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読書メモ ScrumMastery 2章 ENABLING:権限を付与する

スクラムマスターや、スクラムマスターの支援をしているので、改めてスクラムマスター系の文献を調べています。その読書メモを残していきます。

ScrumMasteryでは、偉大なスクラムマスターが持っている特性をRE-TRAINEDで表すことができる。各記事で順番に説明していきます。2回目はは、Enablingを。

  • RESPECTED:尊敬されている
    チーム内でも組織全体でも、誠実であるという評判がある

  • ENABLING: 権限を付与する
    他者を効果的に支援することに情熱がある

  • TACTFUL:機転の利く
    外交的である

  • RESOURCEFUL:才覚のある
    生産性の妨げとなるものを取り除く創造力がある

  • ALTERNATIVE:取って代わるもの
    カウンターカルチャーを推進する用意がある

  • INSPIRING:鼓舞する
    他者に熱意とエネルギーを生み出す

  • NURTURING:育成
    彼らは、個人とチームの両方が成長し、成長するのを助けることを楽しむ

  • EMPATHIC: 共感できる
    彼らは、周囲の人たちに敏感である

  • DISRUPTIV:大変革を起こす
    彼らは、古い現状を打破し、新しい仕事のやり方を生み出すのを助ける

ENABLING:権限を付与する

スクラムマスターは、実行する人よりも、手助けする人の方が多い。スクラムマスターは、何よりもまず、人々がやるべきことをできるように支援するために存在する。
イネイブラー(手助けする人)は、やることを指示されることに慣れていたチームが、自分たちの仕事にオーナーシップを持ち始め、卓越した成果を出すのを見ることに大きな喜びを感じる。
以前は退屈、緊張、暗黙の不信があったところで、創造性、コラボレーション、コミットメントを促進する方法でミーティングを進行することは、満足感さえある。

辞書では、enableという動詞を次のように説明している:
1. 手段、知識、機会を提供する。
2. 実現可能にする

チームの偉大なイネーブラーになるために、スクラムマスターはチームと組織の両方のレベルで障害を取り除く必要がある。
障害を取り除くために、スクラムマスターは組織内で物事がどのように行われるかを理解する必要がある。問題が発生したときに誰に連絡するか、どのチャネルが効果的に解決できるのかを知ることは、スクラムマスター、そしてチームの成功に不可欠であることが多い。

enableという動詞には、肯定的な定義だけでなく、あまり肯定的でない定義がある:
他人の虐待的、中毒的、あるいは自己破壊的な行動を助長したり、支援したりするような振る舞いをすること。

メンバーを「救い出したい」「楽をさせてあげたい」という願望は、高貴で前向きなものであるが、救助することも中毒になりうる。チームを助けることで、チームの自律性や主体性が高まるどころか、スクラムマスターへの依存が高まることもある。これは「白馬の騎士症候群(The White Knight Syndrome)」とも呼ばれる。

スクラムマスターは、ネガティブなイネーブリングの罠に陥ることなく、ポジティブなイネーブリングのスキルを身につける必要がある。

ヒント チームの仕事における最大の不満は何かを調べる。その中から、チームの効果を高めるために削減または除去できそうなものを1つ選ぶ。

ヒント 「バトル・マッピング」を試して、組織の公式・非公式両方の構造、相互作用、力関係、影響力の範囲を地図に書き出す。

ブルズ○ット・ブザー

A good ScrumMaster is wary of influencing the team.
A great ScrumMaster can act normally and know the team will still make their own decisions

良いスクラムマスターは、チームに影響を与えることを警戒する。
偉大なスクラムマスターは、普通に振る舞っても、チームが自分たちで決断することを知っている。

スクラムマスターは、相手の行動に影響を与えたり、相手を特定の決断に導いたり、何をいつ言うべきか、慎重にならなくてはいけない。だから、良いスクラムチームは、スクラムマスターに頼るのではなく、お互いをチェックし合うのだ。

デイリースクラム中にチームがお互いに責任を持つために使っているツールの1つに、ブザーがある。話し手が曖昧すぎたり、詳しすぎたりすると、チームメイトの誰かがブザーを鳴らして話し手を軌道に戻す。しかし、もしあなたがスクラムマスターで、自分の仕事をきちんとこなしていれば、いつかブザーを鳴らされるのはあなたかもしれない。

◎ 信頼できるチーム作り

あるチームは、ブルズ○ット・ブザーをもつ確立されたチームであった。チームメンバーがスクラムマスターにブザーを鳴らしたりすることもあった。そして、新しいチームメンバーがブザーーの扱いを受ける準備ができていないことを認識していた。

いつ発言し、いつ待つべきかを知ることは、良いスクラムマスターが培うスキルだ。

チームのスクラムマスターは、あるメンバーのコメントが曖昧であることに気づいていたが、ブザーを鳴らしたり、公の場で質問せずに、個人的に話をした。定評のあるチームに加わるのは難しいことだ。新しいメンバーが加入する際には、チームの規範や慣習を再検討し、奇妙に思えたり、不適切であったり、説明が必要であったりするような既存の慣習がないかどうかを確認する価値があるかもしれない。チームの構成が変われば、あるチームメンバーとは単純な楽しみや談笑であっても、同じ効果が得られるとは限らないことを常に念頭に置いたほうが良い。

新メンバーは、異なる既存のメンバーとペアを組むことで学習が早まり人間関係が構築されるなど恩恵を受けることが多い。

チームの規範を再検討し、ペアリングのローテーションを確立することでチームメンバーはより早く同化する。やがてチームは、スクラムマスターが何を言っても、何をやっても、全員が完全に普通に行動できる状態に戻るだろう。

お互いに、そしてスクラムマスターとも居心地が良いと感じているチームは、真にハイパフォーマンスな状態に到達する可能性がある。スクラムマスターが、チームが額面通りに受け取れるような実にパワフルな質問や観察を、チームや各個人に投げかけることができれば、チームはそれらを、同様にパワフルな成長のための貴重な反省点として使うことができる。

プロキシの問題点(The Problem With Proxies)

A good ScrumMaster will ensure the team have access to a product owner.
A great ScrumMaster will ensure the team have access to the product owner.

良いスクラムマスターは、チームが1人のあるプロダクトオーナーにアクセスできるようにする。
偉大なスクラムマスターは、チームがどんなプロダクトオーナーにもアクセスできるようにする。

「いいプロダクトオーナーさえいれば、スクラムはうまくいくのに!」このような言葉をチームから聞くことがある。

そこで、アカデミー賞のチームを例を紹介する。このチームのプロダクトオーナーは、「要件はすべてユーザストーリーに書いてある」とか「質問には、スプリントレビューで答えれば良い」といってチームメンバーを遠ざけていて、コミュニケーションが不足していた。

そのため、レトロスペクティブの時間に、チームがプロダクトオーナーにアクセスできないことについて話し合ったが、時間が確保できないということになった。仕方なく、プロダクトオーナーの代理(プロキシ)を立てることで対応した。しかしすべての問題は解決せず。
次のレトロスペクティブの時間には、プロダクトオーナー不在により、どんなコストが無駄になっているのかをチームが持ち寄って話をした。

スクラムマスターと、プロダクトオーナーは、コストを可視化して経営陣に説得した。彼らは、プロダクトバックログの管理で、プロダクトオーナーを助ける人をいれることでスプリント中のプロダクトオーナーの時間を開放し、委任しやすい仕事を手伝い、チームとのやり取りはプロダクトオーナー自身が行えるようにした。スプリント中にコミュニケーションが発生すると、チームとプロダクトオーナーはお互いに信頼し合うようになり、どちらも一人では思いつかなかったような創造的な解決策を生むようになった。

顧客とのコラボレーションの促進

プロダクトオーナーは、組織内外の多くの視点から検討する必要があるため、過負荷になりやすい。プロダクトバックログの管理に時間をかけて、スプリントに参加できないことも多い。そのため、チームが多くの仮定のもと、仕事をすることになる。

プロダクトオーナーの役割は、書面に頼らず、スプリントに会話を持ち込む試みが必要。スクラムマスターは、チームがスプリント中に必要な答えを得られるようにしないといけない。これには、プロダクトオーナーと協力して、プロダクトバックログの項目を改善し、良い関係を促進し、チームがプロダクトオーナーにアクセスするのを邪魔する障害を取り除くことが含まれる。

スクラムマスターが、チームとプロダクトオーナーとの距離を縮めるのに役立つ方法をいくつ紹介する。

ユーザーストーリーと受け入れ基準

スプリント中にプロダクトオーナーが不在の場合、ほとんどのチームはより厳しい要求や委任を試みる。ユーザーストーリーは、会話のためのトークンであり、契約書ではないので、ストーリーに表現されたニーズについての会話が続いて初めて機能する。

プロキシ

プロダクトオーナーにアクセスできないチームは、要件やユーザーストーリーが書かれたカードに頼りすぎてしまい、会話に十分に頼ることができない。

これを軽減する1つの方法は、ユーザーストーリーの推敲を代理人に委任すること。どんなに優秀な代理人でも、プロダクトオーナーが何を望んでいるかを正確に理解しているとは限らないが、他の方法ではプロダクトオーナーの時間を確保できないチームの橋渡し役となる。

プロキシは、理想にはほど遠い。プロキシを割り当てると、プロダクトオーナーが忙しすぎてチームと交流できない理由という真の問題に取り組めなくなる。もしプロキシが使われるのであれば、開発者とのインターフェイスではなく、プロダクトオーナーの作業負荷のこれらの要素を扱うべきである。

プロダクトオーナーはスクラムにおいて重要な役割である。偉大なスクラムマスターは、問題に絆創膏を貼ることを避け、その代わりに真の問題の解決に取り組む。チームがすべての要件を理解していなかったために、ロールバックして作り直さなければならない機能を作成する真のコストを示すことは、プロダクトオーナーがスプリント中にチームのために時間を割くことを正当化しやすくするのに役立つ。

真のプロダクトオーナーだけができること

良いスクラムマスターは、プロダクトオーナーと開発者の間のギャップを埋めるために、彼らが正しい製品を正しい方法で作れるように、可能な限りのことをする。しかし、偉大なスクラムマスターは、仲人や仲裁者、翻訳者になることが長期的に最適な戦略ではないことに気づいている。

偉大なスクラムマスターは、仲介役として機能しないように、どんなことでもする必要があることを知っている。その代わりに、チームとプロダクトオーナーが手を取り合って働けるようにすることを目指すべきである。

寛大になるために利己的になる(Be Selfish to Be Generous)

A Good ScrumMaster Serves Others
A Great ScrumMaster Serves Themselves
So They Can Serve Others

良いスクラムマスターは他人に奉仕する
偉大なスクラムマスターは自分自身に奉仕する
他者に奉仕するために

スクラムマスターはホワイトナイト症候群に苦しむことがある。これは、医療やセラピー、教育、サーヴァントリーダーシップなど、援助的な職業に付く人に説く見られる問題。これは援助者が援助する人を救い続けたいという潜在意識的な欲求である。表向きはポジティブな原動力だが、ヘルパーが必要とされなくなることを恐れて、助けている人を自立できるレベルまで引き上げようとするペルパーの能力や意欲を損なうというネガティブな結果をもたらした。

世界中のスクラムマスターにとってあまりにもよくある話で、チームを助けようとする努力が実際には行き過ぎであり、意図したことと反対のことを達成することもある。この原因は、個人的に持続不可能なペースで仕事をしていることだ。人に何をすべきか指示することは、その人が内省し、自分足りの解決策を見出すのを手助けするよりも早くなりがちである。

チームを助けるために「早い選択肢」すなわち短時間でより指示的なアプローチをとる理由は、あまりに多くのことを引き受けた場合、時間的なプレッシャーや、過剰に人を喜ばせる思いからくる救助要望である。そして、それはホワイトナイト症候群を引き起こす。

もしかしたら、これはスクラムマスター同士で話すことで内省し対処できる場合も考えられる。人はつかれているときにも近道をするので、休息が必要なこともある。他の人なら気づけることが、自分では気付けないこともある。実際に休暇を取ることで、チームはステップアップしていることもある。それは、救助者や保護者のペルソナになっていると、起きなかっただろう。

スクラムマスターは、周囲に「助けを求めることが重要」と周囲にいっているにも関わらず、スクラムマスター本人は、助けを求めることが非常に難しい。その理由は、まわりに自分を強く見せたかったり、面目や尊敬を失うことを恐れている。根底にあるのは、重荷になりたくないという考え方である。

スクラムマスターは、他の人を助けるときには重荷に感じていることは少なく、楽しんでいるにもかかわらず。だから、スクラムマスターに対して、他人を助けることでいい気分になる機会を否定するのか尋ねるのだ。

寛大になり、助けを求める。

「利己的になって、それを提供しなさい。」ロバート・グリーンリーフは何年も前に、サーバント・リーダーシップに関するエッセイの中でこう書いている。

「撤退の術は有用である......撤退して、ほんの一瞬でも自分の方向性を変えることができるということは、重要なこととそうでないこと、重要なことと緊急なことを選別し、より重要なことに目を向けるという、体系的な怠慢の術を身につけていることを前提としている......。適切な撤退によって自分のペースを保つことは、自分のリソースを最適に活用するための良いアプローチの一つである。」

偉大なスクラムマスターは、他の人を助ける前に自分の酸素マスクを装着する。利己的だからではなく、酸素がなければ誰の役にも立たないからだ。

休憩を取る以外にも、スクラムマスターは離脱を実践できる。活力を回復させたり内製させたりは、人によって違うので、実験するのが良い。1時間全てシャットアウトして、何もできない状態にしたり、散歩したり、メールなどから離れて昼食を取るなど。

この役割が考案されて以来、スーパービジョンの実践に多大な価値を見出すスクラムマスターが増え、より明確に他のコーチやスーパーバイザーと関わり自分自身の内製を導くことがある。自分が内省していないのに、他の人の内省を助けられるのか。日誌をつけることも、自分の実践をふりかえる効果的な方法である。

どのような形であれ、自分が説いたことを確実に実践し、燃え尽きるのを避けること。望ましい行動の模範となるよう、自分自身を最適な状態に保つために、少しわがままになりましょう。

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