範囲でいいのでこれを行います。

お尻の一番下のしわのあたりをグリグリするのが一番効きます。「いいいいいぃぃぃぃっぃぃ!」という声が出るほどですが、少しずつやんわりとしていくのがいいです。


次が肩のストレッチです。
まずはうつぶせで寝た状態で両手をまっすぐ万歳するように伸ばした後、肘を90度曲げてそのまま頭の後ろにもっていきます。反対の手はできるだけまっすぐ万歳した状態で。結局このポーズは何かというと反らせているんです。下半身を反らせたときと同じで上半身も反らせます。

そしてこの図の赤い部分をお手伝いの人が押しながら、ゆ~~~~っくりと反らせて行きます。

一気に反らせたら意味がないですから、できるだけゆっくりと。肩甲挙筋が劇的にほぐれて腕と肩甲骨がよく動くようになります。

肘は90度曲げた状態で、ここから手のひらを顔の表面と平行にするか垂直にするかで変わりますが、親指の方向でも変わります。親指が足元を向く方向で背骨と平行になるように向けてから、後ろ側に腕を反らせます。これで肩甲骨がしっかりと動くようになります。

身体が硬い状態にある人にとってこの3つの動きは結構キツイはずです。特に麻痺がある人には衝撃的な動きですが、私の子供は「気持ちいい!」と言って喜びます。小さい頃にはこういうこともできませんでしたが、今はある程度身体が育ってきたのでできます。

私もこのストレッチは大好きです。嘘のように身体が動くようになるからです。

できれば普通の人でもアイスクリームなどの冷たいものを食べて口の中を冷やした後にこのストレッチを受けると効果が高いです。ストレッチ専門店に通っている時も同じフロアの別のジェラート屋さんでダブルジェラートを一気にかきこんでから施術を受けています。



自己治療の方法を探す旅

私は子供が脳性麻痺だとわかって1年半後くらいからずっと整体院の内弟子のようなことをして、仏壇やトイレ掃除をしながら秘伝の技を習ってきました。

その先生は高齢で私の子供が成長して施術が必要になるころにはお亡くなりになっているに違いがなかったからです。先生から「いつでも遊びに来なさい」と言われるようになり、1か月に2~3回は習いに行っていました。ひたすら先生の講義をメモしまくる日々。

その時よく先生が「人間は胴体に2本の手と2本の足、そして頭が付いた動物なんです。そのことの意味がよくわかるようになるとなんでもわかる。人の身体におこる不具合は手足の末端に現れやすいけれど本当の原因がそこにあるとは限らない。だからこそ治療はそこでは行わない。それは人間が胴体に対して手が2本足が2本頭が1つ生えた動物だからです。このことの意味をよく考えて自分でわかるようになって。教わるのではなく自分でわかればあなたなら何でもできるようになるはず。よく考えて、習うのではなく自分で見つけて欲しい。何度でも僕は言うよ、人間は4本の脚ではなく手と足が2本ずつなんです。そして足で立って手は床についていない。だから人間の身体はゆがむんです。その歪みが内臓に負荷をかけて病気を作る。内臓の病気は姿勢で予防も治療も可能だけど手足が痛いというのであれば、治し方は簡単です。あなたはよく考えて、僕が教えたのであればあなたはきっとこの技術を使えない。自分で見つけて欲しい。そうすればこれはあなたのものになる。」と言われていました。

全く同じ内容を30回も40回も言われました。そのくらい言われても当時の私には何のことだかさっぱりわからなかったんです。

人間は胴体に対して4本の脚ではなく手と足が2本ずつに頭が付いた構造をしているから病気や痛みが生まれる


でもその先生は今年に入ってから完全に失明し認知症状が出てきました。このころから私は焦り始めました。先生が施術できなくなれば頼れる人がいなくなる。頼りになるのは習ったことを自分自身で使っていくしかない。

私は必死に言葉の意味がどういうことなのか考えましたが、壊滅的に整体のセンスがありませんでした。

そこでかわりにストレッチ屋さんの店長さんにお願いして私の知る限りの知恵を伝えました。その店長さんはとても論理的で賢い人だったのですぐに理解してくださいました。

そこで私がお願いして試しにやってみたことがこの3つのストレッチです。

「硬い手足、硬い全身」がなぜ硬いのかは「背中が硬いからだ」という前提で行うものです。

私がふくらはぎが硬くて太くて大根脚なのも、腱鞘炎で肩こりがひどくてばね指でいつも手が痛いのも、目が疲れやすくて頭痛がするのも、胸が垂れているのも便秘がひどくて腰がだるいのも生理痛がひどかったのも、足が偏平足で外反母趾なのも、O脚なのも全部背中が硬いせい!!!!

これは正常に大人になった私に起こる不具合ですが、脳性麻痺の子供の身体と余計にこれが顕著でありとあらゆる不具合につながります。二次障害にありがちな尖足も側弯もそうですが「立てない」ことも「ちゃんと歩けない」と言うこともすべて背中に原因があります。

この背中の硬さはいつどこで発生するかと言うと、「夜寝ているときに横向きで寝た状態」で作られます。横向きだと自分の身体の重みでぐにゃぐにゃと身体がゆがみます。このときに筋肉は緊張します。この緊張の時間が寝ている間中起こるのでかなり長い。だから抱き枕の上に片足を乗せて寝るようにすればこのゆがみは起こりにくくなります。当然筋肉のハリも減るので楽になります。

U字がいい理由は寝返りを打ってもどちらにも枕があるからです。I字の抱き枕だとそのまま放置してしまったりしてうまく使えません。

子供が小さいうちは親が小さめのクッションなどを使って補正していましたが、この枕が使えるくらい身体が成長してからはずっと使っています。とても良いです。

それでも歪みはできて背中の筋肉は硬くなるので、この3つのストレッチをしてやります。腕も足も動きやすくなります。


整体の先生はよく「体のゆがみとるのにストレッチはいらないよ、マッサージもいらないよ。よくよその医院では時間をかけてそういうことするけど、僕がやってるやり方なら20秒くらいでいい。30分も40分も一人の患者さんに時間をかけるだなんて僕には本当に信じられないよ。自分が疲れちゃうよね?一人3分以上絶対かけないよ、僕」と言われていたのですが、それができるのは超人的な計算能力があるAI並みの知能を持った人間だけです。私は先生に治療の理論を余すところなく教わりましたが全く計算できずに挫折しました。そんな魔法使いようなことができる人は地球上をいくら探しても1人か2人いるかいないかです。

だから私にはこのようなストレッチの方法を考えるしかなかった。

でもこの3つのストレッチは間違っていないと思います。



胴体に手と足が2本ずつに頭が付いた構造の人間が2足歩行をしているから不具合が出るなら、治療は胴体の背中側で行う。そして逆に病気を作りたいなら腹側で行う。

これが私が出した答えです。




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