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急に具合が悪くなる、としても

今年読んだ本のなかで、一番印象に残っている、そしていつまでも考えがまとまらなくなるのがこの本だ。

急に具合が悪くなる。

ガンを患った哲学者の宮野真生子さんと、人類学者の磯野真穂さんの往復書簡を一冊にまとめた物語。

私は以前、こんなnoteを書いている。

私は死ぬのが怖い。死にたいと思っていても、死の恐怖のほうが先にきて、どうしても進める気がしない。臆病な性格のおかげで、たぶん命拾いしている。だから、安易に「死」について語ることに少し抵抗がある。それでも書かざるを得ないようなことが、今年の初めにあった。そのことを皆どれほど覚えているだろうか。

急に具合が悪くなる、かもしれない。この先すぐに死んでしまう、かもしれない。その「かもしれない」は誰もが持っているものだけれど、決して共有することはできない。だから「わかる」なんてことはないし、わからないままに相手と向き合うしかない。

わからないことをわからないままに抱えて生きていくのは難しい。すっきりしない、モヤモヤする。どこかに答えが書いてあったらいいのに。ネットを探してもどこにも答えなんて見つからない。

「わからない」からあきらめる、のでもない。「わからなさ」からは逃げ出したくなる。わからないから怖い。イライラする。もどかしい。でも、わからなさから逃げずに、無理やりわかろうともせずに、わからないの先の答えを探しながら、付き合っていく。ときどきは休んだり、忘れたりしながら。

急に具合が悪くなる、としても。ならないうちに、新しいものに出会い、日常が少し変わって、違う感情を覚えることがあるかもしれない。可能性の線の上を行ったり来たりして、なにかを紡いでいくこともできる。

カンタンに答えの出ない問いを抱えながら、丁寧に言葉を紡ぎ、遣り交わす。その二人の関係性はどこまでも優しく、お互いにひたむきだった。ここで交わされた言葉は、急に具合が悪くなった、その先もきっと残り続ける。

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