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「責任」という漢字から感じるもの

題名が、ダジャレみたいになっておりますが、内容は至って真面目です。

私は「責任」というものに、何だかネガティブなイメージを持っている。
その悪いイメージの正体は、おそらく漢字に原因があるのではないか。
この漢字から自分が抱く違和感を紐解いていこうと思う。

そもそも「責任」とは何かと言われると

せきにん 【責任】
① 自分が引き受けて行わなければならない任務。義務。「―を果たす」「保護者としての―」
② 自分がかかわった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務や償い。「―をとって辞職する」「だれの―でもない」「―の所在」「―転嫁」
③ 〘法〙 法律上の不利益または制裁を負わされること。狭義では,違法な行為をした者に対する法的な制裁。民事責任と刑事責任とがある。
出典:スーパー大辞林

確かに、「引き受けて行わなければならない」ものだし、「義務」というのしっくりくる気がする。
改めて辞書を引いてみても、意味がやっぱりネガティブなイメージ。

では、この義務感というのはどこから来ているかと考えると、
「責」という漢字にあると思う。
漢字を上下に分けた上の部分を使う漢字は「毒」や「害」など、これまたマイナスのイメージ。
どちらの漢字も刺すイメージ。「毒」は一説には、髪飾りをたくさんつけすぎている女性の姿。「害」は祝詞を針で刺して祈りの効力をなくすとの意味とも言われている。
では、肝心の「責」を漢語辞典で引いてみると

字解:貝+主(=とげでさしせしめる)。金品をせめとる。せめる意。
意味:❶せめる。とがめる。また、もとめる。❷せめ。担わなければならない任務、義務。
出典:現代漢語例解辞典 第二版 小学館

こちらもかなりネガティブ。もう金品をせしめとるとか言っているし…
任務に対してとがめられる立場ということだろうか。
紐解いてみると想像以上に暗い印象。
重たい何かを背負っているという語感が、「責任」というものを暗いものにしている正体なのではないか。

視点を変えて英語からのアプローチを考えると、
「責任」は英語では「responsibility」。
この単語は「response(応答する)」に由来する言葉とのこと。
では、何に応答するかというと、きっとキリスト教的な「神」だと思う。
「神」への応答。
自分と神と交わされる対話による約束をきっちり果たす。
もし、そうだとすれば、漢字よりもボジティブなイメージ。
より「個」が強調される。

比較して感じることは、
漢字は社会や多数のものへの責務。
英語は個と個での約束。

漢字のほうが、強制されているような印象。

やはり、「責任」を漢字で現した際の、重いものを担う、強制されているような語感が、私のこの漢字に対するネガティブなイメージの原因だと思う。

自分の思う違和感を掘ってみると意外に面白い発見であった。
確かに「責任」というものは、重く辛いものかもしれないが、それを担えるということは必要なことだと思う。
個人的には漢字の語感より英語のほうが好きだが、漢字は変えられないので仕方がない。
漢字、英語の両面の意味を理解して、責任を全うできる人でありたい。

〈参考文献〉
白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい 小川鉄郎 著 監修・白川静 新潮文庫
白川静さんに学ぶ 漢字は怖い 小川鉄郎 著 新潮文庫
「利他」とは何か 第4章 中動態から考える利他-責任と帰責性 國分功一郎 集英社新書

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