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読書メモ ScrumMastery 3章 TACTFUL:機転の利く

スクラムマスターや、スクラムマスターの支援をしているので、改めてスクラムマスター系の文献を調べています。その読書メモを残していきます。

ScrumMasteryでは、偉大なスクラムマスターが持っている特性をRE-TRAINEDで表すことができる。各記事で順番に説明していきます。2回目はは、Enablingを。

  • RESPECTED:尊敬されている
    チーム内でも組織全体でも、誠実であるという評判がある

  • ENABLING: 権限を付与する
    他者を効果的に支援することに情熱がある

  • TACTFUL:機転の利く
    外交的である

  • RESOURCEFUL:才覚のある
    生産性の妨げとなるものを取り除く創造力がある

  • ALTERNATIVE:取って代わるもの
    カウンターカルチャーを推進する用意がある

  • INSPIRING:鼓舞する
    他者に熱意とエネルギーを生み出す

  • NURTURING:育成
    彼らは、個人とチームの両方が成長し、成長するのを助けることを楽しむ

  • EMPATHIC: 共感できる
    彼らは、周囲の人たちに敏感である

  • DISRUPTIV:大変革を起こす
    彼らは、古い現状を打破し、新しい仕事のやり方を生み出すのを助ける

3章 TACTFUL:機転の利く

スクラムマスターには、スクラムの原則である「The Art Of The Possible(可能性の芸術)」を体現することが求められる。

チームと組織を前進させるために、一つ一つの状況を良くすると同時に、パフォーマンスを押し上げるために冷酷な決意も求められる。チームや組織全体を変革するには、忍耐と粘り強さが必要だし、問題を解決していくには決断力と回復力が必要である。

この組織は変わらないとか、チームがセルフマネジメントできるようにならないとか、諦めるのは非常に簡単である。

スクラムマスターが役割を効果的に果たすには、ルールを曲げたり破ったりするほどの粘り強さ、論争性、臨機応変さ、機転を利かせることも重要だ。偉大なスクラムマスターは、成功や変化に焦がれる一方、直面する状況に機敏で関係者の行動の結果に配慮する。彼らは、不要な対立は避け、慎重に対立を選んで、ある種の妥協を受け入れる必要がある。


ヒント
進歩の兆候は些細なことでも、メモしておく。全体像が見えなくなるかもしれないが、物事が思うように進まないときのエネルギー源となる。

ヒント
困難に直面したときは、冷静さを保つ練習をする(10数える)

2つのスクラムの物語 (A Tale Of Two Scrums)

A good ScrumMaster removes disruptive influences from the daily scrum so it is used for the team's benefit.
A great ScrumMaster will create an environment where others (particularly the product owner) can attend and not affect the behaviour of the team.

良いスクラムマスターは、デイリースクラムから破壊的な影響を排除し、それがチームの利益のために使われるようにする。
偉大なスクラムマスターは、他の人(特にプロダクトオーナー)が参加してもチームの行動に影響を与えないような環境を作る。

スプリントバーンダウンとデイリースクラムは、チームがスプリント中に効果的に自分自身を管理するために利用できるスクラムツールの2つである。これらはマネジメントがチームの進捗を毎日チェックするためのレポートツールではない。

良いスクラムマスターは、チームがお互いの進捗やアイデア、懸念を共有できる安全な環境を作る。偉大なスクラムマスターは、そのような環境を作り、チームがデイリースクラムのような活動にプロダクトオーナー(そして他のみんな)を巻き込むことに抵抗がないように、境界線を押し広げる。

あるチームでは、デイリースクラムが1日に2回行われていた。チームの進捗が悪いと知ったプロダクトオーナーは、頻繁に進捗を確認しにきたり、残業をさせようとしていた。そこで、プロダクトオーナーに向けて進捗が正常であると伝えるためのバーンダウンとデイリースクラムを実施していた。

常にアジャイルバリューの側に立つ

時にスクラムマスターは、アジャイルの原則に反するようなルールを意図的に破ることを選択することがある。しかし、先程の事例で行っていたことは正しい理由からではなかった。スクラムマスターは、チームが生産的になれるようにする責任があるので、気を散らしたり不要なプレッシャーを与えるならばそれを取り除く必要がある。しかし、スクラムマスターにはプロダクトオーナーと開発者の関係を促進し、透明性、信頼、「一つのチーム」という意識を促進させる責任もある。

プロダクトオーナーを欺いたり真実を隠すことで、スクラムマスターはプロダクトオーナーに開発者やプロセスに対する信頼を低下させる危険性がある。これはチームの成功の障害物を取り除くことおw難しくしてしまうことがある。

良いプロダクトオーナーはチームの障害除去を支援しチームのベロシティが改善されることで報われることが多い。障害除去は公式にはスクラムマスターの仕事ではあるが、プロダクトオーナーは組織やネットワークなど別の影響範囲をもっているので、支援できる場合がある。偉大なスクラムマスターは、プロダクトオーナーとオープンに話し合うことで、このような問題を明らかにすることを学び、チームがより良い解決策を見つけるための発見の道に進む。

安全な環境を作る

デイリースクラムやレトロスペクティブに聴衆がいることは、開発者にとって不快なことかもしれない。しかし、デイリースクラムやレトロスペクティブにプロダクトオーナーが同席することは、悪く扱えば破壊的なものになり、うまく扱えば非常に生産的なものになりうることを示している。

チームの初期段階では、スクラムマスターはチームの信頼と安全を確立する手助けをすべきである。協調的なリーダーは「責任を取り去る」ことを提案する。会話から非難を見つけて、解決策を見つけることへとシフトさせ、必要であれば自分自身が責任を追うことを支援する。こうすることでチームは非難という破壊を受けることなくオーナーシップを持つことが可能であることを学ぶ。ここで発言されたことは、この部屋から出ないようにするなどのミーティングにルールを設けるよりも透明性の高い環境を育むのに役立つ。

デイリースクラム、またはレトロスペクティブを、短い告白セッションから始めてみる。こうすることで、脆弱性の共有レベルを高め、すべてが常に計画通りに進むわけではないという感覚を高めることができる。徐々に暴露していくプロセスを作ることも、偉大なスクラムマスターがよくやるパターンだ。

デイリースクラムやレトロスペクティブは、最初は非公開のミーティングから始まる。チームがお互いに打ち解けてくると、プロダクトオーナーに招待状を出すことができるようになる。チームの行動にネガティブな影響を与えないようにするために、プロダクトオーナーや利害関係者に呼びかけを行うことを推奨する。信頼できるレベルまで作業を進めることで可視化に対して不安を感じなくなりミーティングの価値を完全に失うことを防ぐことができる。

破壊的な影響を排除してチームを守ることは、短期的には良い戦略かもしれないが、偉大なスクラムマスターは、より包括的で透明性の高いプロセスを目指していることを忘れてはならない。最終的にチームは、プロダクトオーナーだけでなく、他のステークホルダーも含めて、チームミーティングに参加するようになるはずだ。

一本のひもの長さは?How Long Is a Piece Of String?

A good ScrumMaster will help a team change their sprint length to find their optimum.
A great ScrumMaster has faith in self-management and knows the value of rhythm

良いスクラムマスターは、チームが最適なスプリントの長さを見つけるために、スプリントの長さを変える手助けをする。
偉大なスクラムマスターは、自己管理を信頼し、リズムの価値を知っている。

スプリントの長さに関する議論は、スクラムそのものと同じくらい古くからある。スクラムの初期には、(少なくとも公式には)議論はなかった。しかし、時が経つにつれて、チームは様々なイテレーションのタイムボックスを試してきた。これは良いことだ。

あるチームでは、スプリントの終わりくらいになり、開発メンバーからスプリントの延長を提案された。しかし、スクラムマスターは延長はしないでほしいと伝え、スプリントから3つの機能を削除した。

レトロスペクティブでは、このことについて、チームは期限を延ばしても完成させられなかったことに失望していた。そこで、スクラムマスターはチームメンバーにスプリントを長くすることの長所と短所をまとめてもらった。スプリントが長いほうが多くの仕事をこなせるし、次のスプリントに持ち越す仕事が少なくなり、ストレスも少なくなる。短いスプリントは、より集中でき、フィードバックを得たり変更を加える機会が増えそうだとの意見があった。

その後、チームメンバーで議論し、ユーザーストーリーを小さくすることと、自動化することで4週間スプリントにすることを採択した。

パーキンソンの法則

パーキンソンはかつて、「仕事は、その完成のために利用可能な時間を埋めるように拡大する」と言った。アジャイルマニフェストでは、反復の長さを「2~3週間から2~3ヶ月、短い方を優先する」と推奨している。スプリントを短くすることで、リスクの低減や、フィードバックの速さ、変化に適応する機会を得られるとしている。しかし、長いスプリントには、チームにとって息抜きの時間を提供するため、大きな創造性を発揮することができるのでバランスを取るの難しい。

しかし、決してやってはならないのは、スプリントの延長である。納品のリズムは妥協するには重要すぎるし、よくない前例を作ってしまうことになるからである。

ペースとリズムのバランス

持続可能なペースを維持することはスクラムチームにとって重要である。最適なスプリントの長さは、変化に対応し、燃え尽きたりせず、品質を維持し、持続できるペースとのバランスを取ることである。

スプリントの長さを一定に保つ頃で、チームはより早く成長し、より予測しやすくなる。彼らは与えられた時間枠の中でできることを学ぶ。そのため、良いスクラムマスターは、チームが正しいリズムを見つけ維持するのを助ける。偉大なスクラムマスターは、スプリントの長さが真の問題であることは稀なことを知っている。たとえ困難であっても、選択したスプリントの長さを維持するように励ます。数スプリント、長さを維持ずればすぐにタイムボックスに慣れる。

一般に、私はチームに短いスプリントから始めることを勧める。プロセスを最適化して、予測可能なベロシティを確立したら長いスプリントが提供する偉大な集中力を活用するためにスプリントの延長を検討できる。

沈黙の力 The Power of Silence

A good ScrumMaster will say what needs to be said.
A great ScrumMaster knows the power of silence.

良いスクラムマスターは言うべきことは言う。
偉大なスクラムマスターは沈黙の力を知っている。

ある事例では、スクラムマスターはあえてデイリースクラムに遅刻して、どんな対応をするかを確認した。それは、チームが自分たちのプロセスをより素晴らしいものにし、自己管理できるようになるのを助けようとしていたからだ。しかし、チームメンバーからはファシリテーターが遅れたことや、意図的に遅れたことへの非難があった。スクラムマスターが説明したのは、自分に対して頼りすぎていないか確認したかったこと、大事なことはほとんどすべてのことから学べることを見つけることだと説明した。

沈黙を破るな

先程の事例でスクラムマスターは、デイリースクラムでチームがスクラムマスターに頼りすぎていないか、スクラムを適切な目的に使っているかどうかを明らかにするために、ある実験を行った。スクラムマスターが不在であることを強調し、"スクラムマスターが不在ですが、どう反応しますか?"とチームに問いかけた。

チームに質問することの重要な側面は、チームが質問についてきちんと考え、答えを出すためのスペースと時間を与えること。だから、スクラムマスターは自分なりの説明をしたい衝動と戦った。スクラムマスターが沈黙を破るよりも、チームに内省をう長い自分たちで説明や解決策を考えさせるので殆どの場合好ましい。これは、チームの自己管理が成長するために重要な要素であり、スクラムマスターに権限がないことを強化する。

良いスクラムマスターは、"部屋の中の象”(当たり前になっている違和感)をさらけ出すことを恐れてはならない。しかし、良いスクラムマスターは、スクラムマスターがどんな解決策を提示するよりも、チームの集団的な問題解決スキルの方がずっと強く、チームの絆を深めることを知っている。だからこそ、偉大なスクラムマスターは、言うべきことは言うが、チームが自ら考え、行動し、解決するための適切な沈黙とスペースも残しているのだ。


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