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まず、人生のゴールを聞く理由

生徒の方の「人生のゴール」が基準になる

たぶん、日本で数少ない「デザイン教える業」でご飯を食べている私。
デザインスクールの講師として、デザインに関わることについての知識や感覚が必要なのは当然ですが、それ以外の技術や感覚も必要となります。

まず、「これがないと絶対にお教えできない」というものがあります。
それは「その人の人生のゴールがどこにあるか?」を聞くことです。

その人の人生の中での「仕事」の立ち位置がどこにあるのか?

「デザイナー、Webデザイナーになる」「デザイン力やWebデザイン力を身に付ける」を求めて学ぼうとしているのはわかるのですが、「なぜ、そうなりたいのか?」がないと、教える内容や強度も変わります。

「人にはできないような仕事をしていきたい」
「お金持ちになりたい」
「とりあえず、楽しく生きたいから、仕事はほどほどでいい」
「極力、社会と距離を置いて生きたい」
「とりあえず、就職したい」
「とりあえず、Webデザイナーになりたい」

ハッキリ言ってくださる方もいれば、こちらから聞き出すこともあります。多くは後者です。

私自身が、大学卒業時に人生の勝ち組レールを見事に脱線したダメ人間なので、他人の人生のことをああだこうだ言う権利は1%もございません。

ただただ、その人が何を目指しているのかによって「何をどこまでお教えするのか?どこまで求めるか?」を変えています。

ハードルの乖離

私は、私が想定する「プロのデザイナーに必要な考え方&能力」は身に付けてほしいと思って、ハードルを設定しています。

生徒の方は生徒の方で、ご自身が想定する「プロのデザイナーに必要な考え方&能力」があり、ハードルを設定しています。

「私の定めるハードル」と、「生徒の方が定めるハードル」の差をいかに埋めるか?が私の中での大きな課題だったりします。

それがある程度埋まる方もいれば、全く埋まらない方もいます。

「ここまでの強度は求めていない」
「こんなことしてても、自分が思い描くデザインはできるようにならない」

な方は、体験レッスンの時点で来なくなるか、受講しても早々と来なくなるかだったりします。

「デザイン=装飾」という誤解

「デザインって日本語に訳したら何ですか?」
「デザインって何をどうすることですか?」

デザインの講義の授業で毎回最初にお聞きすることですが、装飾的な意味のご回答をいただくことが多いです。

何をするお仕事かよくわからずに「デザイナーになりたい」と思う方がほとんどということだと思います。

「きっかけなんてどうでもいい」な私なので、そこはどうでもいいのですが、ただ「デザイン」という定義は軌道修正していった方がいいとは思います。

装飾的な何かをすることが広告デザインの目的であれば、永遠にたどり着けないゴールになってしまいます。

「ラクして」「簡単に」はご遠慮願いたい

先程挙げた、皆さんの「ゴール」の前に「ラクして」「簡単に」が入るようだと、私には無理なので、うちのスクールには入学しない方がいいと思います。

「ラクして、人にはできないような仕事をしていきたい」
「ラクして、お金持ちになりたい」
「ラクして、とりあえず就職したい」
「ラクして、とりあえずWebデザイナーになりたい」

独学や他校に入るよりはラクなんだとは思ってますが、「勉強好き!!」って方はあまり多くはないと思います。ゴールを設定し、そこに向かって飽くなき努力を継続できる人もそんなに多くはないと思います。

デザイナーとしての資質

考えて、考えて、考えて、めっちゃ考える。

見て、見て、見て、めっちゃ見る。

つくって、つくって、つくって、めっちゃつくる。

ほとんどの方にとってめんどくさい作業だと思います。

だからこそ、プロのデザイナーという職業に価値があるって私は思っています。

上の作業は「デザイナーになるまで」じゃなくて「デザイナーになってからも一生続く」作業なんです。

デザイナーの能力 = 経験年数ではない

デザイナーという職業は一律同じ報酬や待遇をいただけるわけではないので、その中で差をつけないといけません。20年選手になった今感じるのは、より能力の差が出やすい職業だなって思います。

経験年数と実力が比例する業界ではない気はします。

その人の人生。
その人の24時間。
その人の人間的資質。
それらが導き出す職業環境。

そういったものが職能や収入に反映される業界だと考えています。

私の中の「仕事」と「ゴール」

そんな中で「ラクに」「簡単に」学べる方法を私は知りません。
仮に知っていたとしても、それが皆様にとってプラスの力になるとは思えません。

そもそも、私の人生や仕事のゴールが、その先にあるとは思えませんし、そんな人生は歩みたくないです。

ウェブの普及が生んだ弊害

「プロが作ったのこれ?」な広告が増えてると感じます。
広告のメインフィールドが紙からWebに移行し、「安く」「多く」になった気はします。

私が思う「プロとして必要なプロセス」を経なくても、「広告物をつくって、お金をもらう」ことは可能になった時代の到来なんだと思ってます。

「満足に稼げるか?」
「いつまでその仕事は存在するか?」

あやふや過ぎると思いますし、限りなく不透明な未来に人様を導くことは私にはできません。

そして、そのレベルならスクールで学ばなくてもできると思いますし、それすらできないのなら本当に向いてないんだと思います。

私のモチベーション

100人いたら、100人の人生があり、100人の物語があります。
そんなこと考えるのは人間だけで、人間でも一部の人間だけなのかもしれません。

ほぼ全ての生命はそんなことを考えてないわけで、そもそも必要ではないことなのでしょう。

そんな中で「デザイン」というものを通じて、人生が豊かになる、人生という物語が楽しくなるようなお手伝いができたら、親にもちょっとは「息子を産んどいてよかったでしょ」、奥さんには「素敵な旦那さんと結婚できたでしょ」って思えるかな、と。

ということで、人生のゴール設定のお話でした。

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