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#20 『変わり身の術・忍者〜花屋』(博多)

話し相手JAPAN TOURとは


『忍者・桜丸(日雇い)』

「ニンニン・拙者が桜丸じゃ」
「うわぁ〜(キラキラキラ)ニンジャだぁ〜(ルルルンルン)」

いや、ちょっと・・・そんなに?そんなに喜んでくれるの?

THE NEWSPAPERというグループに所属してた頃からお世話になっていたセンパイ(年齢不詳)が、西鉄の話し相手に来てくれて、その日、日雇いニンジャのアルバイトが決まった。

保育園の先生をしてるサチコセンパイは、子どもたちに教室から見える山を指差して「あそこの山に忍者が住んどって、言うこと聞かんかったら、忍者がみんなのこと叱りに来よるんよ」と言ってるらしい。ただ・・・

「子供らがね、最近言うんよ『忍者なんておらん』て」
「はぁ・・・」
「うたぐっとるんよね。なんとかしてくれん?」
「なんとかっていうのは?」
「忍者やってくれん?」
「えッ、忍者?」
「そう、バイトで」
「バイトで忍者っすか?」
「うん。ほら、バク転出来よるやろ?」
「いや出来ますけど」
「クルクル回ってるれたらいいけん」
「忍者って言われても、衣装というか忍者服持ってないんで」
「あ、それはもう買っとうから」
「えぇ〜」

園児たちの前とはいえ忍者で登場するって、いや、忍者やから参上になるんか?まぁ、どっちでもええけど、それはいくらなんでも・・・オモシロそうなので引き受けた。

バイト当日、サチコセンパイ、いや、この日はサチコ先生だ。サチコ先生から

「お散歩コースになっとう公園があるけん、そこにこども達連れて行きようから、わたしらが来たらコレ着て出てきて」

と、用意してもらった忍者服に着替えて、遊具の影で待ってたが、ハタから見たら完全に不審者だったので、みんなが来るまで「他の人、特にママさんたちが来ませんように」と祈ってた。
祈り方は「忍法・分身の術」ってやる時みたいに、右手の人差し指を立ててその指を左手でくるんで、左手の人差し指も立てて祈った。

見られても、スグに消えられるようにだ。

こども達を待ち伏せしながら「あれ?忍者の登場の仕方って、どんな感じなん?」と悩んだ挙げ句、引き出しに入ってるのは『忍者ハットリくん』の「拙者ハットリカンゾウでござる。ニンニン」だけなので

「ニンニン・拙者が桜丸じゃ!」(ちょっとアレンジ)

って、絶対に忍者が言わないフレーズを言いながら登場した。

あんなに驚いてくれた事にコッチが驚いた。たぶん、クリスマスの日に白いヒゲはやして、赤い服を着たおじいさんが「メリークリスマス」って言いながらプレゼントを配ってくれるのと同じぐらいの衝撃があったと思う。

こんなところでアクロバットが役に立つとは思わなかったが、センパイ、あんな感じで良かったんでしょうか?
バク転したり、カケッコしたり、ジャンケンしたりで、バク転以外は忍者らしい事ひとつもしませんでしたけど。

あッ、スミマセンでした。負けず嫌いなもんでついつい本気出して、カケッコ全勝してしまいました。

バイト

大人気なかったと反省してます。
でも、毎日山で修行してる忍者が負けたらイカンでしょ。

ただ、最後のジャンケンはどうなんでしょう?忍者としてもどうする事も出来なかったので、かえって子供達をつけあがらせてしまう結果となりましたね。

また、何かあったら言ってください。山から降りてきて、子どもたちを騙しに、いや、騙しちゃいけないですね、欺く・・・でっち上げる・・・捏造・・・適度に信じ込ませに来ます。

『サクラ組のみんなへ』
サクラ組のみんな元気にしてますか?
きみ達はいつ頃気付くんだろう、忍者なんていない事に。
いや、もしかしたら忍者はホントにいるのかもしれないけれど、あの時の桜丸は、残念ながら忍者の中でもベテランの忍者じゃなくて、なんていうのかな、1日署長みたいな感じの、一日忍者でした。

カケッコしたり、ジャンケンして一緒に遊んだけど、先生が言ってたように、桜丸は、みんなの教室から見える山で修行していて、いつもキミたちを見てるからね。先生たちの言うことを聞かないと、山から降りてきて厳しい修行に連れて行くよ。って言ったけど、そういうのは、忍者じゃなくて山に棲んでるオニとかヤマンバがやるんだろうね。

みんな、お手紙と桜丸の似顔絵をありがとう。山で修行をした後に、木の根っこを煎じたお茶を飲みながら毎日見てるよ。
それじゃあ、また会おうニンニン。
やっぱり、忍者は言わないね、ニンニンって。あと、木の根っこを煎じたお茶もマネしちゃダメだよ、たぶん美味しくないし健康にも悪いから。

あの後、しばらく子供達の間で、あいさつの最後に「ニンニン」って付けるのが流行ってたようです。
みんな「おはようニンニン」「さよならニンニン」って言ってたというのをサチコセンパイから聞いて、ちょっと嬉しかったですけど、良かったんでしょうか?

「子供らみんなでニンニンニンニン言いよるんよ。これで、あと3ヶ月は大丈夫やろからね、助かったわ」

って、笑顔で言ってましたけど、3ヶ月持ったかどうか聞くのを忘れてました。今度、聞いてみようと思います。

今はすっかり修行とは程遠い生活をしてますが、あの時、ちょっと修行っぽかったなと思います。


『花屋・BELL FLOWER』

「100円!100円!100円!ん〜〜〜〜〜100円!」
「・・・・・」
「よし、朝メシ食いに行こ」

朝5時過ぎ。
この日が初対面のヒデキさんが運転するワンボックスカーで、花の仕入れに市場に向かった。

博多に着いてすぐに忍者のバイトをやらせてもらったセンパイは、顔が広い。ホントに、人の世話ばっかりしてるセンパイで、サチコなのに、「なんでワタシばっかり不幸がやってくると?」と数々訪れる不幸話で、人を幸せにしてくれる。

そんなセンパイが「お金ばないんやろ?バイトやるなら、なんか探しとくけん」と言って、次の日には紹介してくれた。ただ、紹介してくれたのが花屋さん。忍者からの花屋さん、ギャップありすぎ。

そもそも花ってどうやって売ってるんや?いや町の花屋さんで売ってるのは知ってるけど、あの花が花屋さんに来るまでは、どうしてるんや?
お店の人がお花畑で摘んでくるわけではないから・・・そうか、それで花の市場があるのか!

魚屋さんが魚市場に魚を仕入れに行くように、花屋さんは花市場に花を仕入れに行く。花屋のセリは、魚屋と一緒だった。ちょっと考えたら分かる事だ。ちょっとの想像力が大事なのだ。

ヒデキさんは、とにかく「100円」でセリ落とそうとする。どこのどんな花も、ずっと「100円!」と言って、他の人が100円より値が上がったら別の花に向かう。
そもそも100円でスタートしてなかったりするが、それでもヒデキさんは「100円!」と言って去っていく。オレは、ヒデキさんの後ろを小走りで付いていく子どものような時間が過ぎていく。
しばらくして「朝メシ食お」と、市場の中にあるメシ屋に向かう。

ここまでに仕入れた花はゼロだ。オレは、まだ何も仕事してない。イメージとしては、ヒデキさんがセリ落とした花を乗ってきたワゴン車に積み込んでいく。そして、お店に向かう。これぞTHE・バイトだ。

今はただ、優雅に朝メシを食ってる。

バイト0001

何もしてなくても腹が減ったのでメシを食ってる。「花、仕入れる気あんのかなぁ」と思いながら、フツーにメシを奢ってもらってる状態だ。そして、ヒデキさんは、ゆっくり朝メシを食ってる。

「よし、行こう」

ここから怒涛のセリ落としが始まった。しかも菊。『ひな菊』という種類?品種?とにかくアッチへ走りコッチへ走り、気づいたら「そんなに葬式ないでしょ!」というぐらい大量の菊をセリ落としてた。

朝イチのヒデキさんは、花の様子を見てただけやったんか?アレヨアレヨという間に大量の花たち(菊以外の花も、いつの間にか買ってた)が集まってた。

その頃、もう一店舗ある藤崎店のクミさんが来て、クミさんに連れられて行った。花市場で怒涛の仕入れから、町の小さなカワイイ花屋さんへ・・・このギャップ。

たった1日だけなのに、とても丁寧に『ひな菊』をはじめとする花たちとの向き合い方を教えてくれた。

バイト1のコピー

ちなみにオレのイチオシは『スモークツリー』だ。なんかボンヤリしてるのに、めちゃくちゃ存在感がある。

昼過ぎに、ヒデキさんが『偵察』にやって来た。そして「ちょっと早いけど」と封筒に入ったバイト代を手渡してくれた。が、しかし、そこには1万円札が入ってた。

「いやいや、あきません。そんな働きしてません。朝なんか、小走りに後ろ付いてただけですし、1万円はあきません。せめて半分で!」

と、お願いしたら「分かった。半分にしといたから」と。ありがたく封筒をいただいた。

その日の夜の『話し相手』の人にバラをプレゼントしようと思い、20本のバラを売ってもらった。バイトなのにタダみたいな社員価格で。
後になって菊でも良かったな、むしろ菊やったなと後悔しながら、本日の『話し相手』(西鉄コンコース前)では、先着20名様、バラが付いてきます。

あっという間にバラがなくなり、その後は、ただ『シャベルダケ』(詳しくは、三ノ宮のウッディーさんにて)の『話し相手』を終えて、ヒデキさんから頂いた封筒を開けたら、中には6,000円入っていた。半分に1,000円が余計に足されてた。

今日は、牛丼に味噌汁と卵と漬物を足そう。

博多では、初めて郵便局の通帳に入金しました。

昔ラジオ番組でお世話になったディレクターが、偶然、小倉の駅前広場で、早朝のラジオをやってて、そのままラジオで喋らせてもらった流れで、博多に到着してからRKBのラジオ番組『なんでもアリーナ日曜日』にゲストで出してもらったり、なんだかんだとオモシロ楽しくやってました。

忍者のバイトの他に、保育園の先生達からカンパと言って、センパイが幸せを運んでくれたり、花屋さんのバイト代を封筒で頂いたりして、このツアーで初めて通帳に入金という経験をしました。

博多に着いたタイミングでは、LIVEをやってたTMネットワークの木根さんが、LIVEのアンコールでゲストとして喋らせてくれたりして、その後、メシにも連れて行ってもらい、「福島、お前、アクを取れアクを!」と言われながらも、まったくアクに興味はなく、肉を取っては食い、食っては取ってました。

さすがに木根さんに「お小遣いください」とは言えないので、ボロボロになってる靴をアピールしたら「靴、買ってこい」と、見事に術中にハマってくれました。
その靴、実は・・・また追って話しましょう。いえ、書きましょう・・・たぶん。


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