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桜下鬼刃・あとがき

人生ではじめて、あとがきを書きます。
この「桜下鬼刃おうかきじん」は、僕が書き上げた中では一番長い小説です。
作家気取るな!とか、早く振られ文句書け!とか、さまざまなお声が聞こえてきそうですが、あとがきを書いてみたいので書かせてくださいませ。

以前にも書きましたが、僕は昔から創作が好きでした。
当時大人気だった「NARUTO」に影響され、忍者モノの冒険劇を書いたり、「ジュラシックパーク」のような恐竜パニックを書いたり。
でも、それらを最後まで書き上げることはありませんでした。
もともと飽きっぽいのもあるとは思いますが、最大の原因は「読んでくれる人がいなかった」ことだと思っています。
当時の僕は(今もですが)、恥ずかしくて周りに見せられなかったのです。
今は、幾分か神経が太くなり、或いは感受性が鈍くなり、こうして公開された作品として無事「桜下鬼刃」を書き上げることができました。
僕としては、ずっとあたためていた(というか、ぼんやり考えていた)話を無事完成できて、一安心です。
残虐な描写の多い話ですが、テーマとしては兄妹愛がメインです。
あと、神話を調べていくと、本来は神として祀られていた存在が、妖怪や化け物に「変化」していく例があったことも、この作品に影響を与えています。
最終的には「人間が『鬼』を超える残酷さを持った」ことが、結末に大きく関わります。戦争だけでなく、残酷なことが増えたなという実感がこの結末を引き寄せたと思っています。

完成させてみて、ぼんやり考えていたものをはっきりと言葉にする難しさを痛感しました。
まだまだ、だな。書き上げて最初に思ったのはそれでした。
でも、色々な作品を今まで書いてきたことで、ようやく少し長い作品を完成できるようになったことは、自身の成長だと思っています。

平太郎・新兵衛・幸作の三人は、本来は全員死んでもらうつもりで書き始めました。
最初は、全員に死んでもらって、桜が仇討ちをする話を書くつもりでした。最終的には桜にも非業の死を遂げてもらう。村人も鬼も死ぬ。全滅という、ものすごいバッドエンドです。
厳爺さんに至っては、途中までいないキャラクターでした。
銃の名手で妖怪に詳しい爺。作中で一番強い気配がしますね、違ったけれど。
書いている途中で、平太郎に死んでほしくないなあ、と思ってしまいました。そこから、厳爺さんというキャラクターを生み出し、『鬼』という存在の結末を考え直しました。平太郎が生き残るのであれば、当初のバッドエンドからは大きく変わってしまいます。試行錯誤を繰り返した結果、ちょっとちぐはぐなお話になってしまいました。
本来は、もっと血みどろなお話にするつもりだったので、静かな終わりを迎えたことに僕が一番驚いています。子狐、かわいい。

新兵衛のキャライメージとしては「お相撲さん」でした。
大食らいで力持ち。兄妹の誰よりも早く死にますが、個人的には好きなキャラです。鬼と式神10人相手に一人であそこまでやってんだから、実際強すぎますよね。普通顔面噛み千切りますか?目玉にひるまないのすごいですよね(作者が言うべきではない)。

幸作は、実を言うと悩みの種でした。
足が速い以外に何ができるのか。悩んだ結果「罠作りが上手い」という取り柄が生まれました。平太郎の『奇術』と抱き合わせに生まれた取り柄です。実際、幸作の活躍無しに勝利はありませんでした。いい子。
イメージとしては、小柄でやせっぽち。いたずら小僧です。

平太郎のイメージは、少しくたびれたお兄さんです。
おじさんに片足を突っ込んでいる。痩せていて、無精ひげがある。目に覇気が無く、影のある感じです。
弟や妹のことが何よりも大切な「お兄ちゃん」。
彼の「恋人」である娘(名前がない)については、詳しく作りこんでいませんが、個人的なイメージは僕の推しです。それだけ。
平太郎の必殺技『奇術』は深夜独特のテンションの最中に生まれました。書いているときではなく、お風呂の中で生まれた必殺技。なんかごめんよ平太郎。
結末を変えることにして悩んでいた僕は、心の中の平太郎と話しました。その結果
「もうこいつ最強でよくね?」
と思ったのです。生き残るんだから、鬼くらい強くてもいい。なんなら、鬼より強くないと死んでしまう。そこから、あの『奇術』が生まれました。
手元から消え、相手に突き刺さる。「消える魔球」のようなものです。違いますかね。

そうして平太郎を「最強」にしたけれど、桜と暮らしていくハッピーエンド…とはしたくありませんでした。
桜は鬼であり、敵と同じ存在です。人を喰らう存在です。共存でめでたし、とはならない。でも、桜には不幸であってほしくない。そして、平太郎に全てを失ってほしくもない。そこから、彼女が「桜の木」になる結末にいたります。墓ではなく、命ある「桜」として、平太郎のそばに残る。その必要がありました。それが、平太郎にとって「無益な殺しをしない」という誓いを新たにすることにも繋がります。

桜の台詞を書くのが一番しんどかった。
10歳くらいの女の子って、どういう感じで話すの!?という疑問が、この作品の中で最初に立ちはだかった壁です。親戚に歳の近い子はいますが、地元の訛りがあるため、参考になりません。脳内変換で、推しの声で台詞を読んで、どうにか女の子っぽい感じにできました。ありがとう、我が推し。
桜のイメージは、とにかく綺麗な女の子。異国の雰囲気を持つ子をイメージしてました。
決戦の前、厳爺さんの目の前で成長する描写で服のことを書き忘れてますが、大人になってから素っ裸だったわけではありません。完全に失念してました。

敵である「鬼」のイメージは、以前の作品にも出した「百目鬼どうめき」という鬼です。伝承ではこんなに武闘派ではありませんが、そこはフィクションなので大目に見てくださいませ。「名前がない」ことが重要なキーポイントなので仕方ないのですが、呼称に苦労しました。あと、台詞回し。女性の台詞って難しい。ちなみに裏設定として、朝廷が過去に祀っていた神の成れの果て、という設定がありました。あと、式神は朝廷の人間で、彼女が鬼だったことは知りません。
名前すらない、よく考えると一番かわいそうなキャラです。

厳爺さんのイメージは、「ジブリに出てきそうな老人」です。
これも裏設定ですが、厳爺さんは猟師として大成し、神や妖怪と渡り合った経験のある銃の名手です。神々の間でも有名で、死に行く神の看取りをお願いされることもあります。この世界では、祀られなくなった神は、『鬼』や化け物になったり、死んだりします。
仲の良い奥さんがいましたが、妖怪に殺されています。いつか、厳爺さんが主役の話書こうかな。


キャラについて長々と語る、という人生でやってみたかったことができて満足です。やったぜ!
ちなみに、作品執筆中には音楽を聴くことが多いのですが、今回は

Aimer「花の唄」
幾田りら「いのちの名前」
X「紅」
AKB48「桜の木になろう」

をリピートしてました。ジャンルごっちゃごちゃ。
AKBはラストあたり執筆中に聴いて号泣してました。展開を思いついてからずっと脳内リピート。昔から好きな曲。
「紅」は平太郎戦闘シーン執筆中リピート。そのときが一番すらすら書いていた気がする。
幾田りらさんの歌、胸に刺さりすぎて心が持っていかれました。執筆中断レベルで号泣。
Aimerさんの歌は、そもそもこの話のきっかけです。聴きながらぼんやり思いついたのが、この「桜下鬼刃」だったのです。大好きな声。
届くはずもありませんが、アーティストの皆様、素敵な曲をありがとうございました。


ここいらでやめないと、ずっと作品語りという名の自分語りをしてしまいそうなのでやめます。
とても悩みながら書いた作品で、不出来なものですが、多くの皆様に読んでいただけたなら、それだけで満足です。
どうぞ、平太郎たち4兄妹と、厳爺さん、そして名前のない鬼をこれからもよろしくお願いします。
あと、これからも私「ナル」をよろしくお願いします。読んでくれる人がいると思えば完結まで書ける、というのは大きな発見でした。
多分、明日は楽しいこと書きます。それではまた。

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