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ソウルで補身湯を食べる

(本記事は通常日本の食文化では扱わない肉類を食べることに関する記事です。そのような食文化に対して忌避感を覚える方、あるいはそのような文化に対する攻撃材料を探しているような方はお帰りください。)

突然だが読者諸君、十二支に出てくる動物を食べつくしたいと思ったことはないかい?
私は常に思っている。人生の楽しみの3分の1くらいは食べることだと思っているので、美味しいものにかぎらずStrangeなものもどんどん食べてこその人生じゃないだろうか。

ということで十二支の動物を食すことの(独断と偏見に基づいた個人的)難易度をまとめてみた
S 寅 辰
A 子 巳 申 戌
B 卯 午 亥
C 丑 未 酉

低い方から順にCは身近なスーパーでも手に入る肉、Bはしかるべき店に行けば日本国内でも食べる機会があるような肉、Aはしかるべき国に行けば食べる機会があるような肉、Sはそうねぇ…

Sに置いたが辰=dragon=オオトカゲ(英名通称でドラゴン)と見なせば食べること自体は不可能ではない。というか筆者自身アフリカ某国でナイルオオトカゲを食したことがある(白身が中心で大変美味でした。)

と色々と前置きを書いたが、本記事における主題はAに位置付けた動物の肉をソウルの片隅の食堂で食べようというお話である。
ソウルオリンピックが一つの契機であったが、近年この食文化に対する風当たりが強くなり、特に若い世代を中心に忌避感が強くなっていると聞く。

たとえばこの記事では、この肉を扱う市場が消えていき、じきに食べられなくなるだろうという見立てが述べられている。
韓国でこの食文化を味わうことができる期間はもう長くはないのかもしれない。

2023年12月下旬、筆者は以前から目を付けていたソウルの食堂へこの肉料理を食べに訪れた。この店に来たのは2回目だが、前回来たときは店の前にハングルのほかに漢字で書かれた看板が掲げてあったが、今はハングルで補身湯(보신탕)と料理名が書かれているだけである。ここ数年の間でもさらに風当たりが強くなったのだろうか。

アンニャハセヨと挨拶しながら食堂に入る。店を切り盛りしているのは年配のご夫婦とその娘さんであろうか、韓国ではよく見るスタイルの食堂である。メニューは基本的に補身湯だけである。補身湯一人前とチャミスルを注文する。
キムチやその肉を煮たものなど、韓国料理定番の前菜をいくつか並べに来た娘さんと少し会話する。筆者が外国人と察したのだろう、よく来たねと控えめに歓迎してもらえるのが嬉しい。

SNSをちまちまと更新してる間にメインの補身湯が運ばれてきた。匂いはそこまできつくない。つけあわせとしてテンジャン(韓国みそ?)とショウガも添えられてきた。

様々な香辛料が加えられている。おそらく肉のくさみを消すためだろう。あいにく筆者はそこまで料理に対する造詣が深いわけではないので、何の香辛料が使われているかを認識できるほどの舌を持っているわけではないが、全体として非常にバランスが取れた濃いめのスープとしてまとまっていると感じた。わざわざ食べにきたのになんだが、肉自体はそこまで特徴のある味をしているわけでもなく、硬めで噛み切りにくいといったところか。強いて言えば熊の肉に似ているといえるかもしれない。

会計は21000ウォン(おおよそ2200円ほど)であった。チャミスルも合わせてなので、そこまで高いわけではないかと感じる。
ちなみにこの補身湯という料理、男性の健康とスタミナのため(すなわち精力剤)という意味付けがあるらしく、店内は中年男性ばかりであった。おそらく女性旅行者が訪れたら浮くんじゃないかと…。

さて最後に読者諸兄の最大の関心事、いったいどこに行けばこの肉をたべられるんだいというお話を。店の場所は多少というかかなりセンシティブな面もあるので通りの名前だけ置いておく。食べたい方はぜひ探してみてほしい。

さて最後の最後に記事の最初の話題に戻って、筆者はこの肉を食べたことで、十二支のうち寅と子以外はすべて食すことができた。現実的に寅は難しいのであとは子だろうか。 
十二支に限らずゲテモノStrangeな肉たちをもっと色々と食べたいものだ。

ではでは

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