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【学会参加報告】スマートフォンの磁気センサとアタッチメントによるピンチ力測定手法(ヒューマンインタフェースシンポジウム2022)

はじめに

こんにちは、杉浦裕太研究室所属のB4山本さりいです。
8/31〜9/2に関西大学で開催されたヒューマンインタフェースシンポジウム2022にてスマートフォンの磁気センサを用いたピンチ力測定手法に関するポスター発表を行いましたので、その報告をさせていただきます。

研究の概要

指で物をはさむ力であるピンチ力は手指の疾患や外傷の治療、リハビリテーションにおいて重要な判断指標となる一方で、測定機器は医療用の高額なものが多く一般的に普及していないという現状があります。

そこで本研究ではスマートフォンに搭載されている磁気センサと磁石を装着した簡単なアタッチメントを用いたピンチ力測定手法を提案しました。

実際のアタッチメントの様子

まず磁気センサについてですが、スマートフォンには加速度センサ、ジャイロスコープ等多くのセンサが内蔵されており、その一つに地磁気を測定する磁気センサがあります。磁気センサとはその名の通りスマートフォンの磁場を測定するもので、あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、スマートフォンのコンパスは磁気センサを用いて方角を判断しています。磁気センサは地磁気を測定しますが、磁極の周辺では磁束密度が強まるため、周囲に強力な磁石を置くことで磁束密度を変化させることができます。

3Dプリンタによって出力した上下2つのパーツとばね、ネオジウム磁石を用いて力を加えることで磁石が上下に稼働するアタッチメントを作成しました。
このアタッチメントをスマートフォンの背面に装着し、一定の重さを加えたときの磁束密度の変化量を測定しました。

アタッチメント

方角による影響を考慮し、90°ずつ回転させた4方向で6種類のおもりを3回ずつ、計72回測定したところ、おもりの重さと磁束密度の変化は以下のような関係となりました。

おもりの重さと磁束密度の関係

この結果から方角ごとに回帰モデルを作成し、誤差率を導出した表を以下に示します。

方角による平均誤差率
おもりと誤差率の関係

実験の結果からおもりと磁束密度には相関関係が見られることがわかりました。本実験では一定の重さのおもりを使用していますが、実際にピンチ力を測定する際にはデバイスが動くことで地磁気の影響が生じると考えられます。

今後は

  • 地磁気による影響の排除

  • ピンチ力測定器としての精度の向上

  • 握りやすいアタッチメントの設計

を課題としていく予定です。

当日のフィードバック

おもりや筋力トレーニングとしても使えそうという意見をいただきました。今回は手指の筋力測定というテーマで行っており、他の用途については考えていなかったため様々な分野の方から意見をいただいてとても勉強になりました。またアタッチメント自体が握りにくいというのは既に課題としていましたが、実際に見ていただくことでやはり握りづらさや思ったより固かったという意見もいただきました。今後の研究に生かしていきたいと思います。

感想

初めての学会だったので行く前から緊張していたのですが、会場についてみると思ったよりアットホームな雰囲気で、普段は接する機会のない他大学の学生や企業の方の発表を聞くことができて非常に勉強になりました。

初日と最終日に開催されたワークショップでは大阪のインタフェースを探しに行く、というテーマで天神橋筋商店街を街歩きしつつ、町中の面白UIを撮影しました。最終日には写真を見ながら、なぜそのような設計になっているのか皆で話し合いました。

電車のつり革

電車の吊革には丸と三角がありますが、丸はとっさにつかみやすく、三角は長時間握りやすい形とされているそうです。確かに関東では丸い吊革はバス、三角のつり革は電車で見かけるような気がします。

発表情報

山本さりい,池松香,杉浦裕太,スマートフォンの磁気センサとアタッチメントによるピンチ力測定手法,ヒューマンインタフェースシンポジウム2022,関西大学,大阪.

発表ポスター


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