デザイン未経験者の就職が難しい理由を考えてみた
「どうすればデザイン未経験者の雇用を増やせるか?考えていきましょう」とツイートすると、珍しく「いいね」が。
いつも野球やらプロレスの話をしても誰も「いいね」してくれないのに!
たまに「デザイン、それなりにタメになるツイート」しても「いいね」してくれないのに!
と、スネてる間にどんどん寿命に近づいていくので、とりあえずまとめてみました。
採用側の問題
●未経験者に高いレベルを求めすぎる
「教育して一人前に!!」より「即戦力!!」志向が強いのか。
「これぐらいはできるようになっててよ」の「これぐらい」が、かなり高い山なのでは(採用側の方がこの業界に入った時にそんなにできてたのでしょうか?)。
⚫雇用に対するコスト、退職リスク
私自身、今までに10人ほど正規雇用してきましたが、人件費は決して安くないです。
先行き不透明な現代、とりあえずリスクの低い外部委託や経験者、派遣社員に頼ったほうが金銭的なリスクは低いかも。
その分、自社で活躍できるように教育できませんが。
あと、せっかく雇用して教育しても、すぐに退職されてしまうリスクもあります。
⚫未経験者を教育する余裕がない
人手が足りないから雇用するのに、未経験の方が入社すると現スタッフの業務に新人教育という業務がプラスされてしまいます。
それを上回るだけのリターンが未経験者採用にあるのかも?という経営判断があります。
⚫求人に対するコスト
転職斡旋サービス等を使用して採用をすると、大なり小なり斡旋会社に対価を払わないといけません。
そして、ポートフォリオを見る時間、面接をする時間、それも十分なコストです。
トレースしただけのもの、スクールのテンプレートそのまんま等の「見るに堪えないポートフォリオ」での応募も多く、採用条件を「未経験者可」にすると、前者のようなポートフォリオによる応募が大量にくるため、未経験者不可で求人を出す企業も増えていると耳にします。
デザイナー志望の未経験者側の問題
⚫企業が求めるレベルを満たしていない
情報収集不足?
スクールや職業訓練校等教育提供側の情報提供不足?
スクールと名乗る情報商材屋の「2ヶ月で月商50万円可能!!」「ママでもフリーランスWebデザイナーになれる!!」等のミスリード?
「企業が求めるレベル」を満たしていない、「企業が求める準備」ができてない応募者が多いと耳にします。
「自分がつくったものがないポートフォリオ」は論外ですが、見た瞬間に「この人は不採用」と思われてしまうポートフォリオを作成するのは、手ぶらで戦場に向かうのと同等だと言わざるをえません。
⚫デザイン業界への思いの弱さ
「家で仕事したいから」
「誰でも簡単になれそう」
的な理由のデザイナー志望者が増えた感はあります。
「つくることが好き」
「私も町中で見かける広告をつくってみたい」
的な理由の方が減ったような気はします。
「つくりたい」という思いが薄い中で、ポートフォリオを採用レベルまで仕上げるのは大変な作業かと思います。
⚫企業に求める条件が現実離れしている
「どういう会社で働きたいですか?」
デザインスクール代表というお仕事柄、デザイナーを目指す生徒の方々にお聞きします。
「21時ぐらいまで残業らしいんですよね…」
「祝日が休みじゃないんです…」
「案件が◯◯ばっかはちょっと…」
徹夜、パワハラ、残業手当なし、毎週の休日出社を当たり前と思ってる企業は論外ですが、基本クライアントがいて成り立つお仕事なので、残業がない方が珍しいとは思います。
「労働条件」を最優先するなら、違う業界を目指すか、デザイナーとしての実力をつけてから、いつか独立する時に自分流で働けばいいと思います。
⚫すぐ辞める
「しんどいから辞める」
「うまくデザインできず、デザイナーには向いてないから辞める」
「2年経ったからステップアップのために辞める」
どんな理由であれ、入社して教育し、戦力になる前に辞められたら、採用企業に側はその方を雇用するために払ったお金を回収できません。
デザイン業界に限らず、現代社会において同じ職場で2年以内で辞めてしまうことは珍しいことではないです。
自分らしく生きるのは素敵なことですが、雇用側、お金を払う側にすると、時にいい迷惑になってしまいますね。
教育側の問題
⚫学校・講師のレベルの低さ
「デザインの講義や作成がカリキュラムにない学校(デザインスクール、オンラインスクール、職業訓練校、育成目的のオンラインサロン等)」の方が多そうです。
課題作成やフィードバックが仮にあったとしても、講師の能力や意志任せなのが現状でしょう。
「入学するまでが勝負」
「デザイナーに就職しようがしなかろうがビジネスには影響がない」
と思っているスクールも多いように同業者の目からは写ります。
経営者の思いがそこにどれだけあるのか。
経営者の思いがあるとして、それをスタッフや外部委託講師がどこまで理解しているか。
「ちゃんとしている学校」って日本にどれだけあるのでしょう。
(スクール運営者&講師なので、うちはちゃんとしてまっせって言っときます…)
⚫スクールの乱立
コロナ以後、社会のオンライン化が一気に進み、オンラインスクールやスクールという名の情報商材屋の新規参入が急増しました。
「ファスト教育」とも言うらしいですが、手っ取り早く安く学ぶのが最近の流行みたいです。
生徒の方が求める結果に導けるなら何も問題はないと思います。
「スクールの乱立」→「デザイナーになるのは簡単と思わせる広告の氾濫」
によって、「ファスト」な感覚でデザイナーになれると思い、入学してしまった方、多いのではないでしょうか。
そういう方が全力でプロのデザイナーを目指して努力、自己研鑽できるでしょうか。
⚫卒業→就職時のサポート不足
授業で習い、ポートフォリオを作成し、仕上げていく。なかなかプロが求めるレベルまで自力だけで導くのは難しいのではないでしょうか。それができる人財を求めていると言われるとそれまでですが。コース受講修了後のフィードバックや、就職相談ってどれぐらい対応してもらえるのでしょう。
社会・業界の問題
⚫「デザイン業界」に対して社会が持つイメージと現実のズレ
そもそも身内や友人にデザイナーでもいない限り「デザイン業界がどういう業界か?」知る由もないのでは、と。
広告で啓蒙されているような「楽して儲けれる業界ではない」です。
楽して儲けている方がいるとすれば、その人はデザインじゃなくても何かを成す可能性が高いでしょうし、自分も同等の実力や潜在能力を持っていると考えられるでしょうか?
自分が100分の1の人間なのか、100分の99の人間なのか。
その中でどういう道を選んでいくか。
●頭を使う仕事
私は「デザインはとても頭を使うお仕事」だと思います。学校の勉強より頭を使うと私は思っていますし、高学歴な方が苦しんでいる姿も珍しくありません。
「考えるのが嫌い」
「考えるのが苦手」
という方がなぜデザイナーを目指すのだろう?と何度も思います。
まとめ
10年以上、私は日々たくさんのデザイナーを目指す方々がと接してきました。
私自身が若い時に感じていたように社会に絶望している方々。
社会の中でどう振る舞ったらいいかわからなくなっている方々。
自分に自信がなくて行動できない方々。
そんな方々の中にも自分の目標に向かって頑張っている方々もたくさんいます。
「選ばれし者」だけがデザイナーになれるわけではなく、デザイナーというゴールに向かって真摯に向き合ってきた方がデザイナーになれる業界だと思います。
デザイナーになってからも学びと思考、試行錯誤の日々です。
うちの生徒の方々だけではなくて、日本中にデザイナーというゴールに向かって頑張っている方、頑張ろうとしている方がいるんだろうと思います。
そういう方々のために、何かできることがないか。
考えることから始めてみようと思います。
賛同してくださる方募集中です〜