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ガラスの城壁

小説を読むと、つい裏テーマというか、作者からのメッセージはなんだろうと考えてしまう。

国語の授業だと、現代文では作者が言いたいことを答えましょうという問いをされることが多い。
でも、小説・物語の授業だと主人公の気持ちを考えることはあっても、
作者が込めたメッセージを考えることはあまりないような気がする。

ある日、ジブリ映画には、深い裏テーマがあるということを聞いた。
(自分はジブリに詳しくない。まともに見たのはハウルの動く城くらい。)
このことを聞いて、もしかして小説にもあるんじゃない? と思った。
そこから小説を読むときは、時代背景とか時事とかに関連しているのではないかと考えながら本について考えるようになった。

今回は神永学の「ガラスの城壁」について読了の感想と自分なりの考えを
書いていきたい。

1.あらすじ
  冤罪によって父親を失った主人公。事件を境に学校では孤立していた。
  そんな主人公の生活を一変させたのが転校生の存在であった。
  転校生の登場により、学校生活が楽しいもの変化しただけではなく、
  父親の冤罪に立ち向かっていく決心をする。
  立ち向かっていく中で、人間として成長していく。

2.考察(ネタバレ含みます)
(1)タイトル
 
ガラスの城壁というタイトルは登場人物の心を表しているのだと考える。
 心は、すべてが他人に見えているわけではない。
 他人に知られたくない部分もある。隠している部分に他人が踏み込むには
 相手の許しがなくてはならない。そんな部分を高くて敵から自分を守る
 表現として城壁という言葉が使用されているのではないかと考える。
  一方で、ガラスという部分は壊されやすい、脆いというニュアンスで
 使用されている。登場人物の共通して、弱い部分が描かれている。
 心の固くて知られたくない部分と弱気部分が対比されたタイトルとなり
 作品を表現している。

(2)幻覚の表現
 
物語の中には主人公が幻覚を見ている場面がある。
 今まで信じてもらえなかった経験から、自分をどんな時も肯定してくれる
 幻覚の存在は力強い希望として物語は進行していく。
   幻覚とともに戦っていくことで、自分の強みなどを発見させるだけでなく
 自分とはどんな人間なのかを模索させる表現である。
 この作品の幻覚は、見方も敵も現れる。見えない陰に恐れる部分と
 友達として今までの周りの人間とは違ってよくしてくれる友達。
 主人公はこの幻覚とどう向き合っていくのかが成長のポイントとなる。
 セリフや行動でストレートに表現されている。

(3)大人と子供の比較  
 
主人公を支える大人が一人登場する。親ではない。
 父の事件を知り、関係している大人である。
 大人の存在は子供の道しるべとして出てくることが多い。
 しかし、今回は道しるべとしてだけではない。
 大人でも悩み、時には本質を見失い、過去を悔やむこともある。
 悩む姿や、悔やむ姿は主人公の手本となり、また、大人も子供の成長から
 新たに学ぶ。
 正解を見せるだけじゃなく、成長を促す大人の姿が描かれている。

3.まとめ
  今回は対面で陰口を言われたりしていることが多いが、SNSでの誹謗中傷も
 同じようなものだと思う。幻覚が見えるほど追い込まれた主人公。
 容赦なく心無い言葉を向ける周りの人間。表現は違くても、このようなことが問題になっている。自己防衛の正解が自殺とは思わない。しかし、大人でも子供でも、だたひとり味方になってくれる仲間がいれば、強くなれるんだというメッセージなのかもしれない。
立ち向かうきっかけになる物語になるかもしれない。
  

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