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中小企業の人材開発_第2章 「中小企業の実態」

引き続き、こちらの書籍の第2章 中小企業の実態 です。豊富なデータ(量・質)にもとづき、中小企業の人材開発に関する実態をあぶり出しています。

筆者らの調査の結果から、興味深いと思った箇所をメモします。



中小企業の課題

  • 人手不足、人材開発の機能不全による事業承継が中小企業の課題

  • 事業承継の方法は2つある

    • ハード施策:合併や事業統合(ファミリー以外、外部への承継)

    • ソフト施策:後継者の育成(ファミリー or 内部承継)


労働政策研究・研修機構の調査結果では、経営課題の上位3位が人材開発・スキル開発に関連していた。

https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/172.pdf
p.10

中原、保田(2021)では詳細は記載されていないが、元の資料には、規模別のデータがあるので見てみよう。

営業力・販促ノウハウを除いて、規模が大きくなるほど課題感を感じているようであるが、中小企業でも人材に関する課題は大きな位置を占めていることがわかる。取引先の減少や取引条件の悪化労働時間の短縮・職場環境改善は企業規模と明らかに関連していそうだが、それ以外は大きな差はあまりないのかもしれない。

https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/172.pdf
p
11


以下、中原・保田(2021)のデータに基づくものである。

中小企業の実態

  • 世襲による承継:創業30年を経て増えていく、非世襲はそのような傾向がなく、創業年によらず幅広く事業承継が行われている

  • 女性従業員の割合:10-29%の企業が58%を占め、中小企業でも女性の採用推進は課題の1つ

  • 平均継続年数:10年未満の企業が51%、大手企業では20%を超えるとこもあるが、一般な数値と思われる

  • 新卒入社:一般的に中小企業は新卒採用をせず、中途採用を取ると言われているが、調査対象企業ではそうでもなかった。中小企業でも人手不足を意識した新卒採用が増えてきていることを示唆している

  • 離職率:右肩下がり、5%未満の企業が全体の50%。日本全体での離職率15%と比べ高いとはいえない。


経営者の実態

  • 創業経営者 約30%、世襲経営者約20% → ファミリー企業が約50%

  • 227名の経営者のうち女性経営者は5名(約2.2%)

  • 経営者として注力したい人事課題は?

    • 管理職のマネジメント強化 30.2%

    • 営業力強化 15.9%

    • 専門技術力強化 12.9%

    • 基本スキル(マナーなど)強化 12.3%

  • 従業員は期待通りの成果を出せているか?への否定的回答は

    • 管理職 34.4%

    • 一般職  13.2%

これらから管理職への期待の高さが見て取れる

  • 中小企業には管理職を昇進させるとき、適切にトランジションさせる仕組みも支援もない

    • 経営者の言ったことをいかに早くやるかが大事

    • 考えない管理職、他者を動かせない管理職が増える

    • 明日から次長さんですと、いきなり言われて放置プレイ

  • 高成長企業は、新規事業へ時間を費やしている

    • そのため、自身の普段の業務を代行する管理職を増やし育成する必要がある

    • 新規事業・既存事業のバランスは、創業者、世襲、後継者によらない

  • 経営者の学習

    • 他の層よりも読んでるが、本は1-2冊/月が多い。

    • 社外勉強会への参加は2-3ヶ月に1回が38.3%、1ヶ月に1回が30.8%で約7割の経営者が何らかの社外勉強会に参加している

    • 約75%の経営者は勉強会の内容を社内で共有している

  • 経営者は誰に相談しているか?

    • 84.1%の経営者は相談相手がいる

      • 他の経営者 約50%(JC、信金主催のゴルフコンペとかいろいろコミュニティーがある)

      • 自社の幹部社員 約45%

      • 外部の専門家 約28%

      • 友人 約11%

      • 自社の管理職社員 約7%

      • 家族 約4%(ファミリー企業が50%だけど、仕事と家族は切り離しているということか)


管理職の実態

  • 男性 90%, 女性9%(ほぼ男)

  • 平均年齢 43才

  • 管理職経験 約4年

  • 部下の人数 約10名(分布は4-5名をピークとしたほぼ山型)

    • 通常、SPOCは6名程度が限界と言われており、中小企業ではそれを超える人数をマネジメントしてる

    • 管理職へのサポートも少なく、かつ人数も多いので、機能不全になりがちな構造になってるのでは?

  • 部下との会話頻度

    • 頻度順に1日1回 32.8%、1日5回30.6%、約7割が1日1回は会話してる

    • しかし1週間に1回以下(13.4%)、3日1回程度 (14.5%)という会社もあり、情報通信に多い。クライアント先に常駐する派遣の形態が一因。データの読み方は要注意

  • 部下との会話時間

    • 1日15分未満が56.7%

    • ほとんど時間をとって話せてない

ここでいう業務についての会話とはちょっとした相談など、公式な会議や面談以外での会話と思われます。思ったほど、"会話" は少ないのかなという印象を持ちました。

  • 部下との面談頻度

    • 94%の企業が面談制度あり(これにびっくり)

    • 半年に1回25.2%

    • 3ヶ月に1回 20.7%

    • 1ヶ月に1回 24.4%

    • 1週間に1回 18.1%

  • 部下との面談時間

    • 5〜15分 22.5%

    • 15〜30分 32.6%

    • 30〜60分 33.3%


一方、1on1などに代表される正式な枠組みでの面談は、私の予想に反して多かったです。大企業でもここまでやっていない会社も多いのでは?

  • 中小企業は管理職がプレイヤー化しやすい

    • 個人プレイに陥っている管理職は業績成果が低く、業務能力に伸びが見られない

    • 脱皮できない蛇は死ぬ

  • 管理職が成長した業務経験

    • 重大クレームの対処・解決

    • 管理業務の代行

    • 協力会社・ベンダー・購買先との深刻なトラブルの解決

    • 全社を巻き込んで行うプロジェクト

    • 社長直下のプロジェクト

  • 個別の事業部門にとどまらず,部門を超えて実施されている

  • 管理職研修の受講経験 80% あり

  • 社外勉強会への参加(年1回以上)

    • 会社指示で参加 80.2%

      • 仕事に適用する 57.6%

      • メンバーに共有する 52.2%

    • 自主的に参加  64.5%

      • 仕事に適用する 80.1%

      • メンバーに共有する 41.2%

面白いデータと思いました。会社費用で行けばメンバーにも共有するが、自腹の研修は、自分のためでなぜ会社に共有しないといけないのか?という感じでしょう。自分で選んだ研修ほど仕事へ適用したくなるのもわかります。

  • 経営者との会話頻度(1ヶ月)

    • 1-2回 約 34%

    • 5回 約20%

    • 10回以上 約23%

  • 経営者との面談頻度

    • 半年に1回以上 約6割

    • 行っていない 約3割

  • 1回辺りの面談時間

    • 5-30分 約5割

    • 30-60分 約3割

面談を行っていない管理職が3割もいるのは驚きでした。やりたいけど時間がないのか、やりたくないのか、やる必要が無いと思ってるのか、など知りたいところです。


一般従業員の実態

  • 男性72%。女性28%

  • 平均年齢 29.1才

  • 在職期間 4.5年(± 3.9年)

  • 11.7%は先輩が一人もいない職場

  • 73.7%は同じ年齢の同僚社員がいない

  • 38.6%は後輩すらいない

  • 異動回数 0.68回、異動経験無しが63.3%

  • 1-3年目に任された業務内容

    • 重大クレームの対処・解決(28.3%)

    • 全社を巻き込んで行うプロジェクトへの参加(27.6%)

    • どの項目も管理職の方が豊富で多様な経験を示す

  • 社外勉強会への参加頻度

    • 会社指示:管理職 と一般職で大差なし

      • 仕事への適応:57.6%(管理職)67.8%(一般職)

      • 情報共有:52.2%(管理職) 54.8%(一般職)

    • 自発的参加:15.9%が月1回以上自発的に参加 vs 管理職は3.3%(勉強しなくなる管理職)

      • 仕事への適応:80.1%  (管理職) 66.0%(一般職)

      • 情報共有:41.2%(管理職) 52.3%(一般職)


企業規模によらず大企業でも認められる課題もあれば、中小企業に特徴的な課題もあるように思います。中小企業ならでは環境があるのは当然なので、それを大企業に近づくように埋めようとするのではなく、違いがあるのを前提とした中小企業ならではのアプローチが必要そうです。

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