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何者にもなりたくなくて、ぶらぶらしてる

最近、なにかでそんなフレーズをみた。なんか響きだけがいい言葉だ。

否定的なニュアンスだけど、何者にもなれなくてもべつにいい、と思ってる。

昨日、ホステルを開業したいという年の離れた若い友人と、備品を探しに買い物に出かけた。
せっかく一緒にきているので、いろいろとアイデアをぽんぽん伝えていたら、「興味の幅、めっちゃ広いですよね」と言われた。

家具や雑貨、DIYが好き。
音楽や本、コーヒーや料理が好き。
旅が好き、宿が好き、写真が好き。
子どもと遊ぶのが好き。子どもたちのことを守りたい。
街のこと、地域のこと、人の暮らしのこと、いろんなことを考えたい。
みんなの仕事を楽にしたい、面倒な地道な作業が好き。標準化が好き。
社会問題にもきちんと向き合いたい。少しでもできる発信をしたい。

たしかに、そうかもしれない。でも、何者かになったわけでもないし、何かを成し遂げてるわけでもないし、むしろ下手な生き方をしている。「まあ、何の人なんだろね、わたしは」と笑ってごまかした。

何者にもなりたくなくて、わたしはぶらぶらしている。
とりあえず、いまは。

以前も、ある静かなギャラリーで、知り合いの展示をみていたとき、自己紹介に困って「べつに何者でもないです」と答えたことがある。すると、「ここにくる人はみんな、そう言うんですよ」と返された。

その場所で出会えたことそれ自体が、特別なことで、不思議な縁でつながっているのだ、と教えてくれたような気がする。自分を形作るいろんなものがわたしをこの場所に運んできて、めぐり合わせてくれた。「何者でもない人はこんなところまできませんよ」と。

若い彼よりも、少しだけ長く生きているわたしは、少しだけ知恵と経験があるから伝えられることがある。それが、本当に彼の助けになるかはわからないし、わたしの経験が正解なわけでもない。
決めるのは彼自身だし、何かを成し遂げるのは彼自身だ。わたしは、ただ傍で目線を合わせて歩いていただけだから。

「なんで彼を応援したいのか」といわれれば、自分ではやりたくてもできそうにないことをしているから、だと思う。
ホステルを作る。
バーで旅人たちが交流し、安心して眠ることのできる居場所を作る。

そんなん面白すぎるやろ、とむしろ勝手に近づいて関わってる。損得なんて小さいことは考えない。不安と期待の入り混じった船出を、快く送り出したい。

わたしより、はるかに優秀でずっと若い彼ならきっとできる。
わたしは彼の作る空間に、ひょっこりとよく現れる「何者でもない」おじさんでいい。特別な誰かのためでもない、誰にでも開かれた場所をきっと彼は作ってくれるから。

これからも走り続ける彼の姿をきちんと見届けたい。
早く飲みに行きたいな。


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