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田舎交響曲(野生動物篇)

最初に、本編とは少し違う話をする。
長期間続いている大雨で、僕が何度もエッセイの題材にさせてもらっている盛岡市をはじめ、多くの地域で被害が出ている。どうか、これ以上の被害が出ないことを祈る。このエッセイ本編にも盛岡が出てくるため、急遽この文章を追加した。お見苦しいかもしれないが、ご容赦いただきたい。
盛岡の皆様、必ず力になります。また何度でも行きます。
皆様どうか、ご無事で。


それでは、以下エッセイ本編である。

僕の住む町は、いわゆる山村である。
人口が毎年のように急激な減少をし、高齢化率も著しい。子供の数も少なく……ってこんなこと書いていると悲しくなるのでやめる。もうさ、ご高齢の方ばっかりだしさ、毎年近所の人が亡くなるし……。

そんな山村で住人を悩ませるのはそう、野生動物である。今日は野生動物の話だ。

僕は(車中からではあるが)、クマとイノシシは見たことがある。クマは町外だったし、そこまでのエピソードはない。田んぼを駆け抜けていた。でかい犬かと思った。
イノシシは、我が町と隣町の境あたりで見た。

イノシシってあんな群れになるのか、と衝撃を受けた。
その日は山間の道を通って帰路についていた。晴れていて、見通しのいい日だった。ふと、道路脇の原っぱに目をやると、何かが数頭走っているのが目に付いた。
珍しい、野犬か。最初はそう思った。飛び出してくるやも知れん。減速し、通り過ぎようとした。

…何か、犬っぽくないぞ?

というか、イノシシだ!

イノシシが群れになって走り回っている。車を止める。後方どころか、他に車は全くいない。人影もない。ああ田舎よ。
僕は咄嗟に撮影した。

遠いわ!

「遠いわ!」
そう思った方も多いだろう。だが、言わせてくれ。
僕が普段持ち歩くカメラで限界までズームしたのだ。あと、声を大にして言いたい。

近づけるはずがないだろう。

野生動物に丸腰で近づくほど無謀ではない。突発的に恋に落ちることはあるが、突発的に野生動物に近づけるものか。幽霊よりも怖い。
撮影を終え、急いでその場を後にする。数えたら十頭以上いた。
……鍋にしたら何人前だったんだろう。


その他にも、道路脇にニホンジカが列をなしていたり、カモシカが道を横切ったりもする。アナグマは平然と道に座り、深夜にキツネの声で叩き起こされる。
それが田舎だ。山村なのだ。
ちなみに、繁殖期を迎えたキツネ(だと思う)の声は、深夜に聞くと悲鳴のようで薄気味が悪い。顔は可愛いんだけどなあ…。

あと、タヌキについてであるが、彼らは賢い。
去年の暮れ、我が家の愛犬が死んだ。名前は「ゴン」。『柴犬と珈琲』に出したゴンのモデルである。可愛かったんだ、本当に。
そんなゴンであるが、外で飼っていた。そのため、何かが来るとものすごく吠えた。それはそれは吠えた。
そのため、我が家の敷地に何かが来ることはほぼなかった。
だが、ゴンが天国へ行き、二日もしないうちに彼らは来た。そう、タヌキである。
玄関を開けると、平然とそこにいた。「やあ!」とでも言わんばかりだった。『平成狸合戦ぽんぽこ』ならばすぐさま妖怪にでもなるのだろうが、そのタヌキはそのまま走り去って行った。
ゴンがいなくなってから一時期、毎日のように彼らは来た。ゴン、お前はすごかった。タヌキの侵攻を防いでいたんだな。

田舎田舎、と蔑んではいるが、意外と僕はこの町が好きだ。
関わってくれる人は、優しく、あたたかい。それだけでうれしいと思える。
とはいえ、昨今のクマ騒動は本当に恐ろしい。そこだけはどうにかなってほしい。山と町。住み分けが一番いいのだと思う。

いつか僕が何かを成し遂げたら、盛岡だけでなくこの町にも恩返しがしたいな、と思う。早く元気になれ、自分。
…もし僕が有名になったら、地元と盛岡で友好協定を結んでほしい。最近こういう妄想ばかりがたくましくなる。人気の出そうなエッセイのネタもないのに、妄想ばかりだ。変態の性分なのだろうか。

最後に、我が生涯の友・ゴンに敬意をひょうして、彼を出演させた『柴犬と珈琲』のリンクを貼っておく。どうか僕より愛されてくれ、ゴン。


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