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癌と脳性麻痺のつながり

私が「鳥取県の三朝温泉は低緊張型の脳性麻痺に効果があるらしい」と知ったのは生後1年半くらいの頃でした。

三朝温泉はラドン温泉です。低用量放射線にホルミシス効果があるので脳性麻痺にも良いと言われていたのです。

試しに行ってみると、子供の状態はガラリと変わりました。普段よりも元気で本当に明るく活動的になりました。声も少しずつ出すようになりました。

常連のおばあちゃんたちにも可愛がられていたので本人も家にいるよりはずいぶん楽しかったと思います。2度3度と通ううちに体もしっかりとしてくるようになり、温泉にいるときは立ち上がって「パッ!」と言いながら手を上にあげて1秒~2秒は何もつかまらず立つことができました。

しかし帰宅するといつも通り座位もまともに取れないのです。シャフリングくらいしかできなくて、つかまり立ちをしても足を痛がる我が子がなぜ三朝温泉に行くと一人で立ち上がれたのか不思議でした。

そこにいるときだけできて、帰るとできない。いっそそこに移住してしまおうかとも思いましたがなかなかそれも難しい…。

悩みながら通っていたら、三朝温泉の常連のおばあちゃんたちがたくさんのことを私に教えてくれました。

「私は孫とひ孫が全部で17人いるのよ。そのうち2人が脳性麻痺だったの。多いと思わない?1000人に数人っていわれてる病気がうちには2人よ?しかも私も癌でここに湯治に来ているわけだし、私の親も兄弟も親戚も皆癌でね。完全な癌家系なのよ。だからね、私は癌と脳性麻痺は何か関係があると思ったのよ。子供の脳性麻痺と大人の癌は同じよ。きっと同じ病気よ。だからあなた自分の子供を治したいと思うなら、癌を勉強なさい。これは絶対に間違いがないわよ。」

彼女はさすがに経験者だけあって脳性麻痺の子供の扱いがとても上手でした。タオルのたたみ方を教えてくれたり、ボールの蹴り方を教えてくれたり。療育では一切やらなかったこともおばあちゃんが教えてくれたらなんでもできるようになったんです。

自分の療養に来ているのに私の子供の世話ばかりしてくれていた見ず知らずの老女が真剣な顔で言った「大人の癌と子供の脳性麻痺は同じ」という言葉は、その真剣な表情から「かけがえのない大切なことを教えてくれている」と私に自覚させるのには十分でした。

ほかのおばあちゃんたちも皆よくしてくれました。長期授乳が効果があるということを教えてくれた脳性麻痺の子供のお母さんもそこに癌で湯治に来ていました。何気ない話の中でたくさんのヒントがありました。


湯治宿で暮らす中で、私は1つ気にかかることがありました。


そこでは癌患者さん同士よくケンカをしているのです。

ある肝臓がんの男性は「こういう風にしたらよくなったよ」と言って、玄米菜食の食事方法をほかの患者さん達に伝授してました。すると毎回乳がんの患者さんがまるで目をキラキラと輝かせながら話を聞いて、素晴らしい素晴らしいと言って仲良くなるのです。

それなのに同じ肝臓がんの女性の患者さんは「お前の言うことは違う!言うことを聞いて食べたらひどい目にあった!全然効かないことを人に言うな!迷惑だ!ほかの人たちも皆、こんな奴とは口をきくんじゃない!」と言って怒鳴りまくっているのです。当然玄米菜食で効果を感じてきた肝がん男性は反論します。そこに乳がんのおばちゃんたちが参加して喧々諤々。とにかく最初から答えのない問いのように見えていた菜食主義の喧嘩も、胃がんの男性患者さんが登場するとさらに支離滅裂になります。

胃がんの男性が奥さんと来ていた場合、奥さんが癌ではない人であれば何も問題がないのですが奥さんも癌で乳がんや子宮がんであったら夫婦で喧嘩を始めるのです。肝がん男性が伝授する玄米菜食を乳がんの奥さんが夢中で効いて「本当に楽になりました~♡」などと言おうものなら、胃がんの男性が「ふざけんな!なんであんな奴の言うことを聞くんだ!いい年をして!色目を使いたいのか!あんなやつに!あいつの言うことなんてでたらめばっかりだ!それなのにお前は!」と言い出すからです。一体何十回このパターンを見たことか。毎日のように似たりよったりの喧嘩が始まるのです。

玄米菜食が本当にガンに効くか効かないかという問題で肝がん男性と乳がん女性が結託して肝がん女性と胃がん男性がそれを否定する。

このパターン以外で喧嘩はほとんど起こっていませんでした。たまにゆっくり静かに一人で湯治をしたい人に熱心に話しかけたい人が絡んで喧嘩になる程度で、普通は湯治に来てわざわざ他人と喧嘩なんてしないですよ。皆体調が悪いんですから。

それでも、

「肝がんの男性は乳がんの人と同じ食事でよくなったと言って仲良くなりやすい」
「肝がんの男性と肝がんの女性は同じ食事では正反対の反応が出る」
「胃がんの男性と乳がんの女性は玄米菜食を食べると女性は良くなるが男性は悪くなる」

という法則があることを、彼らの争いの中から私は発見しました。

人は病気になったときに食べれば良い食べ物がみんな違う。そしてそれをまた人類は正しく知らない。それ以前に元気なときですら自分は何を食べれば病気にならずに済むのかということすら知らないんです。

次第に私は誰がどんなものを普段食べてきてどこの部位に癌ができて、治療開始後にどんなものを食べているのか、そしてそれはどのような効果があったと本人が自覚できたのかということについて聞くようになりました。

それで癌患者さんが行うべき食事療法は「最低でも3種類ある」とわかりました。

肝臓がんの人は肺がんと皮膚がんの人と同じグループに含まれると予測できました。ザックリと分けるなら脂肪の多い場所で起こる癌はすべてここに含まれます。脳腫瘍もこちら側です。そして男性と女性では全く別です。同じ部位に癌ができていても性別によって食べてよい食材は変わるのだと思いました。

胃がん・大腸がん・食道がんのような消化器系の癌は肝臓がんとは対極にあるような気がしました。消化器系の癌に加えて、乳がんや子宮がん、前立腺癌もこれに含まれます。当然こちらも性別でさらに2つに分けられるので、合計4つのグループが成立していました。

こんな感じです。

問題は発症前についてです。発症前と後で女性の場合だけ食べて良いものが変化するのだと思います。

「どうして胃がんの旦那さんの奥さんは乳がんの人が多いのか?」という疑問は最初からありました。奥さんが食事に気を配ってる家庭ほど一緒に癌になっているんです。奥さんが食事に気を配っていない場合は旦那さんだけ癌になっていることも多かったように思います。なんだかそのことがモヤモヤしました。常識から言うとちょっと逆ですよね?

よく癌の患者さんは「どうして自分は癌になってしまったんだろうか?自分が生きる意味とは何だったんだろうか?何を悪いことをしたからこうなったのだろうか?」という葛藤の末に「暴飲暴食をしていた、好き勝手においしいものばかりを食べていた。」「健康に気を使っているつもりだったがぜんぜんできていなかった」などと考える人が多いように思いました。

あちこちで「何を食べている」「こんな変わった食事方法がある」という話題でもちきりでしたが、癌ではない私はなんだか不思議な気持ちでそれを聞いていました。

私は中学校の時の部活が統計部でした。当時全く勉強もしなかったし部活動の日に出ても漫画ばかり読んでいた不真面目な部員でしたが、大学ではマーケティングを専攻していました。延々と人の話を聞きながら情報をまとめ上げることが楽しくて仕方のない人間です。

癌ではない私が人一倍癌について考え話を聞いているのは不思議な感じです。患者さんたちもまた違った意味で不思議な感覚にとらわれていたと思います。お互いに妙な雰囲気のまま他人には言わないようなこと、家族ですら言わないようなことを何でも話してくれました。人前では気丈にふるまっている人でも私には弱音を吐いてくれたりもしました。

ある時「夫婦で同じものを食べていたから二人とも癌になった。これからはまともな食事に変えて行きたい」と言っているご夫婦がいて熱心に湯治をしながら食事を作っておられました。最初は仲のいいご夫婦でしたが、そこで教わった食事を始めるようになるとだんだんと距離ができてきたというか、旦那さんは無口になっていきました。

その旦那さんが急に話し始めました。

「それでも玄米を食うと、俺は胃が痛くて仕方がないんだよ。白米のおかゆや餅を食うとそうでもないのに。玄米はほんとうに腹がいたいんだ。お前は平気かもしれないけど俺はつらいんだよ。前みたいにお前が作った普通の飯が食いたい。魚の煮つけもうまかった。天ぷらだっておいしいよなぁ。お前は健康に気を使ってくれていたからあれがダメなようには思えないんだ。だってお前は栄養士じゃないか。学校で給食を作ってたようなお前が作る飯の一体どこが悪かったって言うんだ。献立も若い頃から一生懸命考えてくれて。本当にどんな飯も、十分うまかったよ。どうせ死ぬならあのうまい飯を食って死にたい。うまくもない玄米を食って長生きしたって仕方がない。でもお前は玄米で楽になったって言うし、一体何なんだろうなぁ。長年いっしょに暮らしてきて、こんなにお前のことがわからないと思ったことは初めてだよ。ずっと仲が良かったじゃないか。一緒の時期に癌になって、死ぬ時も一緒かと思ったけど違うんだなぁ。」と涙ぐんでいたんです。

私はその言葉が妙に引っかかっていて、忘れられなかったのです。


2つのグループ×性別×状態=8枠

糖鎖を勉強するようになって、彼らの言葉をすべてかき集めて考えてみると1つの図式が生まれます。

脂肪系の癌になる人と粘膜・ホルモン系の癌の人が食べてもよい食べ物は根本的に違います。それはレクチンを摂取できるかどうかで変わってきます。

「糖鎖」をベースに考えると「肝がん系統の人はレクチンを食べたほうが元気だし、むしろ食べないほうが病気になる」と言えるし、「胃がん系の人はレクチンを食べさせしなければ病気にならなかったのに、食べてしまったから病気になった。そして治したければ食べなければいいけど現代の日本人の食生活ではなかなか難しい」とも言えます。

胃がん系統の女性の場合は発症する前は食べないほうがいいけれど、発症してしまったら食べたほうがいいし治ったら食べないようにすれば再発しないけれど、治った時に良かった食べ物を予防的な意味合いで食べ続けていると再発しやすくなる」というようにも考えられました。

肝がん系統の人がレクチンを食べられるということは、コラーゲンを作るのがうまいということです。見た目にも肌がつるつるピカピカしていて髪の毛は太い人が多いですが年を取ると薄毛になる傾向があります。骨太で関節の大きい人が多く筋肉が付きやすいのでスポーツをやっている人も多いです。話を聞くと高血圧で糖尿病や脊柱管狭窄症を発症している人も多いのです。

胃がん系統の人は冷え性で腎臓炎や膀胱炎になりやすく、エラスチンとコラーゲンの生成と代謝が苦手なのでシワが多くて肌がカサつく印象です。血栓ができやすく、胃弱でストレスに弱いです。低血圧で朝起きるのが苦手。生理痛が重かったり不妊症や流産を繰り返す女性や下腹膀胱系の病気になりやすいです。

純粋に数だけでいうなら、肝がん系統の人よりも胃がん系統の人のほうが日本人は多いはずです。日本人は世界的にみると糖鎖に関しては貴種です。

例えばインド人は98%くらいの人がレクチンを取ったほうがいいタイプなのでセリ科キク科の多いスパイスを使ったカレーをよく食べます。そうではない体質の人は長年の食生活で淘汰されてそれに強い遺伝子を持つ人だけが残りました。

日本人の昔ながらの食事は魚を中心に、生野菜は食べずに漬物などにしていた。アク抜きの技術を高めて食べられないものを食べれるように発酵食品を作る技術が向上した。私の言う生体異物除去食は江戸時代前期くらいまでの日本人の食事です。日本人は自分たちが生き残るために生体異物を含む食材を食べれるように加工し、食べれないものはとことん食べずに生きてきたのに明治以降海外の食生活でに慣れていく過程で、これらの見分けがつかなくなってきたのだと思います。だって普通の人にとってはレクチンは食べてすぐ倒れて死にかけたりするようなシャープな効き目の毒ではないので気づかないですよね。生まれつき病気の子供にはかなりパンチの効いた毒ですが。


でも考えてみてください。

「頑張ってレクチンを食べなければ病気になる人」は食べていなければ病気になりやすいのですから、このタイプの人が病気になれば治ったときに野菜が大事だよと声高に言います。実際に効果を実感しているのですから。トマト、玄米、豆乳、ゴマ、ヨーグルト、青汁、肝臓水解物、クロレラ、アカモク、酵素ドリンク。世の中の体に良いと言われている食材はすべて彼らにとっては紛れもない薬です。中国では体の悪い部分と同じ部位を食べると良いという同物同治という考え方があります。肝臓が悪いならレバーを食べ、心臓が悪いならハツを食べろというものですが、レクチンを必要としている人にとってレクチンを多く含む部位を食べろというのはとても理にかなった言い方だと思います。

人数は少なくても日本人にも1割程度はいるわけですから効けばその情報は広く伝播します。そして海外の人はもっと大勢いるのですからその情報はあっという間に常識になります。

「レクチンを食べなければ病気にならない人」がどんなに大勢いても自分がそうなのかどうかはわかりません。病気になりたくない胃がん系統の人は良かれと思って予防的に野菜を食べる、意に反して病気になります。

皆自分が何を食べて生きていけばいいか知らず、病気になるまでそれがあっていたかどうか分からない。そして持って生まれたグループはあれど、食べたものによってはグループが移動し体質が変わります。違うグループを行ったり来たりしていると発がんする場所も変化し、それは転移という形で収集をつけるのが難しくなります。


肝臓がん系統の女性だけはまだわからない

ただ困ったことに肝臓がん系統の女性に関してだけよくわからなかったのです。理由は、転移するスピードが速く、違う系統のグループの癌を発症する人も多く、なおかつ早く死亡する人が多いため話を聞けるチャンスが少なかったのです。痛みを伴う病状の人が多いのであまりあちこちに出て歩きたがりません。そしてラドン温泉で効果を感じた人は常連になって何度も通うので話をしやすいのですが、肝がん系統の女性は効果を感じない人が多くて湯治を続けなかったり、続けていても治ると思っていないというかリラックスのためだけに来ている人が多いのであまり病気について語ってくれる人もいなかったのです。状態が悪い人ほど昔から何でも食べていたという人が多いのです。肝がん系の男性は逆で野菜が苦手で食べなかった人が発症していることが多いのに、女性は食べた人程発症している。

肝がん女性の食事療法の解明については私のこれからの課題です。


私がもしお医者さんで毎日のようにいろんな患者さんを見ていたら、こんなことには絶対に気づいていないと思います。湯治場は特殊な場所です。一緒に食事を作り風呂に入り並んで寝て話をし、笑って泣いて励まして共に生き、そして旅立ちそれを見送る。そんな生活の中で私はいくつかのヒントを得ました。

そこに集まる人が私に教えてくれることはすべてではないにしろ、いくつかの真実がありました。

観察すればするほど私の子供との共通点が見えてきたのです。

がん患者さんの症状と食事の一部は確かに脳性麻痺の子供のものと少し似ていて、症状の度合いの違いがあるだけで基本的な部分は同じだったんです。

あのおばあちゃんが言ったとおりでした。


脳性麻痺と癌の共通点

低緊張型脳性麻痺の私の子供も私も子供の父親もその家族も皆レクチンが食べられません。

私の祖父は胃がんですし、母も祖母も乳がんでした。腎盂腎炎や膀胱炎などの下腹膀胱系の病気が多く肌はかさついていて白髪が多い印象です。完全に右側のタイプ。

以前「女性の低緊張型脳性麻痺の場合は更年期を境に痙直型に変化する」という記事を書いたのですが、「低緊張でなくなったら生体異物除去食をやめてレクチンを逆に取ったほうが良い時期が来るのではないか?」と考えていたことにもつながります。

もちろん食べ物を変えるだけでは完全に治りません。薬で誘導することは必要です。ですがその他の薬物療法を成功させるには食事でベースを作ることは必要不可欠です。アンドロゲン補充療法だって食事で整えていなければ失敗に終わります。


玉川温泉への誘い

モヤモヤとしたものが形になり始めていたころ、あるおばあちゃんにこういわれました。

「癌の患者はね、玉川温泉か三朝温泉に行くのよ。ほかにもラドン温泉はあるけどこの2つが人気よ。三朝で効かなかった人は玉川に行くといいっていうわよ。ちょっとタイプが違うのかもしれないわねえ。本気で治したい人は玉川に行くことが多いの。こっちはのんびりやりたいって言う人が多いと言われてるけど、どうかしら。でも余裕があるなら一度行ってみるといいわ。だってここよりもたくさんの人が来ているから、あなたにとって何かヒントになるものを見つけられるかもしれないじゃない?」

同じように玉川温泉を進めてくださる方は大勢いたのですが、私はなぜか腰が重くて確信をもって東北に行くまでにはそれからかなり時間がかかりました。

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